英国で拡大し国内でも確認された新型コロナウイルスの変異種について、専門家は「感染経路は変わっておらず、3密の回避やマスクなど、基本的な防御策は同じだ」と指摘している。
ウイルスは細胞に感染すると、自分の遺伝情報をコピーして増殖する。このコピーに偶然ミスが起き、遺伝情報が少しだけ変化したウイルスが変異種だ。
ウイルスの変異は珍しくなく、新型コロナは約2週間に1回のペースで変異を重ねている。中国で昨年見つかった初期型は、今春に変異種の欧州型が世界に広がると姿を消した。こうした種の交代例もあるが、大半の変異種は性質が変わらない。国立感染症研究所によると、日本でも春の拡大期に欧州型の変異種が約300確認されたが、性質はほぼ同じで、大半は消えてしまった。
だが英国の変異種は、新型コロナの感染力に関わる構造(突起の先端部)が変化。さらに感染者の急増と同時期に広がり、感染力は従来の最大1・7倍と推計された。ただ感染の拡大時期と変異種の出現が偶然重なった可能性もあり、感染力の結論は出ていない。
病原性について感染研は25日、「重症化を示唆するデータは認めない」とする一方、「症例の大部分が重症化の可能性が低い60歳未満」と注意を促した。こうしたリスクが不明で、現状では厳重に侵入を監視せざるを得ない。東京農工大の水谷哲也教授(ウイルス学)は「仮に感染力が強まっていれば、病原性は同じでも重症者は増え、医療体制を圧迫する」と指摘する。英国では変異種が特定のPCR検査をすり抜ける例が報告されたが、感染研のマニュアルに沿った方法のPCR検査は検知できるという。
ワクチンの予防効果について、独ビオンテックのウグル・サヒン最高経営責任者(CEO)は22日、米製薬大手ファイザーと共同開発したワクチンが「変異種に対応できる」と記者会見で自信を示した。ワクチンでつく免疫は、新型コロナの一部が変異しても攻撃できると考えられるためで、変異種用の新ワクチンが必要になった場合でも「技術的に6週間で提供できる」と話した。
https://www.yomiuri.co.jp/science/20201226-OYT1T50250/?from=smtnews