女性はなぜ、ネット上の誹謗中傷を相手に「匿名」で戦い続けているのかーー。
学生ら若者が中心に市民運動を展開した「SEALDs」の元メンバーの女性2人が、Twitterなどで誹謗中傷されたとして投稿者の女性に起こした裁判。
東京高裁は慰謝料など約240万円の支払いを命じる判決を下した。
この投稿者は、膨大な攻撃の氷山の一角にすぎない。送り付けられた大量の暴力的、性的なメッセージ。「顔のない」人々からのものが大半だったが、なかには「実名」のものもあった
2015年に国会で成立した安全保障関連法に反対する「SEALDs」に参加し、国会前デモで名前と顔を出してスピーチをしたことをきっかけに、ネット上で大量の誹謗中傷を受けることになった。
掲示板やブログなどに書き込みする人。さまざまなSNSでリプライやDMを送ってくる人。誹謗中傷の手段は多岐にわたった。
朝起きると数十件、数百件と、大量に送り付けられることもあった。
「声をあげた内容に対する批判ではなくて、声をあげたこと、目立っているから叩いてやろうという人がほとんどだった。いじめの構図そのものですよね。
私が女性だったからやられたことも少なくなかったと思います」
「死ねブス」「工作員」などという中傷や、事実無根の内容。「何も分かってないくせに」「お花畑」などと、嘲笑、冷笑を混ぜながら質問攻めにしてくるような人も多かった。
「グロ画像」を大量に送りつける人もいた。
さらに、「やらせろ」「レイプしたい」などという性的、暴力的なメッセージもあったという。顔写真を勝手に使われて、裸の写真と合成されたコラージュなどを流されたこともある。
画像は、ネット上に消えずに残されている。
弁護士からの助力もあり、ともに活動を続け、やはり同様の被害に遭ってきた福田和香子さんと2人で訴訟を起こすことを決めた。
書き込みから6年を経て起こした裁判では、「報酬をもらっている」「売春婦と自称している」などとツイートした女性の姿を目にした。その目をじっと見つめたが、相手がこちらを見ることは、なかった。
「あんなに書き込みを続けて、多くの人を誤解させたのはどんな人だろうと思っていたら、拍子抜けするくらい普通の女性で。
裁判長の問いかけにも、丁寧に答えているんです。でも、私の目は絶対に見ず、うつむいていましたね」
一審判決では、投稿者に慰謝料など約100万円の支払いを命じたが、双方ともに不服として控訴。
投稿者に慰謝料など約240万円の支払いを命じる東京高裁の判決が出たが、被告側が最高裁に上告したため、裁判は続いている。
裁判を通じて気がついたこともある。それは、誹謗中傷の被害者に大きな負担を強いる仕組みになっている、という実態だ。
https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/sealds-member-3