「人力で実施していた食品製造ラインの不良品検知にディープラーニング(深層学習)を使うことで、生産性を2倍に高められた」――。キユーピーの荻野武生産本部次世代技術担当次長は、グーグルが2017年6月14日に開催したイベント「Google Cloud Next '17 in Tokyo」の報道関係者向けセッションに登壇。ディープラーニングを駆使した原料検査装置開発の取り組みを説明した。
荻野氏は同社の原料に対する思いをこう語る。「創業時から『良い商品は、良い原料からしか生まれない』という考え方を受け継いでいる。現在、数千種類の原料を取り扱っており、安全安心にこだわって良品を選別している」。
原料検査装置へのディープラーニング活用の対象としたのは、ベビーフード用のダイスポテト(賽の目状にカットされたジャガイモ)だ。従来は「一つの製造ラインに100万個ある原料に対し、異物混入や不良品がないかを人が目視で検査していた」(荻野氏)という。画像処理技術などを使った機械化を長年検討してきたが、「現状の技術では不可能だった」(同氏)。
現場の負荷軽減のため、荻野氏はAI(人工知能)の活用を検討した。数十社のAI技術を検討した結果、米グーグルが開発したオープンソースのディープラーニングフレームワークである「TensorFlow」を採用した。同氏は「処理性能や汎用性が高く、技術レベルも優れていた」と選定理由を説明する。
1万8000枚の画像から良品の特徴を学習
グーグルとデータサイエンス分野に強みを持つITベンダーのブレインパッドの支援を得て、2016年11月に概念検証(PoC)を開始。現状は工場内のオンプレミス(自社所有)環境のPCでTensorFlowを動作させる。1万8000枚の製造ラインの画像を読み込ませて、良品の特徴を学習させた。荻野氏は「TensorFlowを不良品と良品の分類に使うのではなく、良品のデータのみを学習させることで精度の向上と学習時間の短縮を両立できた」と語る。
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