留学生など、日本で暮らそうとする外国人にとって高い壁となっているのが、賃貸住宅の契約だ。「外国人の4割が入居拒否に遭っている」という法務省の委託調査結果もある。そうした状況を変えようと、外国人向けに特化した不動産会社が出始めている。
日本の契約、高い壁
日本語学校が建ち並ぶ東京・新大久保。駅の近くには、外国人専門に賃貸住宅を紹介する不動産会社「グローバルトラストネットワークス」の支店がある。
昨年12月9日、男子学生が店に入ってきた。「何語がいいですか」。学生はたどたどしい日本語で「韓国語でお願いします」と答えた。韓国出身の女性スタッフは学生の要望を聞きながら、パソコンで賃貸住宅の情報を検索。「この物件はエレベーター付きです」などと、細かく説明した。この日は、ブラジルやネパール、ベトナム出身のスタッフらが出勤。ポルトガル語やヒンディー語など10カ国語以上で顧客に対応した。
店では物件紹介のほか、入居者や家主からの相談も受けている。受話器を手にした外国人スタッフが、水道修理の依頼先を教えたり、ゴミの分別について説明したりする声が響いた。
グローバル社(本社・東京都豊島区)の設立は2006年。後藤裕幸社長(39)は大学生だった頃、なかなか部屋を借りられない留学生たちの姿を目の当たりにした。「日本に来てくれた人を受け入れる環境が整っていない」。自分で起こしたマーケティング・リサーチ会社を別の役員に譲り、この不動産会社を作った。
今では在留外国人の増加に伴って業務が拡大し、約8400の不動産会社と取引している。大阪やベトナムにも支店を置く。
後藤さんは「外国人は文化の違いから、悪気がないのにトラブルになるケースがある」と語る。例えば海外では、借りている一室に契約時には家主に伝えていない複数の人が住むのは珍しくない国があるという。部屋を転貸するケースが多い国の実情も知っている。
トラブルが起きるのは、日本語での契約書を理解できない外国人が多いためで、同社では母国の言葉で日本のルールを説明して入居者と家主とを仲介する。契約の際は、母国の家族らに連絡を取って身元を確認し、保証人の代行事業も行っている。後藤さんは「真面目に学び、働こうとする人を手助けしたい」と話す。
外国人の入居拒否を巡っては、1993年に大阪地裁が「法の下の平等を定めた憲法に反する」として家主に損害賠償を命じるなど、人権侵害を認めた複数の判例がある。だが、法務省の委託調査結果によると、過去5年に家を探した外国人の39%が「外国人であることを理由に入居を断られた」と回答している。
80年に東京・高田馬場で外国人向けの住宅紹介を始めた「イチイ」の荻野政男社長(63)はこう話す。「実感としては『外国人お断り』の家主は相当数に上る。不動産業界は小規模な業者が多く、外国語で対応できるスタッフが少ないのも一因だ」。確かに昨年の不動産業統計をみると、従業員数4人以下の事業者が全体の86%を占めている。
00年ごろから、外国人と日本人がともに暮らすシェアハウスを運営し、多言語のガイドライン作りもしている。荻野さんは「外国人は少子高齢化の進む日本で活躍してくれる存在でもある。日本人も、心のグローバル化を進めるべきだ」と感じている。
在留外国人238万人
法務省の統計によると、日本の在留外国人の数は2016年末で約238万人(前年比6.7%増)に上り、統計を取り始めた1959年以降で最多だった。出身を国別でみると、中国、韓国、フィリピン、ベトナムが多く、この4カ国で全体の約7割を占める。留学生と技能実習生の増加が著しい。
政府は20年をめどに留学生30万人の受け入れを目指す「留学生30万人計画」を掲げる。技能実習生の職種は介護や建設、縫製、農業など77分野にわたる。
https://mainichi.jp/articles/20180119/k00/00e/040/247000c
日本の契約、高い壁
日本語学校が建ち並ぶ東京・新大久保。駅の近くには、外国人専門に賃貸住宅を紹介する不動産会社「グローバルトラストネットワークス」の支店がある。
昨年12月9日、男子学生が店に入ってきた。「何語がいいですか」。学生はたどたどしい日本語で「韓国語でお願いします」と答えた。韓国出身の女性スタッフは学生の要望を聞きながら、パソコンで賃貸住宅の情報を検索。「この物件はエレベーター付きです」などと、細かく説明した。この日は、ブラジルやネパール、ベトナム出身のスタッフらが出勤。ポルトガル語やヒンディー語など10カ国語以上で顧客に対応した。
店では物件紹介のほか、入居者や家主からの相談も受けている。受話器を手にした外国人スタッフが、水道修理の依頼先を教えたり、ゴミの分別について説明したりする声が響いた。
グローバル社(本社・東京都豊島区)の設立は2006年。後藤裕幸社長(39)は大学生だった頃、なかなか部屋を借りられない留学生たちの姿を目の当たりにした。「日本に来てくれた人を受け入れる環境が整っていない」。自分で起こしたマーケティング・リサーチ会社を別の役員に譲り、この不動産会社を作った。
今では在留外国人の増加に伴って業務が拡大し、約8400の不動産会社と取引している。大阪やベトナムにも支店を置く。
後藤さんは「外国人は文化の違いから、悪気がないのにトラブルになるケースがある」と語る。例えば海外では、借りている一室に契約時には家主に伝えていない複数の人が住むのは珍しくない国があるという。部屋を転貸するケースが多い国の実情も知っている。
トラブルが起きるのは、日本語での契約書を理解できない外国人が多いためで、同社では母国の言葉で日本のルールを説明して入居者と家主とを仲介する。契約の際は、母国の家族らに連絡を取って身元を確認し、保証人の代行事業も行っている。後藤さんは「真面目に学び、働こうとする人を手助けしたい」と話す。
外国人の入居拒否を巡っては、1993年に大阪地裁が「法の下の平等を定めた憲法に反する」として家主に損害賠償を命じるなど、人権侵害を認めた複数の判例がある。だが、法務省の委託調査結果によると、過去5年に家を探した外国人の39%が「外国人であることを理由に入居を断られた」と回答している。
80年に東京・高田馬場で外国人向けの住宅紹介を始めた「イチイ」の荻野政男社長(63)はこう話す。「実感としては『外国人お断り』の家主は相当数に上る。不動産業界は小規模な業者が多く、外国語で対応できるスタッフが少ないのも一因だ」。確かに昨年の不動産業統計をみると、従業員数4人以下の事業者が全体の86%を占めている。
00年ごろから、外国人と日本人がともに暮らすシェアハウスを運営し、多言語のガイドライン作りもしている。荻野さんは「外国人は少子高齢化の進む日本で活躍してくれる存在でもある。日本人も、心のグローバル化を進めるべきだ」と感じている。
在留外国人238万人
法務省の統計によると、日本の在留外国人の数は2016年末で約238万人(前年比6.7%増)に上り、統計を取り始めた1959年以降で最多だった。出身を国別でみると、中国、韓国、フィリピン、ベトナムが多く、この4カ国で全体の約7割を占める。留学生と技能実習生の増加が著しい。
政府は20年をめどに留学生30万人の受け入れを目指す「留学生30万人計画」を掲げる。技能実習生の職種は介護や建設、縫製、農業など77分野にわたる。
https://mainichi.jp/articles/20180119/k00/00e/040/247000c