中国の電子商取引(EC)最大手、アリババグループが食品スーパーの店舗網を急拡大させている。ITを駆使し、新鮮な食材を消費者に素早く届ける仕組みを構築。インターネットと実店舗を融合し、小売業界全体で主導権を握る狙いだ。一方、他のIT大手もこの動きを猛追。熾烈(しれつ)な競争が繰り広げられている。
アリババ傘下のスーパー「盒馬鮮生」の北京十里堡店(北京市)。巨大ないけす内のロシア産タラバガニやカナダ産ロブスターなど大量の海産物を、買い物客が興味深そうに品定めしていた。
ネット通販で培った調達ネットワークによって国内外の豊富な品ぞろえを実現。在庫管理にビッグデータを活用し、売れ残りを減らす。例えば生鮮野菜は、農家と情報を共有して日々の収穫量や、次に作付けする品目まで細かく調整する。支払いはほとんどがキャッシュレスだ。客はスマートフォンの決済サービス「アリペイ」を使い、セルフレジで購入。店舗はネット通販の「倉庫」も兼ねる。
客は自宅からスマホで注文でき、店員が店内を回って商品を集め、3キロ圏内であれば30分以内に無料で配送する。同店ではネット注文が売り上げ全体の約70%を占め、来店客よりも多いという。
中国では近年、ネット通販が急成長し、従来型のスーパーや百貨店は苦戦している。盒馬鮮生十里堡店がある場所も2016年秋まで、採算が合わず撤退した日系のイトーヨーカドーの店舗だった。
盒馬鮮生はITとの融合によって「従来のスーパーと比べ、3〜5倍の収益力」(同店広報)を誇る。業績好調のため、17年末現在で5店舗だった北京市内の店舗網を、18年中に30店舗まで拡大させる計画だ。
アリババに刺激され、ライバルのIT企業も続々と実店舗運営に進出し始めた。EC大手の京東集団(JDドットコム)は今年1月、同社初のスーパーを北京で開店。通信アプリ「微信(ウィーチャット)」を運営する騰訊控股(テンセント)も昨年12月、大手スーパーに出資した。いずれもITを活用して伝統的な小売業の刷新を狙う。(北京 共同)
2018.3.12 05:00
https://www.sankeibiz.jp/macro/news/180312/mcb1803120500003-n1.htm