20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は22日(日本時間23日未明)、米国発の貿易摩擦を念頭に「貿易の緊張の高まりで、世界経済の下方リスクが増大している」とした共同声明を採択して閉幕した。反保護主義をうたった昨年の首脳宣言を踏襲し「対話と行動を強化する」とした。米国の利上げで資本流出と通貨安に悩む新興国にも触れ、経済の監視を進める方針を示した。
議長国アルゼンチンのドゥホブネ財務相は、22日の記者会見で「G20は貿易と投資が経済成長のエンジンであることを確認した」と強調した。21〜22日の協議では、米政権が仕掛ける貿易戦争に批判が集中した。共同声明には「貿易および地政学上の緊張の高まりで、短期から中期にかけてのリスクは増大している」と明記した。
貿易問題の解決に向けては「リスクを緩和して信頼を高めるための対話や行動を強化する」とも盛り込んだ。関税の引き上げ合戦で投資家が動揺し、各国で株価下落が続いていることに警戒したものだ。22日に記者会見した麻生太郎財務相は「G20の主題は金融から貿易に移っている」と指摘した。
ただ、貿易問題が前進したとは言いがたい。米国のムニューシン財務長官はG20会議後の記者会見で「米国は最も巨大な自由市場国であり、保護主義という根拠は全くない」と反論した。
米国は巨額の貿易赤字を抱えており「均衡のとれた貿易を望んでいる」と強調。各国には関税や輸出補助金をゼロにして自由貿易を一段と深めるよう要請したと明らかにした。米政権が輸入制限の撤回に動く兆しはなく、解決策はみえない。
G20会議は中国人民元など新興国の通貨安も焦点となり、共同声明では「新興国市場は市場の過度の変動、資本フローの反転にいまだ直面している」と強い警戒感をにじませた。新興国市場の動揺は米国の金融引き締めが一因だが、「(新興国側の)備えが足りなかった」(アルゼンチン中央銀行のカプト総裁)と苦悩する声も漏れた。
G20会議直前にはトランプ米大統領が「ドル高で競争力を奪われている」と言及し、貿易摩擦が通貨摩擦に発展する懸念もにじんでいる。麻生財務相は会議で中国当局に足元で進む人民元安の要因を説明するよう要請した。G20の共同声明でも、通貨安競争の回避をうたった3月の合意を再確認した。
2018年7月23日 11:08 日本経済新聞
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