2018年9月10日 19:30 日本経済新聞
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO35177330Q8A910C1QM8000
イラン産原油の割安感が強まっている。代表油種は競合するサウジアラビア産に比べた価格差が1年前の3倍に拡大した。米国は11月にイラン産原油を対象にした経済制裁を復活させる。イラン側が低い価格を設定し、輸出量の急減を抑える思惑があるとみられる。低価格により供給がさほど減らなければ、原油価格の上昇を抑える可能性がある。
中東産原油のアジア市場での指標はドバイ原油とオマーン原油の平均価格だ。原油には比重や硫黄分といった性質の違いで様々な油種がある。
中東産油国は油種ごとに調整金を設定。指標価格にこの金額を上乗せしたり割り引いたりすることで実際の価格が決まる。価格差は調整金の差に表れる。
イラン産の代表油種の一つ「イラニアンヘビー」の9月積みの調整金は1バレル0.90ドルの割引。性質が近いサウジ産の「アラビアンミディアム」は同0.05ドルの割引で、イラン産が0.85ドル安い。8月積みの差は0.65ドルだった。1年前の0.27ドルと比べるとイラン産の割安感が目立つ。
トランプ米政権は5月、核合意から離脱しイランへの制裁を再開すると表明。11月4日までにイラン産原油の輸入をゼロにするよう各国に求めてきた。
市場参加者の間では「購入が減り始め、イランは輸出先の取りこぼしを防ぐため割引を強めている」との見方が目立つ。
イラン産原油の最大の買い手である中国は米国の禁輸要請に応じない方針だ。米国との関係が悪化するトルコも制裁に同調しない構え。インドは一定の輸入を続ける可能性が指摘されている。
2016年初までの前回制裁で、イランの輸出量は日量100万バレルほど減った。価格競争力を高めることでイランが輸出の落ち込みを抑えられれば、世界の供給不足への懸念はある程度和らぐ。国際価格の上昇圧力が抑えられる可能性もある。
日本への影響は限られそうだ。日本の石油元売り大手はイランからの原油輸入を一時停止すると正式に決めた。韓国も既に輸入を止めたと伝えられている。
米国の制裁は米国以外の企業にも及ぶ。適用除外を受けられない限り、日韓の企業は割安でもイラン産原油に手を出す可能性は低い。石油製品などの国内の流通価格にイラン産の安値が直接反映されることはなさそうだ。
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO35177330Q8A910C1QM8000
イラン産原油の割安感が強まっている。代表油種は競合するサウジアラビア産に比べた価格差が1年前の3倍に拡大した。米国は11月にイラン産原油を対象にした経済制裁を復活させる。イラン側が低い価格を設定し、輸出量の急減を抑える思惑があるとみられる。低価格により供給がさほど減らなければ、原油価格の上昇を抑える可能性がある。
中東産原油のアジア市場での指標はドバイ原油とオマーン原油の平均価格だ。原油には比重や硫黄分といった性質の違いで様々な油種がある。
中東産油国は油種ごとに調整金を設定。指標価格にこの金額を上乗せしたり割り引いたりすることで実際の価格が決まる。価格差は調整金の差に表れる。
イラン産の代表油種の一つ「イラニアンヘビー」の9月積みの調整金は1バレル0.90ドルの割引。性質が近いサウジ産の「アラビアンミディアム」は同0.05ドルの割引で、イラン産が0.85ドル安い。8月積みの差は0.65ドルだった。1年前の0.27ドルと比べるとイラン産の割安感が目立つ。
トランプ米政権は5月、核合意から離脱しイランへの制裁を再開すると表明。11月4日までにイラン産原油の輸入をゼロにするよう各国に求めてきた。
市場参加者の間では「購入が減り始め、イランは輸出先の取りこぼしを防ぐため割引を強めている」との見方が目立つ。
イラン産原油の最大の買い手である中国は米国の禁輸要請に応じない方針だ。米国との関係が悪化するトルコも制裁に同調しない構え。インドは一定の輸入を続ける可能性が指摘されている。
2016年初までの前回制裁で、イランの輸出量は日量100万バレルほど減った。価格競争力を高めることでイランが輸出の落ち込みを抑えられれば、世界の供給不足への懸念はある程度和らぐ。国際価格の上昇圧力が抑えられる可能性もある。
日本への影響は限られそうだ。日本の石油元売り大手はイランからの原油輸入を一時停止すると正式に決めた。韓国も既に輸入を止めたと伝えられている。
米国の制裁は米国以外の企業にも及ぶ。適用除外を受けられない限り、日韓の企業は割安でもイラン産原油に手を出す可能性は低い。石油製品などの国内の流通価格にイラン産の安値が直接反映されることはなさそうだ。