今は禁酒がクールだ。よく眠れるし、肌はきれいになると、気取った絶対禁酒主義者は言う。
禁酒、または節酒に健康上の恩恵がどのくらいあるにせよ、こうした流行は飲料メーカーにとってはリスクだ。特にビール会社は、しゅーっと泡立つ活気の一部を失ってしまったことから、この流行を有利に利用しようとしている。ノンアルコール飲料は有望な成長市場だ。
ハイネケンの主力ブランド=ロイター
世界第2位のビール会社、オランダのハイネケンは13日、同社のノンアルコールビール「ハイネケン0.0」の成功を大々的に祝った。そのおかげもあって、中核ブランドであるハイネケンは最高業績を上げている。ライバルのカールスバーグ(デンマーク)によると、同社のノンアルコールビールは昨年、欧州で3割強伸び、3年ぶりに売上高が増加した。「バドワイザー・プロヒビション」のような低アルコール、またはノンアルコール飲料が売上高の1割を占める世界最大手のアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ベルギー)も、成長に渇きを感じている。同社は昨年、「ノンアルコール飲料最高責任者」を任命、2025年までに低・ノンアルコール飲料の売上高を全体の2割に引き上げるという任務を与えた。
低・ノンアルコールビールの売上高の増加は、他の製品の売上高の減少を相殺できるだけでなく、利益率を引き上げることができる。ビール会社はノンアルコールビールの価格を、伝統的なビールと同じに設定することが多い。生産コストはノンアルコールの方がやや高く、発売のためのコストもかかるが、これは物品税の節約で相殺できる。ある企業によると、西欧では粗利益は従来型のビールの1.75倍に上るという。
水っぽく金属的な味の、第1世代の低アルコールビールを試した人が懐疑的になるのは理解できる。多くの市場でなかなか受け入れられなかった。ノンアルコールブランドは、英国ではビール市場の1.2%を占めるにすぎず、米国ではさらに低い。
■風味が改善
しかし、醸造技術が変わった。アルコールの生成量が少ない酵母菌を選ぶことで、風味を維持できるようになった。スイスの金融大手UBSの調査によると、低・ノンアルコールビールを試した人の4割近くは、満足できる味だから飲んでいると回答した。ビール売上高の12%を低・ノンアルコールビールが占めるスペインの成功が、その可能性を示している。
ビール会社は他のノンアルコール飲料にも進出している。フルーツジュースやエネルギー飲料、合法的な国では大麻入りのスパークリングウオーターなどだ。このような事業展開は理にかなっている。欧州のアルコール消費は、16年までの11年間で2割減少した。飲料メーカーは嗜好の変化に適応する必要がある。若くて健康志向の強い消費者にとって魅力のある新しい方法を見つければ、大きな機会があることは、よくできたピルスナーと同じぐらい明瞭だ。
(2019年2月13日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)
(c) The Financial Times Limited 2019. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.
2019/2/15 13:38
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO41308410V10C19A2000000/
禁酒、または節酒に健康上の恩恵がどのくらいあるにせよ、こうした流行は飲料メーカーにとってはリスクだ。特にビール会社は、しゅーっと泡立つ活気の一部を失ってしまったことから、この流行を有利に利用しようとしている。ノンアルコール飲料は有望な成長市場だ。
ハイネケンの主力ブランド=ロイター
世界第2位のビール会社、オランダのハイネケンは13日、同社のノンアルコールビール「ハイネケン0.0」の成功を大々的に祝った。そのおかげもあって、中核ブランドであるハイネケンは最高業績を上げている。ライバルのカールスバーグ(デンマーク)によると、同社のノンアルコールビールは昨年、欧州で3割強伸び、3年ぶりに売上高が増加した。「バドワイザー・プロヒビション」のような低アルコール、またはノンアルコール飲料が売上高の1割を占める世界最大手のアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ベルギー)も、成長に渇きを感じている。同社は昨年、「ノンアルコール飲料最高責任者」を任命、2025年までに低・ノンアルコール飲料の売上高を全体の2割に引き上げるという任務を与えた。
低・ノンアルコールビールの売上高の増加は、他の製品の売上高の減少を相殺できるだけでなく、利益率を引き上げることができる。ビール会社はノンアルコールビールの価格を、伝統的なビールと同じに設定することが多い。生産コストはノンアルコールの方がやや高く、発売のためのコストもかかるが、これは物品税の節約で相殺できる。ある企業によると、西欧では粗利益は従来型のビールの1.75倍に上るという。
水っぽく金属的な味の、第1世代の低アルコールビールを試した人が懐疑的になるのは理解できる。多くの市場でなかなか受け入れられなかった。ノンアルコールブランドは、英国ではビール市場の1.2%を占めるにすぎず、米国ではさらに低い。
■風味が改善
しかし、醸造技術が変わった。アルコールの生成量が少ない酵母菌を選ぶことで、風味を維持できるようになった。スイスの金融大手UBSの調査によると、低・ノンアルコールビールを試した人の4割近くは、満足できる味だから飲んでいると回答した。ビール売上高の12%を低・ノンアルコールビールが占めるスペインの成功が、その可能性を示している。
ビール会社は他のノンアルコール飲料にも進出している。フルーツジュースやエネルギー飲料、合法的な国では大麻入りのスパークリングウオーターなどだ。このような事業展開は理にかなっている。欧州のアルコール消費は、16年までの11年間で2割減少した。飲料メーカーは嗜好の変化に適応する必要がある。若くて健康志向の強い消費者にとって魅力のある新しい方法を見つければ、大きな機会があることは、よくできたピルスナーと同じぐらい明瞭だ。
(2019年2月13日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)
(c) The Financial Times Limited 2019. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.
2019/2/15 13:38
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO41308410V10C19A2000000/