→統合案を実現させるような政治状況は仏に存在せずとFCA
→FCA株は時間外取引で下落、日産も下げる
Workers perform quality control inspections on completed Renault Captur crossover sport utility vehicles (SUV) on the production line inside the Renault SA automobile plant in Moscow. Photographer: Andrey Rudakov/Bloomberg
フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)は、仏ルノーとの経営統合案を撤回した。ルノー取締役会は5日、前日に続いて同案を協議し、一時は承認寸前となった。しかし、同社が結論を再度先送りしたのを受けてFCAが急遽(きゅうきょ)撤回に動いた。
ルノー取締役会の会合は6日未明までずれ込んだ。だが、ルノーの筆頭株主であるフランス政府が判断を先延ばしするよう求め、統合の是非を決める投票に至らずに閉会した。両社の統合が実現すれば、世界第3位の自動車メーカーが誕生するはずだった。
ルノー本社Photographer: Marlene Awaad/Bloomberg
ルノーは統合案を引き続き「関心を持って」検討するとコメント。一方、FCAは同案撤回の責任はフランス政府にあると非難した。
FCAは発表資料で、「現在は今回の統合案を実現させるような政治状況がフランスには存在しないことが明らかとなった」と指摘。その上で、自社の提案は説得力があり、バランスにも配慮したものだと引き続き確信していると説明した。
FCAは5月27日に提案を行って以降、ルノーや日産自動車、フランス政府との交渉に当たってきたが、仏政府は雇用やガバナンス、工場を巡る要求を強めてきた。仏政府は取締役ポストやルノー株主への支払いも要求していた。
5日の米株式市場の時間外取引でFCAの株価は下落。日産は6日午前、一時3.8%安となった。
□双方に痛手か
FCAの統合断念は、同社会長で、フィアット創業家のアニェッリ一族の御曹司であるジョン・エルカン氏にとって手痛い挫折となる。ルノーは仏政府が株式の15%を保有し、ルノーと日産の関係がぎくしゃくしていたにもかかわらず、エルカン会長はルノーのライバル、グループPSAと協議した後、よりリスクの大きいルノーへの提案を選んだ。
統合案の承認寸前となりながら結論を出せなかったことで、ルノーのジャンドミニク・スナール会長も苦境に立たされる。同会長は外交的手腕を発揮して当事者全員を合意に導こうとしたがかなわなかった。仏政府の要求に加え、雇用への影響を懸念する同国の労働組合の存在もあった。
事情に詳しい複数の関係者によれば、5日の会合で日産の代表2人は採決には棄権で臨む姿勢だったが、ルノー取締役会は全体として統合案を承認する構えだった。しかし仏当局者が決定前に日本の当局者と同案について議論したいと表明後、仏政府代表が先延ばしを求めたという。ルメール仏財務相は今週末に訪日の予定。
日産の西川社長兼CEOPhotographer: Akio Kon/Bloomberg
仏政府当局者は、日本側を安心させ、統合案を説明するために時間が必要だったと、匿名で語った。仏政府はフィアットがこれほど速やかに提案撤回に動くとは予想していなかった。
ルメール財務相の報道官にコメントを求めたがこれまでに返答はない。
ルメール財務相は、統合に当たって仏政府が求める条件に関して数多くコメントしており、このところ統合案への批判は強まっていた。
統合交渉決裂に関して日産の西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)はコメントを控えた。
原題:Fiat Walks Away From Renault Talks, Blaming French State (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.com/news/articles/2019-06-05/fiat-withdraws-bid-after-renault-delays-decision-on-combination
(なお日経経由のプレスリリースで日産自動車の公式発表が出ていますので、参考リンクとして置いておきます)
FCA、ルノー・グループへの統合提案を取り下げ :日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP511520_W9A600C1000000/
2019年6月6日 7:46 JST
更新日時 2019年6月6日 13:49 JST
Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-06-05/PSNDE36KLVRM01