他人のパソコンを無断で使って暗号資産(仮想通貨)のマイニング(採掘)をするプログラムをウェブサイトに置いたとして、不正指令電磁的記録保管の罪に問われたウェブデザイナー、諸井聖也被告(34)の上告審判決で、最高裁第1小法廷(山口厚裁判長)は20日、罰金10万円の有罪とした二審・東京高裁判決を破棄し、逆転無罪を言い渡した。
対象のプログラムは「Coinhive(コインハイブ)」。サイト閲覧者のパソコンを無断で使い、仮想通貨の取引記録の正しさを検証する計算作業を行う。対価として仮想通貨がサイト運営者に渡る仕組みだった。ネット広告や課金に代わる収入源として関心を集めたものの、仮想通貨相場の下落が響いて2019年にプログラムの提供が終わった。
諸井さんは、2017年10〜11月、他人のパソコンに計算作業をさせる目的で、運営する音楽サイト上にコインハイブを仕込んだとする罪で起訴された。採掘による収入は800円だったという。18年3月に受けた罰金10万円の略式命令を不服とし、正式裁判で争った。
同罪は「意図に反した不正な動作」をさせるプログラムの保管などを禁じる。一、二審はいずれも「意図に反した」という点を認定した一方、悪質性の判断は分かれた。19年3月の一審・横浜地裁判決は無罪とする一方、20年2月の二審判決は罪の成立を認めた。
上告審で弁護側は「(他人のパソコンへの影響は)ごく軽微であり、情報へのアクセス、改ざんなどをもたらすものではない」と指摘。男性が摘発される以前は捜査機関の注意喚起もなく「社会的に許容されていないと断じることはできない」として、無罪を主張していた。
これに対し、検察側は被告が置いたプログラムは他人のパソコンのCPU(中央演算処理装置)を50%まで使える設定となっており、影響は軽微とはいえないなどと反論した。
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