2017年11月26日 11時53分
生息数が激減して休漁が続いている有明海の二枚貝「アゲマキ」が、佐賀県沿岸の干潟で繁殖していることがわかった。
県有明水産振興センターが人工的に育てた稚貝を海に放流し、繁殖を確認した。今後、本格的に生息状況を調べ、約25年ぶりの漁再開の可能性を探る。専門家は「他の貝類の資源量回復のモデルケースにもなる」と期待を寄せている。
アゲマキは泥質の干潟に生息し、県沿岸の有明海ではノリやカキの養殖業者らが副業として収穫。県での漁獲量は、ピーク時の1980年代後半に約800トンに上ったが、90年代前半に約1トンにまで落ち込み、92年に漁は途絶えた。激減した原因は分かっておらず、県は絶滅の危機が増大している「絶滅危惧2類種」に指定している。
センターによると、アゲマキは秋に1個体で数十万〜100万個の卵を産む。しかし大半は海流で流されて死んだり、天敵のナルトビエイやカモに捕食されたりする。一般的に二枚貝が成貝まで育つのは1%未満とみられている。
センターは96年にアゲマキを人工的に繁殖させる事業に着手。まず水槽の中で安定的に繁殖させることを目指し、干潟の泥を鉱物で代用した下地をつくり、孵化ふかしたアゲマキの幼生が順調に育つことを確認した。水槽で大きくなった稚貝を干潟に放流する際は、ネットで覆うことで潮に流されず、天敵に捕食されないような環境も整えた。
事業開始から20年となる2016年度には、アゲマキ漁の経験がある漁業者に依頼し、鹿島市沿岸など四十数地点で定着状況を調べたところ、7年前の12倍の個体の生息が確認できた。
県は来年2月頃、1000万円かけてアゲマキの大きさや生息密度を本格的に調査。資源量を推定し約25年ぶりに漁が再開できるかどうかを判断する方針。
センターの荒巻裕副所長(47)は「アゲマキの巣穴には酸素や海水が流入するため、個数が増えるほど干潟が浄化され、生き物が育ちやすい環境づくりにもつながる」と話す。鹿島市のカキ養殖業池田義孝さん(61)は「有明海特産のアゲマキを、再び多くの人に味わってもらいたい」と漁再開を心待ちにしている。
二枚貝の生態を研究している国立研究開発法人「水産研究・教育機構西海区水産研究所」の松山幸彦・資源培養グループ長(49)は「絶滅に近い状況まで減った貝の資源量が回復するケースは極めてまれだ。産卵と成長に適した条件を見つけて稚貝を放流する地道な取り組みが奏功しており、資源量が減っている他の貝類の調査研究にも役立つ」と話した。(上高原毅)
◆アゲマキ=有明海と八代海の泥質の干潟に生息し、最大で10センチほどに成長する。身は肉厚で、バター焼きやフライなどの料理を楽しめる。かつて市場に出回っていた有明海産のアゲマキは1キロ当たり600〜700円で販売されていた。現在、スーパーなどでは韓国産が流通している。
http://yomiuri.co.jp/eco/20171126-OYT1T50053.html
生息数が激減して休漁が続いている有明海の二枚貝「アゲマキ」が、佐賀県沿岸の干潟で繁殖していることがわかった。
県有明水産振興センターが人工的に育てた稚貝を海に放流し、繁殖を確認した。今後、本格的に生息状況を調べ、約25年ぶりの漁再開の可能性を探る。専門家は「他の貝類の資源量回復のモデルケースにもなる」と期待を寄せている。
アゲマキは泥質の干潟に生息し、県沿岸の有明海ではノリやカキの養殖業者らが副業として収穫。県での漁獲量は、ピーク時の1980年代後半に約800トンに上ったが、90年代前半に約1トンにまで落ち込み、92年に漁は途絶えた。激減した原因は分かっておらず、県は絶滅の危機が増大している「絶滅危惧2類種」に指定している。
センターによると、アゲマキは秋に1個体で数十万〜100万個の卵を産む。しかし大半は海流で流されて死んだり、天敵のナルトビエイやカモに捕食されたりする。一般的に二枚貝が成貝まで育つのは1%未満とみられている。
センターは96年にアゲマキを人工的に繁殖させる事業に着手。まず水槽の中で安定的に繁殖させることを目指し、干潟の泥を鉱物で代用した下地をつくり、孵化ふかしたアゲマキの幼生が順調に育つことを確認した。水槽で大きくなった稚貝を干潟に放流する際は、ネットで覆うことで潮に流されず、天敵に捕食されないような環境も整えた。
事業開始から20年となる2016年度には、アゲマキ漁の経験がある漁業者に依頼し、鹿島市沿岸など四十数地点で定着状況を調べたところ、7年前の12倍の個体の生息が確認できた。
県は来年2月頃、1000万円かけてアゲマキの大きさや生息密度を本格的に調査。資源量を推定し約25年ぶりに漁が再開できるかどうかを判断する方針。
センターの荒巻裕副所長(47)は「アゲマキの巣穴には酸素や海水が流入するため、個数が増えるほど干潟が浄化され、生き物が育ちやすい環境づくりにもつながる」と話す。鹿島市のカキ養殖業池田義孝さん(61)は「有明海特産のアゲマキを、再び多くの人に味わってもらいたい」と漁再開を心待ちにしている。
二枚貝の生態を研究している国立研究開発法人「水産研究・教育機構西海区水産研究所」の松山幸彦・資源培養グループ長(49)は「絶滅に近い状況まで減った貝の資源量が回復するケースは極めてまれだ。産卵と成長に適した条件を見つけて稚貝を放流する地道な取り組みが奏功しており、資源量が減っている他の貝類の調査研究にも役立つ」と話した。(上高原毅)
◆アゲマキ=有明海と八代海の泥質の干潟に生息し、最大で10センチほどに成長する。身は肉厚で、バター焼きやフライなどの料理を楽しめる。かつて市場に出回っていた有明海産のアゲマキは1キロ当たり600〜700円で販売されていた。現在、スーパーなどでは韓国産が流通している。
http://yomiuri.co.jp/eco/20171126-OYT1T50053.html