新作アニメ映画「未来のミライ」について語る細田守監督=中日新聞北陸本社で
2018年7月7日
http://www.chunichi.co.jp/hokuriku/article/bunka/list/201807/CK2018070702000214.html
アニメーション映画の細田守監督(50)=富山県上市町出身、金沢美術工芸大卒=の新作「未来のミライ」が二十日から全国公開される。甘えん坊の四歳の男の子くんちゃんにミライちゃんという妹ができることで始まる家族の物語だ。「サマーウォーズ」(二〇〇九年)以降、さまざまなバリエーションの家族と個人の自立を作品で問いかけてきた細田監督。新作で提示した「家族の最新形」について聞いた。 (松岡等)
家族像は いろいろ
第二子が生まれた家族。母親は職場に復帰し、父親が家庭に残って子育てをしながら、家で仕事をすることになる。「家族の在り方が変化している時代。結婚するもしないも、子どもを産む産まないも自由だし、かつてのような決まった形はない。シングルマザーはもちろんLGBTの家庭もある。話さずとも分かるという時代ではなく、家族間でこそ話し合わなくては、やっていけないので」
二年半前、三歳の長男に妹ができたことから企画が生まれた。「ある日、長男が『夢で大きくなった赤ちゃんを見たよ』と。それがうらやましくて、想像がふくらんだ。子どもとの生活の中で起きた出来事が映画になっている」と明かす。
映画では、妹ができたことで母親から愛情が奪われると甘えるくんちゃんが、家族の過去と未来を行き来するファンタジーを通して成長し、自分は兄だと自覚していく。「愛情を取り戻すためには自分が何者かであるかを知ることが必要。兄として、実は愛情を注ぐべき側の存在だと分かって、別の愛情が与えられる」。自分が何物かというアイデンティティーの問題。細田監督は「日本人における個とは何かということを常々、考えている。日本人の監督としてどういうふうに捉えているかを映画に取り込むことは重要」と語る。
くんちゃん役に上白石萌歌さんを抜擢(ばってき)。ミライちゃん役に黒木華さん、父親役は星野源さん、母親役に麻生久美子さん、ほかに役所広司さん、吉原光夫さん、宮崎美子さん、福山雅治さんら豪華俳優陣が作品にリアリティーを与えている。
カンヌ国際映画祭「監督週間」で公式上映されたのはアニメでは高畑勲監督の「かぐや姫の物語」以来。同映画祭でパルムドールを獲得した是枝裕和監督の「万引き家族」が描く疑似家族と対照的だが、「『バケモノの子』で描いた疑似家族を経て、星野さんが『今の家族の最新形』と評してくれたのはうれしかった」。
家族がテーマの作品が続くが「まだまだ描くに値するテーマ。日本の家族は変化の途中だし、そこに今まで無かった人生観があるなら、映画で表現すべきだと思っている」と話した。
ほそだ・まもる 1967年、富山県上市町出身。金沢美術工芸大では油絵専攻。東映動画(現・東映アニメーション)でアニメーターとして活躍後、演出に転身。フリーとなり06年の劇場版「時をかける少女」で日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞。「サマーウォーズ」(09年)で文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞。11年に「スタジオ地図」を設立後、「おおかみこどもの雨と雪」(12年)、「バケモノの子」(15年)を発表している。
![【映画】細田守監督最新作「未来のミライ」 20日公開 ->画像>1枚](http://www.chunichi.co.jp/hokuriku/article/bunka/list/201807/images/PK2018070702100096_size0.jpg)
2018年7月7日
http://www.chunichi.co.jp/hokuriku/article/bunka/list/201807/CK2018070702000214.html
アニメーション映画の細田守監督(50)=富山県上市町出身、金沢美術工芸大卒=の新作「未来のミライ」が二十日から全国公開される。甘えん坊の四歳の男の子くんちゃんにミライちゃんという妹ができることで始まる家族の物語だ。「サマーウォーズ」(二〇〇九年)以降、さまざまなバリエーションの家族と個人の自立を作品で問いかけてきた細田監督。新作で提示した「家族の最新形」について聞いた。 (松岡等)
家族像は いろいろ
第二子が生まれた家族。母親は職場に復帰し、父親が家庭に残って子育てをしながら、家で仕事をすることになる。「家族の在り方が変化している時代。結婚するもしないも、子どもを産む産まないも自由だし、かつてのような決まった形はない。シングルマザーはもちろんLGBTの家庭もある。話さずとも分かるという時代ではなく、家族間でこそ話し合わなくては、やっていけないので」
二年半前、三歳の長男に妹ができたことから企画が生まれた。「ある日、長男が『夢で大きくなった赤ちゃんを見たよ』と。それがうらやましくて、想像がふくらんだ。子どもとの生活の中で起きた出来事が映画になっている」と明かす。
映画では、妹ができたことで母親から愛情が奪われると甘えるくんちゃんが、家族の過去と未来を行き来するファンタジーを通して成長し、自分は兄だと自覚していく。「愛情を取り戻すためには自分が何者かであるかを知ることが必要。兄として、実は愛情を注ぐべき側の存在だと分かって、別の愛情が与えられる」。自分が何物かというアイデンティティーの問題。細田監督は「日本人における個とは何かということを常々、考えている。日本人の監督としてどういうふうに捉えているかを映画に取り込むことは重要」と語る。
くんちゃん役に上白石萌歌さんを抜擢(ばってき)。ミライちゃん役に黒木華さん、父親役は星野源さん、母親役に麻生久美子さん、ほかに役所広司さん、吉原光夫さん、宮崎美子さん、福山雅治さんら豪華俳優陣が作品にリアリティーを与えている。
カンヌ国際映画祭「監督週間」で公式上映されたのはアニメでは高畑勲監督の「かぐや姫の物語」以来。同映画祭でパルムドールを獲得した是枝裕和監督の「万引き家族」が描く疑似家族と対照的だが、「『バケモノの子』で描いた疑似家族を経て、星野さんが『今の家族の最新形』と評してくれたのはうれしかった」。
家族がテーマの作品が続くが「まだまだ描くに値するテーマ。日本の家族は変化の途中だし、そこに今まで無かった人生観があるなら、映画で表現すべきだと思っている」と話した。
ほそだ・まもる 1967年、富山県上市町出身。金沢美術工芸大では油絵専攻。東映動画(現・東映アニメーション)でアニメーターとして活躍後、演出に転身。フリーとなり06年の劇場版「時をかける少女」で日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞。「サマーウォーズ」(09年)で文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞。11年に「スタジオ地図」を設立後、「おおかみこどもの雨と雪」(12年)、「バケモノの子」(15年)を発表している。