アメリカ同時多発テロ事件から19年になる。
その直後に入ったニューヨークの現場で、私は安倍晋三を見ている。在任日数が憲政史上最高を記録し、まもなく職を辞そうという今の日本の首相だ。
当時は第1次小泉純一郎内閣の官房副長官の職にあって、テロ事件後に訪米した小泉首相に帯同していた。航空機が突っ込み倒壊したワールドトレードセンター(WTC)の現場を、小泉が近くから視察するにあたって、その場所に先乗りして到着を待っていた。
日本の首相が来るとは知らずに、物々しい雰囲気に野次馬が集まる中で、ひょろりと詫びしそうに立っている姿が目にとまった。
この人物がのちに首相となり、“安倍一強”と呼ばれる体制の中で、連続在任日数が史上最高を記録するとは思いもしなかった。民主党(当時)から政権を奪還した安倍政権は7年と8カ月で幕を閉じるが、第1次もあわせると、この19年間のうち半分近く首相の座にいたことになる。
略…
■自爆テロを教えたのは日本人だった
そもそも、イスラム世界に“自爆テロ”を教えたのも日本人だ。
日本赤軍による「テルアビブ空港乱射事件」がきっかけだった。
1972年、イスラエルのテルアビブにあるベン・グリオン(旧ロッド)国際空港で日本赤軍のメンバーの奥平剛士、安田安之、岡本公三の3人が銃を乱射。最後に手榴弾で自爆するはずが、奥平は射殺され、安田のみが自爆。岡本は拘束された。
日本の“切腹”にも通じる自決覚悟と、自己犠牲の攻撃手法に、パレスチナやイスラム文化圏が衝撃を覚える。これがジハード(聖戦)と重なって、自爆テロが確立していく。
そうしてみると、このテロ事件の源流は日本に求められるといっても過言ではなかった。ただ、それも歴史を振り返れば、アメリカと独立国として対峙してきたのが、日本だったというだけのことだ。
今、WTCの建っていた場所には、巨大な池のようなモニュメントが整備され、そこを取り囲む石碑には犠牲者全員の名前が刻まれている。その中に、母親の名前といっしょに「AND HER UNBORN CHILD(生まれなかった彼女の子とともに)」というものを見つけることができる。
それが世界で最も寂しい墓標のように見えてしまうのは、私だけだろうか。
以下全文
https://news.infoseek.co.jp/article/toyokeizai_20200911_374876/
その直後に入ったニューヨークの現場で、私は安倍晋三を見ている。在任日数が憲政史上最高を記録し、まもなく職を辞そうという今の日本の首相だ。
当時は第1次小泉純一郎内閣の官房副長官の職にあって、テロ事件後に訪米した小泉首相に帯同していた。航空機が突っ込み倒壊したワールドトレードセンター(WTC)の現場を、小泉が近くから視察するにあたって、その場所に先乗りして到着を待っていた。
日本の首相が来るとは知らずに、物々しい雰囲気に野次馬が集まる中で、ひょろりと詫びしそうに立っている姿が目にとまった。
この人物がのちに首相となり、“安倍一強”と呼ばれる体制の中で、連続在任日数が史上最高を記録するとは思いもしなかった。民主党(当時)から政権を奪還した安倍政権は7年と8カ月で幕を閉じるが、第1次もあわせると、この19年間のうち半分近く首相の座にいたことになる。
略…
■自爆テロを教えたのは日本人だった
そもそも、イスラム世界に“自爆テロ”を教えたのも日本人だ。
日本赤軍による「テルアビブ空港乱射事件」がきっかけだった。
1972年、イスラエルのテルアビブにあるベン・グリオン(旧ロッド)国際空港で日本赤軍のメンバーの奥平剛士、安田安之、岡本公三の3人が銃を乱射。最後に手榴弾で自爆するはずが、奥平は射殺され、安田のみが自爆。岡本は拘束された。
日本の“切腹”にも通じる自決覚悟と、自己犠牲の攻撃手法に、パレスチナやイスラム文化圏が衝撃を覚える。これがジハード(聖戦)と重なって、自爆テロが確立していく。
そうしてみると、このテロ事件の源流は日本に求められるといっても過言ではなかった。ただ、それも歴史を振り返れば、アメリカと独立国として対峙してきたのが、日本だったというだけのことだ。
今、WTCの建っていた場所には、巨大な池のようなモニュメントが整備され、そこを取り囲む石碑には犠牲者全員の名前が刻まれている。その中に、母親の名前といっしょに「AND HER UNBORN CHILD(生まれなかった彼女の子とともに)」というものを見つけることができる。
それが世界で最も寂しい墓標のように見えてしまうのは、私だけだろうか。
以下全文
https://news.infoseek.co.jp/article/toyokeizai_20200911_374876/