https://mainichi.jp/articles/20210706/k00/00m/040/289000c
毎日新聞 2021/7/6 20:55(最終更新 7/6 22:01) 1095文字
利根川精工が製造し、輸出していたモーター=国連専門家パネルの報告書より
軍事用ドローンなど兵器に転用可能なモーターを無許可で中国企業に輸出しようとしたとして、警視庁公安部は6日、東京都大田区の電子部品製造業者「利根川精工」と男性社長(90)を外為法違反(無許可輸出未遂)容疑で書類送検した。公安部は2006年以降、モーター約1万1000個が中国やアラブ首長国連邦(UAE)などに輸出され、内戦が続く中東イエメンなどで一部が軍事転用された可能性があるとみて調べている。
書類送検容疑は20年6月、経済産業相の許可を受けず、軍事転用可能なモーター150個(計495万円相当)を、成田空港から中国の貿易会社に輸出しようとしたとしている。東京税関の検査で発覚した。
経産省は20年4月、外為法にもとづき、この貿易会社など複数の中国企業に同型モーターを輸出する際は経産相の許可を得るよう利根川精工に通知していた。
公安部などによると、同社は通知前の20年3月にも同型モーター200個を同じ貿易会社に輸出。モーターは中国企業に販売されたとみられるが、この中国企業の親会社は中国人民解放軍と商取引があったという。
電子部品製造業者「利根川精工」=東京都大田区で2021年7月6日午前撮影
公安部によると、モーターは電子信号を受信してドローンなどの動きを制御するものだった。同部は認否を明らかにしていないが、男性社長は6日、毎日新聞の取材に容疑を認め、「中国では農薬散布用のヘリコプターに使われると聞いたが、人民解放軍との関連は知らなかった。輸出に許可が必要なのは知っていたが忘れていた」と話した。
社長によると、3年ほど前に「中国の商社社員」を名乗るスーツ姿の男性が突然会社を訪れ、性能などに注文を付けた上で「モーターを売ってほしい」と求められたのが輸出のきっかけだったという。
国連が20年1月に公表した報告書によると、利根川精工は18年11月、イエメン企業にモーター60個を輸出しようとしたが、経由地のUAEで押収された。報告書は、モーターがイエメンの親イラン武装組織フーシ派の支配地域に渡り、軍用ドローンや水上爆弾に使われる恐れがあったと指摘。同社のモーターは16年にアフガニスタンで墜落したイランのドローンの残骸からも見つかった。
社長は取材に「イエメンの会社から16年ごろに依頼があり、メールでやりとりをした後にUAE経由で輸出した。脱穀機などに使われると聞いた」と説明。軍事転用された可能性については「ドローンの制御には使えないはずだ。国連の報告書はうそだ」と主張した。
1960年代創業の利根川精工では現在、社長と取締役、従業員2人が働く。国内販売も含めて14年以降で少なくとも約3億4000万円を売り上げたとみられる。【斎藤文太郎】
毎日新聞 2021/7/6 20:55(最終更新 7/6 22:01) 1095文字
利根川精工が製造し、輸出していたモーター=国連専門家パネルの報告書より
軍事用ドローンなど兵器に転用可能なモーターを無許可で中国企業に輸出しようとしたとして、警視庁公安部は6日、東京都大田区の電子部品製造業者「利根川精工」と男性社長(90)を外為法違反(無許可輸出未遂)容疑で書類送検した。公安部は2006年以降、モーター約1万1000個が中国やアラブ首長国連邦(UAE)などに輸出され、内戦が続く中東イエメンなどで一部が軍事転用された可能性があるとみて調べている。
書類送検容疑は20年6月、経済産業相の許可を受けず、軍事転用可能なモーター150個(計495万円相当)を、成田空港から中国の貿易会社に輸出しようとしたとしている。東京税関の検査で発覚した。
経産省は20年4月、外為法にもとづき、この貿易会社など複数の中国企業に同型モーターを輸出する際は経産相の許可を得るよう利根川精工に通知していた。
公安部などによると、同社は通知前の20年3月にも同型モーター200個を同じ貿易会社に輸出。モーターは中国企業に販売されたとみられるが、この中国企業の親会社は中国人民解放軍と商取引があったという。
電子部品製造業者「利根川精工」=東京都大田区で2021年7月6日午前撮影
公安部によると、モーターは電子信号を受信してドローンなどの動きを制御するものだった。同部は認否を明らかにしていないが、男性社長は6日、毎日新聞の取材に容疑を認め、「中国では農薬散布用のヘリコプターに使われると聞いたが、人民解放軍との関連は知らなかった。輸出に許可が必要なのは知っていたが忘れていた」と話した。
社長によると、3年ほど前に「中国の商社社員」を名乗るスーツ姿の男性が突然会社を訪れ、性能などに注文を付けた上で「モーターを売ってほしい」と求められたのが輸出のきっかけだったという。
国連が20年1月に公表した報告書によると、利根川精工は18年11月、イエメン企業にモーター60個を輸出しようとしたが、経由地のUAEで押収された。報告書は、モーターがイエメンの親イラン武装組織フーシ派の支配地域に渡り、軍用ドローンや水上爆弾に使われる恐れがあったと指摘。同社のモーターは16年にアフガニスタンで墜落したイランのドローンの残骸からも見つかった。
社長は取材に「イエメンの会社から16年ごろに依頼があり、メールでやりとりをした後にUAE経由で輸出した。脱穀機などに使われると聞いた」と説明。軍事転用された可能性については「ドローンの制御には使えないはずだ。国連の報告書はうそだ」と主張した。
1960年代創業の利根川精工では現在、社長と取締役、従業員2人が働く。国内販売も含めて14年以降で少なくとも約3億4000万円を売り上げたとみられる。【斎藤文太郎】