任天堂の新型ゲーム機「Nintendo Switch(ニンテンドースイッチ)」が好調なスタートを切った。3月の発売直後から品薄が続く人気で、
同社は平成30年3月期に9年ぶりの増収に転じる見込みだ。一方、新たな事業の柱とすべく昨秋、本格展開を始めたスマートフォン向けアプリには勢いが
みられない。主力事業は活況に沸くが、新たな収益モデルの確立という課題は依然残っている。
「良いスタートを切れた。正直ほっとしている」。4月27日、任天堂の君島達己社長は、29年3月期決算についての記者会見の席上、スイッチの好調に
安堵の表情を浮かべた。スイッチの世界販売台数は、3月3日の発売から1カ月で274万台。予定の200万台を大きく上回った。
君島社長は「今期(30年3月期)はスイッチの立ち上げでビジネスの流れを変え、販売1千万台を目指す」と意気込む。そうなれば、前機種「WiiU(ウィー・ユー)」の
販売不振、業績低迷という悪夢から抜け出せる。だがスイッチとは別に「ビジネスの流れ」を変えると期待していたスマホ向けアプリは、高い話題性の割に
収益効果は乏しい。29年3月期の連結売上高4890億円のうち、スマホアプリ関連は200億円未満。前期のほぼゼロからは増えたものの、柱の事業とするには物足りない。
スマホアプリの収益構造は、ゲーム機を販売する事業と大きく異なる。利用者は無料で入手(ダウンロード)でき、ゲームの進み具合に応じて料金を支払う。
ダウンロード数と収益は必ずしも連動しない。どの段階で、いくらの料金を設定するかがビジネスの肝だ。スマホアプリは、浮き沈みが激しい世界で、
任天堂はまだ新参者。新たな手法で利用者の反応を探っている段階といえる。
例えば「スーパーマリオラン」はダウンロード無料で、あるレベルから先に進めるには1200円が必要になる仕組み。スマホアプリとしては高いが
支払いは1回だけで、小刻みに課金する多くのゲームとは異なる。
現在、累計1億5千万程度のダウンロード数があるとみられる。ただ、当初の目標ほど収益にはつなげられていないようだ。任天堂は当初、利用者の
2桁%以上が課金に応じると見込んでいたが「残念ながら届いていない」(君島社長)。
一方「ファイアーエムブレム」では、ゲーム内で有料アイテムを購入しながら進める一般的な方式を採用。任天堂によると、ダウンロード数は
スーパーマリオランの10分の1にも満たないが、売上高はファイアーエムブレムの方が上だという。
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