テルアビブ大学とシカゴ大学からなる研究チームが、クォークとして知られる素粒子グループどうしを融合させた際に放出されるエネルギー量が、核融合反応の約8倍にものぼることがわかったと発表しました。
クォークとは、物質を構成する原子、を構成する陽子と中性子など、を構成する素粒子、を構成する粒子のグループのひとつ。クォークにも6つの種類があるとされます。クォーク自体も6つのフレーバーと呼ばれる種類があり、それぞれアップ、ダウン、ストレンジ、チャーム、トップ、ボトムに分類することができます。
スイス・ジュネーブ郊外にあるCERNの大型ハドロン衝突型加速器(Large Hadron Collider : LHC)では、原子を高速で衝突させてこうした素粒子に分離させ、それぞれの粒子に関する研究が行われています。そしてこれまでの研究では、クォークどうしが結合してバリオンなど複合粒子を構成する際に、大きなエネルギーが関わっていることが示されていました。
研究者らは、バリオン生成の研究をすすめるうちに、チャームクォーク2つを融合させてバリオンを構成するためには130MeV(1億3000万電子ボルト)のエネルギーが必要であることを発見しました。そして、その際には12MeVの余剰エネルギーが放出されることがわかりました。
研究者らはこの放出エネルギーに興味を持ち、より重い、つまりエネルギーを持つと考えられるボトムクォーク2つを使って同様の実験をしてみました。すると230MeVのエネルギーで発生したボトムクォークの融合時には約138MeVが放出され、残りはより軽いクォークからなるバリオンに変化することを突き止めました。これは水素爆弾のエネルギー放出源となる水素核融合に対して8倍以上という莫大なエネルギー量です。
あまりのエネルギーの大きさに、研究者らはこの研究結果は公表すべきではないとさえ感じたとしています。しかし、その後の研究の結果、このエネルギーの放出時間はわずかに1ピコ秒ほどしかなく、これでは水素爆弾のような連鎖的な反応を引き起こすには至らないことがわかりました。
研究者らは、現状ではこの研究結果が完全に理論上の話だと認めています。そしてLHCでこの現象を実験することも可能だとしつつも、現状ではそれを実行しようとは考えていないとのことです。
ちなみに、電子ボルトとは自由空間内で1つの電子が1Vの電圧で加速される際のエネルギーのこと。LHCでは 2013〜2015年にかけて実施された強化工事により、13TeV(13兆電子ボルト)ものエネルギーを扱えるようになっています。
http://japanese.engadget.com/2017/11/08/8/