若い女性に多いイメージの便秘だが、病院の便秘外来を訪れる8割以上は中高年だという。出てもすっきりしない。年齢と共に腸内環境が悪化し、筋力が落ちてくる中高年の便秘の問題は深刻だ。解決法とは?
* * *
東京都八王子市在住のトモコさん(77)は、20年以上便秘に悩まされている。1週間出ないこともザラ。便がたまってくると、「さぁ、出すか」。
下剤効果のある茶を飲み、排泄を促している。これがまた、かなり強力なモノ。このお茶を飲んだ日は、家から一歩も外に出られない。
「だから、今日は便を出す日、と決めて、飲むんです」
トモコさんの友人のマリコさん(78)も便秘症。ただマリコさんは、便秘と下痢を繰り返し、気づけばいつもトイレ。便意を感じてトイレに行くも、踏ん張ると血圧が上がるのが怖い。だから、最近は力むこともできない。
厚生労働省平成28年国民生活基礎調査によると、便秘と感じるのは、20代男性0・65%、女性3・52%であるのに対し、80代以上は、男性10・76%、女性10・83%と、高齢者の割合が高い。
順天堂大学医学部教授で、便秘のスペシャリスト、小林弘幸医師は言う。
「年齢を重ねるほど、自律神経も腸内環境も悪化し、筋力も衰えます。これが便秘の原因になっています」
大学病院として日本初の便秘外来を設け、これまで2万人もの便秘患者を診てきた。患者の8割が50歳超で、中でも80歳超の人が多い。簡単に治らないため、多くが継続的に通う。便秘外来に10年通い続ける人が多くいるのだ。
「今日診た患者(60代後半女性)は、下痢が続くと言ってきたが、便秘だった。下で詰まっているから、上の緩い便が周りを伝って出てしまっていたのです。一見すると下痢ですが、実は便秘が原因の下痢なんです」(小林医師)
便秘とは、便中の水分が乏しく便が硬くなる、もしくは便の通り道である腸管が狭くなり排便が困難、または排便がまれな状態をいう。便秘症の定義はなく、本人が、排便回数を不快と感じれば便秘症、なのだ。逆に、週に1回しか便が出なくても本人にとって快適なら、その人は便秘症とはいえない。
快便生活を送るには、規則正しい食事と生活、さらに適度な運動と、過度なストレスを避けることが大前提だ。では、どこに気を付けたらいいのか。
便秘の原因とされる筋力の低下や、腸内環境や自律神経を整えればよいという。 小林医師が開発した自律神経を整えるセル・エクササイズの一つを紹介しよう。
「足首揺らし」は、片足立ちで、足首をつかみ、つかんだ足首をぶらぶらと揺らす。左右12秒ずつでよい。意識を股関節に集中させて、ただゆらゆらさせるだけで、足関節、股関節、腸腰筋も緩む。ほか、おなかをつかんでゆっくりと呼吸をしながら、大きく骨盤を回す動きなどもあり、どこでもすぐに、場所をとらずにできるものばかりだ。
「腸に刺激を与える運動をすることが大前提。おなかをひねったり、温めるのもよいです。お風呂に入れないときは腹巻きをしましょう」(同)
無理をせずに、深い呼吸とともに、血流を意識した運動がよい。いや、わかっていても、運動が苦手、という人は、どうすればよいか。
「そういう人は、階段を使えばよいのです」
階段の使用を習慣づけるだけでも違う。そのうえで、もちろん、食事にも気を付けよう。食物繊維を豊富にとることも大切。
「味噌汁。いいですよ」
運動も食事も必死になりすぎると、今度はそれ自体がストレスになる。義務感を感じず楽しみながら、緩〜く続けよう。
まずは、気にしないこと。「私は健康」と自分に言い聞かせ、リラックスすることが何より大事なようだ。
「便秘の場合は、メンタルが9割。自分で便秘にしちゃっている人が多いんです。だから、いつも患者さんには『何も気にしないでいいですよ』と言っています。便秘はそう簡単には治りません。便秘とうまく付き合うことです」
(本誌・大崎百紀)
※ 週刊朝日 2019年1月4‐11日合併号より抜粋
https://dot.asahi.com/wa/2018122800053.html
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東京都八王子市在住のトモコさん(77)は、20年以上便秘に悩まされている。1週間出ないこともザラ。便がたまってくると、「さぁ、出すか」。
下剤効果のある茶を飲み、排泄を促している。これがまた、かなり強力なモノ。このお茶を飲んだ日は、家から一歩も外に出られない。
「だから、今日は便を出す日、と決めて、飲むんです」
トモコさんの友人のマリコさん(78)も便秘症。ただマリコさんは、便秘と下痢を繰り返し、気づけばいつもトイレ。便意を感じてトイレに行くも、踏ん張ると血圧が上がるのが怖い。だから、最近は力むこともできない。
厚生労働省平成28年国民生活基礎調査によると、便秘と感じるのは、20代男性0・65%、女性3・52%であるのに対し、80代以上は、男性10・76%、女性10・83%と、高齢者の割合が高い。
順天堂大学医学部教授で、便秘のスペシャリスト、小林弘幸医師は言う。
「年齢を重ねるほど、自律神経も腸内環境も悪化し、筋力も衰えます。これが便秘の原因になっています」
大学病院として日本初の便秘外来を設け、これまで2万人もの便秘患者を診てきた。患者の8割が50歳超で、中でも80歳超の人が多い。簡単に治らないため、多くが継続的に通う。便秘外来に10年通い続ける人が多くいるのだ。
「今日診た患者(60代後半女性)は、下痢が続くと言ってきたが、便秘だった。下で詰まっているから、上の緩い便が周りを伝って出てしまっていたのです。一見すると下痢ですが、実は便秘が原因の下痢なんです」(小林医師)
便秘とは、便中の水分が乏しく便が硬くなる、もしくは便の通り道である腸管が狭くなり排便が困難、または排便がまれな状態をいう。便秘症の定義はなく、本人が、排便回数を不快と感じれば便秘症、なのだ。逆に、週に1回しか便が出なくても本人にとって快適なら、その人は便秘症とはいえない。
快便生活を送るには、規則正しい食事と生活、さらに適度な運動と、過度なストレスを避けることが大前提だ。では、どこに気を付けたらいいのか。
便秘の原因とされる筋力の低下や、腸内環境や自律神経を整えればよいという。 小林医師が開発した自律神経を整えるセル・エクササイズの一つを紹介しよう。
「足首揺らし」は、片足立ちで、足首をつかみ、つかんだ足首をぶらぶらと揺らす。左右12秒ずつでよい。意識を股関節に集中させて、ただゆらゆらさせるだけで、足関節、股関節、腸腰筋も緩む。ほか、おなかをつかんでゆっくりと呼吸をしながら、大きく骨盤を回す動きなどもあり、どこでもすぐに、場所をとらずにできるものばかりだ。
「腸に刺激を与える運動をすることが大前提。おなかをひねったり、温めるのもよいです。お風呂に入れないときは腹巻きをしましょう」(同)
無理をせずに、深い呼吸とともに、血流を意識した運動がよい。いや、わかっていても、運動が苦手、という人は、どうすればよいか。
「そういう人は、階段を使えばよいのです」
階段の使用を習慣づけるだけでも違う。そのうえで、もちろん、食事にも気を付けよう。食物繊維を豊富にとることも大切。
「味噌汁。いいですよ」
運動も食事も必死になりすぎると、今度はそれ自体がストレスになる。義務感を感じず楽しみながら、緩〜く続けよう。
まずは、気にしないこと。「私は健康」と自分に言い聞かせ、リラックスすることが何より大事なようだ。
「便秘の場合は、メンタルが9割。自分で便秘にしちゃっている人が多いんです。だから、いつも患者さんには『何も気にしないでいいですよ』と言っています。便秘はそう簡単には治りません。便秘とうまく付き合うことです」
(本誌・大崎百紀)
※ 週刊朝日 2019年1月4‐11日合併号より抜粋
https://dot.asahi.com/wa/2018122800053.html