トランプvsバイデンの直接対決が迫っている
アメリカ大統領選挙は現職のトランプ氏の苦戦が伝えられる。しかし、党大会もテレビ討論も
本格化するのはこれからである。ニューヨーク在住46年のジャーナリスト・佐藤則男氏は、
「トランプ敗北はまだ決まっていない」と分析する。
* * *
アメリカの大統領選挙まで約3か月に迫った。だが、アメリカの有権者は少しも盛り上がっていない。
熱狂するはずの党大会は、地方の陽気な代議員も観客もいない。テレビ討論は、これも観客がいない。
このような観客なしの党大会やテレビ討論は、大衆を巻き込み大合唱を起こすのが得意な
トランプ大統領にとって残念なことであろう。
新型コロナウイルスの猛威は今もアメリカ全土を黒い雲のように覆っている。現職のトランプ氏にとっては、
この問題に直接対処していることが弱味にもなっているが、強味になる可能性もある。
もちろん、コロナウイルス感染症の患者が再び増え、死者数が14万に達している現状では何も誇れない。
記者会見では、「なぜマスクをしなかったのか」などと、およそ大統領に対する質問としては
低レベルなやりとりが繰り返されている。それくらい簡単なことさえ怠った大統領ということでもある。
一方、民主党候補のバイデン氏は、トランプ大統領の失策を痛烈に、毒々しく攻撃している。
しかし、トランプ氏を愚か者扱いし、無視する態度は、大統領選挙には不適切だと感じる有権者もいる。
バイデン氏は、トランプ政権を批判するばかりで、コロナ対策の骨子を明確にし、堂々と政策論争をしていないと
批判する声も少なくない。コロナ問題と密接に関わる経済政策についても、二人の候補の間で、
いまだ論争が交わされていないのである。
誤解を生んでいるのがメディア各社の世論調査だ。バイデン氏を持ち上げる傾向のある
ワシントン・ポストやニューヨーク・タイムズ、CNNといったリベラル系メディアは、バイデン氏が10ポイント以上リードし、
勝利の可能性が高いと報じている。だが、権威ある調査会社Real Clear Politicsは、リベラル系、保守系など
各種の世論調査を集計して平均値を出し、バイデン氏のリードは8.7ポイントだとしている。この時期にこの差であれば、
まだまだ行方はわからないと言うべきだ。そして、同調査では、最も影響の大きい激戦区の支持率の差をこう分析している。
ウィスコンシン州:47.8対41.8(バイデン対トランプ 以下同)
アイオワ州:44.5対46.0
ノースカロライナ州:47.3対 45.3
フロリダ州:49.2対 42.8
ペンシルベニア州:49.4対42.8
アリゾナ州:47.8対45.0
いずれも接戦状態である。これらの州でトランプ氏が勝てば、2期目が見えてくる。
筆者は、46年にわたり、アメリカ国内で大統領選挙を見てきたが、この時期の世論調査で現職が挑戦者に
負けている場合、終盤に猛烈に追い上げるパターンが多い。さらに注目しなければならないのが
「オクトーバー・サプライズ」である。大統領選挙の年、投票日直前の10月に、情勢を変えるような
大きな事件が起こるというジンクスである。代表的な例として、1980年、現職のカーター大統領に
共和党のレーガン氏が挑んだ時のケースが有名だ。イランでアメリカ大使館襲撃事件が起こり、
人質救出に向かったアメリカ軍部隊が砂漠に墜落する大失態により、カーター氏の大敗北に終わった。
バイデン氏の楽勝を予想するメディアもあるが、筆者は、まだわからないと思う。
バイデン氏がコロナ問題を解決できる能力は何も実証されていない。たとえ観客はいなくても、二人が同じ場所で、
同じ時間を与えられ、どのような討論をするか見ものである。勝敗のカギは、トランプ氏の攻撃が、
どれだけバイデン氏を苦しめ、選挙民を動かす効果があるかだろう。それに成功しなければ
トランプ氏の勝利はないだろうが、成功する可能性もまだまだ十分に残されている。
ソース NEWSポストセブン 07/28 16:00
https://www.news-postseven.com/archives/20200728_1581652.html?DETAIL
アメリカ大統領選挙は現職のトランプ氏の苦戦が伝えられる。しかし、党大会もテレビ討論も
本格化するのはこれからである。ニューヨーク在住46年のジャーナリスト・佐藤則男氏は、
「トランプ敗北はまだ決まっていない」と分析する。
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アメリカの大統領選挙まで約3か月に迫った。だが、アメリカの有権者は少しも盛り上がっていない。
熱狂するはずの党大会は、地方の陽気な代議員も観客もいない。テレビ討論は、これも観客がいない。
このような観客なしの党大会やテレビ討論は、大衆を巻き込み大合唱を起こすのが得意な
トランプ大統領にとって残念なことであろう。
新型コロナウイルスの猛威は今もアメリカ全土を黒い雲のように覆っている。現職のトランプ氏にとっては、
この問題に直接対処していることが弱味にもなっているが、強味になる可能性もある。
もちろん、コロナウイルス感染症の患者が再び増え、死者数が14万に達している現状では何も誇れない。
記者会見では、「なぜマスクをしなかったのか」などと、およそ大統領に対する質問としては
低レベルなやりとりが繰り返されている。それくらい簡単なことさえ怠った大統領ということでもある。
一方、民主党候補のバイデン氏は、トランプ大統領の失策を痛烈に、毒々しく攻撃している。
しかし、トランプ氏を愚か者扱いし、無視する態度は、大統領選挙には不適切だと感じる有権者もいる。
バイデン氏は、トランプ政権を批判するばかりで、コロナ対策の骨子を明確にし、堂々と政策論争をしていないと
批判する声も少なくない。コロナ問題と密接に関わる経済政策についても、二人の候補の間で、
いまだ論争が交わされていないのである。
誤解を生んでいるのがメディア各社の世論調査だ。バイデン氏を持ち上げる傾向のある
ワシントン・ポストやニューヨーク・タイムズ、CNNといったリベラル系メディアは、バイデン氏が10ポイント以上リードし、
勝利の可能性が高いと報じている。だが、権威ある調査会社Real Clear Politicsは、リベラル系、保守系など
各種の世論調査を集計して平均値を出し、バイデン氏のリードは8.7ポイントだとしている。この時期にこの差であれば、
まだまだ行方はわからないと言うべきだ。そして、同調査では、最も影響の大きい激戦区の支持率の差をこう分析している。
ウィスコンシン州:47.8対41.8(バイデン対トランプ 以下同)
アイオワ州:44.5対46.0
ノースカロライナ州:47.3対 45.3
フロリダ州:49.2対 42.8
ペンシルベニア州:49.4対42.8
アリゾナ州:47.8対45.0
いずれも接戦状態である。これらの州でトランプ氏が勝てば、2期目が見えてくる。
筆者は、46年にわたり、アメリカ国内で大統領選挙を見てきたが、この時期の世論調査で現職が挑戦者に
負けている場合、終盤に猛烈に追い上げるパターンが多い。さらに注目しなければならないのが
「オクトーバー・サプライズ」である。大統領選挙の年、投票日直前の10月に、情勢を変えるような
大きな事件が起こるというジンクスである。代表的な例として、1980年、現職のカーター大統領に
共和党のレーガン氏が挑んだ時のケースが有名だ。イランでアメリカ大使館襲撃事件が起こり、
人質救出に向かったアメリカ軍部隊が砂漠に墜落する大失態により、カーター氏の大敗北に終わった。
バイデン氏の楽勝を予想するメディアもあるが、筆者は、まだわからないと思う。
バイデン氏がコロナ問題を解決できる能力は何も実証されていない。たとえ観客はいなくても、二人が同じ場所で、
同じ時間を与えられ、どのような討論をするか見ものである。勝敗のカギは、トランプ氏の攻撃が、
どれだけバイデン氏を苦しめ、選挙民を動かす効果があるかだろう。それに成功しなければ
トランプ氏の勝利はないだろうが、成功する可能性もまだまだ十分に残されている。
ソース NEWSポストセブン 07/28 16:00
https://www.news-postseven.com/archives/20200728_1581652.html?DETAIL