「国に貢献しなさい」中国軍人の妻が元留学生に指示か…JAXAサイバー攻撃事件
2021/04/21
宇宙航空研究開発機構(JAXA)や防衛関連企業など約200団体がサイバー攻撃を受けた事件で、
中国軍人の妻が、知人を通じて日本にいる留学生に接触を図り、「国に貢献しなさい」などと迫って
軍側に協力させていたことが捜査関係者への取材でわかった。
警視庁公安部は、留学生を協力者に仕立てていたとみて、中国の情報収集活動の実態を調べている。
警視庁公安部によると、中国共産党員で30歳代のシステムエンジニアの男(私電磁的記録不正作出・同供用容疑で書類送検)と、
元留学生の2人は、それぞれ偽名を使って日本のレンタルサーバーを契約。
サーバーは2016年6月〜17年、中国のハッカー集団「Tick」によるサイバー攻撃に悪用されていた。
捜査関係者によると、2人のうち元留学生に指示を送っていたのは、中国在住の女で、その夫は中国軍のサイバー攻撃部隊「61419部隊」に所属していた。
女は、中国在住の知人から、日本で学ぶ留学生の男の紹介を受けていた。公安部がサイバー攻撃の捜査を本格化させた際、男は既に帰国していたが、
来日した際に公安部が任意で事情聴取。男の携帯電話に残されていたSNSやメールの記録から、女とやりとりしていた内容が判明した。
女は男に対し、レンタルサーバーを偽名で契約するよう求めたほか、日本製のUSBメモリーを購入するよう要請。
日本製品の安全対策などを研究・分析する目的だったとみられ、男は実際にUSBを購入して中国に送っていた。
その後、女の要求は徐々にエスカレートし、日本企業を装って日本企業しか購入できないセキュリティーソフトを買うよう指示。
男は購入を申し込んだが買えず、「これ以上、ウソをついたら逮捕されてしまう」「いけないことだ」などと伝えたが、
女は「国に貢献しなさい」「(軍に所属する)夫の出世のためだ」などと迫ったという。
中国では17年6月、国民や企業に国の情報活動への協力を義務付ける「国家情報法」が施行されている。
自国以外に居住している国民も対象で、公安部は、女が国家や軍の力を背景に、男を取り込んでいったとみている。
公安部は、元留学生と女についても、サーバーを偽名で契約した私電磁的記録不正作出・同供用容疑などで捜査している。
■帰国後の待遇に影響「留学生が依頼拒むのは難しい」
今回の事件では、民間人を利用した中国の情報活動の一端が浮かんだ。
中国の在外公館は、大使館主催の行事などを通じて留学生や留学生団体との関係を築いている。
このため、香港や新疆ウイグル自治区の人権問題に対する中国政府への抗議デモなどの際に、デモ隊に対峙する要員として、留学生が参加することもあるという。
例えば、2019年に大阪市で開かれた主要20か国・地域(G20)首脳会議で習近平国家主席が来日した時にも、中国政府への抗議活動の周辺に多数の中国人留学生が集まっている。
公安当局は、留学生を利用した情報収集活動についても把握を進めている。
警視庁幹部は「大使館からの評価が低いと、帰国後の就職や待遇に差し支える。留学生は政府や軍の依頼があれば拒むのは難しい」と話す。
中国の情報収集活動に詳しい菅沼光弘・元公安調査庁調査第2部長は「外国に住む民間の自国民を使った情報収集活動は中国の常とう手段だ。
米中対立が激しさを増す中、中国はこれまで以上に日本の動向を知ろうと考えるはずで、幅広い分野での情報収集活動が活発化する恐れがある」と指摘している。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20210421-OYT1T50180/
2021/04/21
宇宙航空研究開発機構(JAXA)や防衛関連企業など約200団体がサイバー攻撃を受けた事件で、
中国軍人の妻が、知人を通じて日本にいる留学生に接触を図り、「国に貢献しなさい」などと迫って
軍側に協力させていたことが捜査関係者への取材でわかった。
警視庁公安部は、留学生を協力者に仕立てていたとみて、中国の情報収集活動の実態を調べている。
警視庁公安部によると、中国共産党員で30歳代のシステムエンジニアの男(私電磁的記録不正作出・同供用容疑で書類送検)と、
元留学生の2人は、それぞれ偽名を使って日本のレンタルサーバーを契約。
サーバーは2016年6月〜17年、中国のハッカー集団「Tick」によるサイバー攻撃に悪用されていた。
捜査関係者によると、2人のうち元留学生に指示を送っていたのは、中国在住の女で、その夫は中国軍のサイバー攻撃部隊「61419部隊」に所属していた。
女は、中国在住の知人から、日本で学ぶ留学生の男の紹介を受けていた。公安部がサイバー攻撃の捜査を本格化させた際、男は既に帰国していたが、
来日した際に公安部が任意で事情聴取。男の携帯電話に残されていたSNSやメールの記録から、女とやりとりしていた内容が判明した。
女は男に対し、レンタルサーバーを偽名で契約するよう求めたほか、日本製のUSBメモリーを購入するよう要請。
日本製品の安全対策などを研究・分析する目的だったとみられ、男は実際にUSBを購入して中国に送っていた。
その後、女の要求は徐々にエスカレートし、日本企業を装って日本企業しか購入できないセキュリティーソフトを買うよう指示。
男は購入を申し込んだが買えず、「これ以上、ウソをついたら逮捕されてしまう」「いけないことだ」などと伝えたが、
女は「国に貢献しなさい」「(軍に所属する)夫の出世のためだ」などと迫ったという。
中国では17年6月、国民や企業に国の情報活動への協力を義務付ける「国家情報法」が施行されている。
自国以外に居住している国民も対象で、公安部は、女が国家や軍の力を背景に、男を取り込んでいったとみている。
公安部は、元留学生と女についても、サーバーを偽名で契約した私電磁的記録不正作出・同供用容疑などで捜査している。
■帰国後の待遇に影響「留学生が依頼拒むのは難しい」
今回の事件では、民間人を利用した中国の情報活動の一端が浮かんだ。
中国の在外公館は、大使館主催の行事などを通じて留学生や留学生団体との関係を築いている。
このため、香港や新疆ウイグル自治区の人権問題に対する中国政府への抗議デモなどの際に、デモ隊に対峙する要員として、留学生が参加することもあるという。
例えば、2019年に大阪市で開かれた主要20か国・地域(G20)首脳会議で習近平国家主席が来日した時にも、中国政府への抗議活動の周辺に多数の中国人留学生が集まっている。
公安当局は、留学生を利用した情報収集活動についても把握を進めている。
警視庁幹部は「大使館からの評価が低いと、帰国後の就職や待遇に差し支える。留学生は政府や軍の依頼があれば拒むのは難しい」と話す。
中国の情報収集活動に詳しい菅沼光弘・元公安調査庁調査第2部長は「外国に住む民間の自国民を使った情報収集活動は中国の常とう手段だ。
米中対立が激しさを増す中、中国はこれまで以上に日本の動向を知ろうと考えるはずで、幅広い分野での情報収集活動が活発化する恐れがある」と指摘している。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20210421-OYT1T50180/