2023年1月21日 19時35分 NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230121/k10013956251000.html
「きちんと歩んできたのに踏み外してしまったら、いままで積み上げてきたものも関係なく落ちてしまう」。
ある30代の女性のことばです。彼女に出会ったのは生活が困窮した人に弁当などを配る“炊き出し”の会場でした。彼女は大学院を卒業しこれまでコツコツ真面目に働いてきました。しかし新型コロナウイルスの影響で職を失い、“炊き出し”に並ぶようになったといいます。
私は新型コロナウイルスが流行した2年前の年末から東京・池袋の“炊き出し”会場を取材してきました。並ぶ人は増え続け昨年11月には最多となる542人が列を作りました。
長く続く列を見ていて気付いたことがあります。「スーツ姿に革靴のサラリーマン」「身なりを整えた女性」「元気な若者」この1年は物価高の影響もあり、以前は見られなかった働き盛りの世代や女性が並ぶようになっていたのです。
いったい何が起きているのか。コロナ禍3度目の冬。“炊き出し”の現場から聞こえる声に耳をかたむけました。
(報道局映像センター・カメラマン 小玉義弘)
※動画は5分9秒、12月に放送したものです。データ放送ではご覧になれません。
表情を変える池袋の公園
11月下旬。池袋のランドマーク、「サンシャイン60」の隣にある東池袋中央公園ではアニメのコスプレイベントが開かれていました。公園に響くアニメソングのなか鮮やかな赤や青の衣装をまとったコスプレイヤーたち100人余りが楽しむ池袋らしい休日の風景です。
しかし雰囲気が一変する日があります。「最後尾はこちらです。弁当は全員に配りますので慌てずに並んでください」。午後6時、暗くなった公園が数百もの人影で埋め尽くされます。
集まった人たちの並ぶ先にあるのは「弁当」。
NPO法人が月に2回行う“炊き出し”です。
並ぶ人は増え続けている
昨年11月。気温が5℃と冷え込んだ日に並んだのは過去最多の542人。
ボランティアからもらったカイロを握りしめ順番が来るのをじっと待っていました。
NPOが炊き出しを始めて20年。市民からの寄付や行政の支援金などで活動しています。元はこの場で調理をしてふるまっていましたが、感染対策のため弁当に切り替えました。
並ぶ人は年を追うごとに少しずつ増え続け、新型コロナウイルスの影響でさらに急増。3年前のおよそ2倍に膨れ上がっています。
街に少しずつにぎわいが戻ってきたこの1年ほどの間にも、この場に集まる人は増え続けています。
なぜなのでしょうか?
若い世代も“炊き出し”に
並ぶ人たちを見て気付いたのは、スーツに革靴、スカートにコートなど身なりを整えた、一見すると生活に困っているとは感じられない30代から40代の若い世代が増えたことです。
<40代男性>
キレイな白のスニーカーに人気ブランドの洋服を着た男性。炊き出しには3か月前から通っているそうです。炊き出しに並ぶ理由を聞いたところ意外な答えが帰ってきました。
「仕事はしています。正社員です」。
炊き出しのイメージはその日食べるものがないくらいに困窮した人が並ぶと思っていた私は驚きました。弁当は必要ないのでは?と聞いてみたところ、「この3年間、少しずつ少しずつ給料が減り続けています。どこまで減るのか全く先が見えない」と話してくれました。
男性は1人暮らしです。最初は給料が減るのはしかたないと感じていましたが、3年たっても減り続ける現状に将来への不安を感じています。
「いまも厳しいです。でもこの先さらに厳しくなったらと考えると、生活していくためには今のうちから節約しなければならない」。
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