パーティ後 ―穂乃果の家―
穂乃果「ふうっ、おかたづけおわりっと!」
海未「すみません。全てお任せしてしまって」
穂乃果「いいの! 海未ちゃんは今日の主役なんだから!」
海未「他のメンバーはもう帰ったのですか?」
穂乃果「うん! あっ、ことりちゃんが一緒に帰れなくてごめんって」
海未「あぁ、にこと衣装作りをすると言っていましたね」
穂乃果「すっごくいい曲だって、ことりちゃんはりきってたから」
海未「それでは、私もお暇します」
穂乃果「ええっ!? 海未ちゃんも帰っちゃうの!?」
海未「当たり前でしょう。明日も学校があるのですよ」
穂乃果「えー、いいじゃん! 一緒にお泊りしようよぉ!」
海未「ダメです。帰ります」
穂乃果「着替えとかも貸すからさ! お願い!」
海未「……随分と食い下がりますね。とにかく、ダメなものはダメ……」
穂乃果「わたし、海未ちゃんの家に電話してくる!」タタタタッ
海未「あっ! こらっ、ほのかっ!」
……………………
………………
…………
……
―穂乃果の部屋―
海未「お風呂頂きました」
穂乃果「服のサイズ大丈夫だった?」
海未「といいますか、これは私の服ではありませんか?」
穂乃果「あれっ? そうだっけ? じゃあ前来た時に置いていったのかなぁ」
海未「そうかもしれません。明日、持ち帰りますね」
穂乃果「あーあ、着る服が減っちゃった」
海未「もともと穂乃果の服ではありません」
海未「ベッドに座っても?」
穂乃果「うん。どうぞ」
海未「失礼します」
穂乃果「なんか飲む? ほのか、持ってくるよ」
海未「それでは、お茶を一杯頂けますか?」
穂乃果「りょーかい!」
海未「ゴクゴク」
海未「ふぅ……」
海未「穂乃果の家のお風呂は、私の家よりも少し熱い気がします」
穂乃果「やっぱり? お父さんが熱いのが好きなんだよね。わたしももう少しぬるい方がいいのに」
海未「まぁ、人それぞれですね」
穂乃果「……」
海未「……」
穂乃果「海未ちゃんももう17歳かぁ」
海未「穂乃果だって同じでしょう」
穂乃果「そうだけどさ、次の誕生日で18歳だよ? もう大人じゃん」
海未「そんなことはないでしょう」
穂乃果「あー、海未ちゃん知らないの? 成人は18歳からってカクギケッテイされたんだよ」
海未「そういう意味ではなく、高校に通っている私たちは大人とは言えないでしょう」
穂乃果「んー、難しいことは分かんないや」
海未「穂乃果が言い出したのではありませんか……」
海未「少なくとも、勝手に人の家に電話して宿泊を強制するような人を大人とは言えませんね」
穂乃果「うっ、お、おっけーだったからいいじゃん!」
海未「そういう問題ではありません」
穂乃果「……海未ちゃんのけちんぼ」
海未「なっ!? そ、そういう問題でもないでしょう!」
穂乃果「そういう問題なの!」
海未「断じて違います!」
ギャーギャー
穂乃果「……なんかさ、パーティのあとって寂しくならない?」
海未「え?」
穂乃果「さっきまでみんなでわーってしてたのにさ、急にしーんってなって、そういうのって寂しくない?」
海未「まぁ、分からなくはありませんが」
穂乃果「やっぱり、お泊りするの迷惑だった?」
海未「……誰もそんなことは言ってないでしょう」
穂乃果「ほんとに?」
海未「ええ。穂乃果の迷惑なんて慣れっこですから」
穂乃果「……」
海未「……」
穂乃果「あのさ、迷惑ついでに一つ話してもいい?」
海未「はい」
穂乃果「今度、μ’sとして最後のライブやるでしょ?」
海未「ええ」
穂乃果「あれがさ、私にとっては最後のパーティなんだよね」
海未「……」
穂乃果「もちろん、その後もスクールアイドルは続けるよ。でも、それも高校生で終わり。……ことりちゃんから大学のことは聞いた?」
海未「海外の大学へ進学するという話ですか?」
穂乃果「うん。だから、大学ではことりちゃんと離れ離れになっちゃう。海未ちゃんだって一緒にいられるか分かんない」
海未「……」
穂乃果「もし一緒にいられてもその後は? 穂むらを継ぐか、他の仕事をしてるか分かんないけど、きっとみんなと会える時間ももっと減っちゃう」
海未「そうかもしれませんね」
穂乃果「そう思うとさ、少し寂しくなるんだよね」
海未「……」
海未「あの日、私たちは浜辺で宣言しました。μ’sはおしまいにすると。しかし、その絆が変わることはありません。きっと何年たっても、私たちは一緒に居続けるのでしょう」
穂乃果「……」
海未「……なんて答えで納得するのなら、無理やり私を家に引き留めたりしませんね」
穂乃果「あ、ばれてた?」
海未「ここまで話しておいてばれないと思いましたか?」
穂乃果「えへへ」
海未「しかし、穂乃果がそんなことを言うのは珍しいですね」
穂乃果「あー、わたしだって色々と悩んだりするんだよ」
海未「知っています。口に出すのが珍しい、ということです」
穂乃果「そうかな?」
海未「ただ、その相手が私であることは少し嬉しいですけれど」
穂乃果「え? なんだって?」
海未「で、ですから、その悩みを私に打ち明けてくれたことが……」
穂乃果「ことが?」
海未「……帰りますね」
穂乃果「あっ! うそうそ! ごめんってば!」
海未「私も考えたことがあります。今が人生で最も輝いている時で、これからはそれがくすんでいく一方なのではないかと」
海未「……十数年しか生きていない私が言うのも滑稽な話ですが」
穂乃果「……」
海未「穂乃果はSUNNY DAY SONGを踊ったときのこと、覚えていますか?」
穂乃果「ついこの間のことじゃん。さすがに忘れないよ」
海未「穂乃果、あの時言いましたよね。スクールアイドルの火は決して絶やさないと。そのために私たちは踊るんだと」
穂乃果「そうだね」
海未「それと同じではありませんか?」
穂乃果「え?」
海未「スクールアイドルである私たちを見て、輝きたいと願う人はきっといるはずです」
海未「それと同じように、これからを生きる私たちを見て、何かを感じる人もいるのではないでしょうか」
穂乃果「……!」
海未「つまり、自分が輝くためだけではなく、他の人が輝きを見出す手伝いをする」
海未「そんな生き方もあるのではないかと、最近になって思うようになりました」
穂乃果「……」
海未「……」
穂乃果「……」
海未「……あの、穂乃果?」
穂乃果「そうかも」
海未「え?」
穂乃果「うん。確かにそうかもね」
海未「……」
穂乃果「全部納得したわけじゃないけどさ、ちょっと気持ちが楽になったかも」
海未「そうですか」
穂乃果「はーあ、17歳になった海未ちゃんは大人だなぁ」
海未「だから穂乃果も同じでしょう」
穂乃果「わたしはまだ子どもなの。だから……、」
海未「……?」
穂乃果「えいっ!」ギュウッ
海未「なっ!?」
穂乃果「こんなことしてもゆるされるんだもーん!」
海未「ほ、ほのかっ!?」
穂乃果「えーいっ!」ボフッ
海未「く、苦しいですから離れて……」
穂乃果「……海未ちゃん、ありがと」
海未「……!」
海未「……まったく」
……………………
………………
…………
……
穂乃果「ごめん、海未ちゃんの布団用意するの忘れちゃった」
海未「今から下に取りに行くのは少し憚られますね」
穂乃果「だよねぇ」
海未「…………」
穂乃果「…………」
海未「それでは、私はそのタオルケットを敷いて……」
穂乃果「じゃなくてっ!」
穂乃果「わたしのベッド、一人で使うには少し大きいんだけどなぁ」
海未「……」
穂乃果「ほのかの隣、ちょうど海未ちゃん一人分くらい空いてるんだけどなぁ」
海未「……はぁ、仕方ありませんね」
穂乃果「うんっ!」パアァ
海未「気が進みませんが、穂乃果が下で寝るということですね?」
穂乃果「なんでそうなるのっ!?」
穂乃果「えへへ、久しぶりだなぁ、海未ちゃんと一緒に寝るの」
海未「この歳になっていつも一緒に寝ている方がおかしいと思いますが」
穂乃果「え〜? 雪穂とときどき一緒に寝てるよ?」
海未「それはまた話が違ってきます」
穂乃果「そうかなぁ」
海未「そうです」
穂乃果「でも、意外だったなぁ」
海未「……?」
穂乃果「海未ちゃんも、今が一番輝いてる、なんて思ってたんだ」
海未「……いけませんか?」
穂乃果「んーん、いいと思うよ。そういえば、ラブライブの時も言ってたもんね。たくさんの人に見られるのがクセになってきたって」
海未「……」ギュッ
穂乃果「いたっ!? ふとももつねらないでっ!」
海未「思い出しましたか?」
穂乃果「おもいだした、おもいだしたからっ! 人の前で歌うことが、だよねっ!?」
海未「……」
穂乃果「……」
海未「……でも、本当に感謝もしているのですよ。あの時、私を誘ってくれて」
穂乃果「……」
海未「……ほのか、ありがとう」
穂乃果「……くぅ」
海未「……え?」
海未「……寝ていますね」
穂乃果「……くぅ……くぅ」
海未「私は一人で何を言っているのでしょうか」
海未「はぁ、顔から火が出そうです」
穂乃果「……むにゃ、……くぅ」
海未「……」
海未「……ふふっ、おやすみなさい、ほのか」
おわり
乙です、上手いからなんか本当にこんな会話がありそうでちょっとしんみりしてしまったよ
今日という日は、そんな時期だもんなぁ
良いもの読ませていただいた。
Just this moment is superlative!
久々に良いほのうみを見せてもらったわ
ちょうどsunny day song聴いてたのもあって良かった、乙
自分もいつからかくすんでいるのかなんて考えてしまった