うう…頭がズキズキします…
??「…!は…くお…てっ…」
誰かが呼んでるのでしょうか…?
声が響くので、止めて欲しいのですが。
??「…起きなさーいっ!」
??「ひゃっ」
耳元で怒鳴るなど、覚悟はできているのでしょうね。どうせまた枕投げでもしているのでしょう…
??「何をするのですか!うるさすぎです、まだ耳に残っていますよ…」キッ
??「仕方ないじゃない、いくら起こしても起きないんだから。それに今は非常事態なのよ、海未」
海未「非常事態…というと?」
??「説明が難しいんだけど、どうやら私達、気絶させられてどこかに運ばれたようね…」
海未「知らない間に連れ去られる…もしかして誘拐ですか!?」
??「その可能性もあるわね」
海未「いやそんなまさか!?でも、私と貴女なら、ありえます…」
真姫「家柄としてね。でも縛られているわけでもないし。それに、ここには私達以外、誰もいないわ」
海未「そのようですね。にしてもここはどこなのでしょう…」
海未「…おや、あんなところにやたら大きな箱が置いてありますね。何でしょうか」
真姫「私達宛みたいね、開けてみましょ」ペリペリ
園田海未と書かれたその箱の中には、薙刀が入っていた。非日常的なことに思考が追いつかない中やけに光る銀色が、私の思考をさらにかき乱していた。
真姫「ドリームトリガー、って書いてあるわ、拳銃かしら?おもちゃにしてはしっかりしてるわね」
真姫「あ、海未の箱は薙刀なのね、似合ってるじゃない」
ジリリリリリ!
突然、サイレンのような音が聞こえてきたかと思うと、どこからか大きなモニターのようなものが映し出された。
『「あれ!海未ちゃんと真姫ちゃんがいる!」「ほんとやね」』
『「貴女たちもなの!?」「怖いよ、うみちゃん…」』
『「やっぱり、あんた達もなのね…」「うう…」』
え?画面上のどこにも…そんなっまさか… !
海未「穂乃果はっ、穂乃果もそこにいるんですよね!?」
『「え!?私達のところにはいないから、そっちにいるのかと思ってたのよ!?」』
??『ふふふ。君達が探している人の居場所が知りたい?』
とても嫌な予感がした。そしてそれは的中することになる。
-----------------------------
>>3
μ's、Aqoursとくっついて読みにくくなるかなって 痛った。寝心地悪いなあ。そう思いゆるゆると体を起こすと、視界に入ったのはかわいい後輩。それから学校のような建物。
??「起きて」ユサユサ
??「んー…まだ眠いよぉ…」
??「ほらほら。風邪ひくよ」ペチペチ
??「よく寝たなあ…って外で寝てたの!?」
??「みたいだね、花丸」
花丸「わっ、果南さん」
果南「おはよ。ちょっと変なこと聞くけどさあ、ここって浦の星…じゃないよね?」
花丸「そう、ですよね」
果南「ここ、どこなんだろ…」
その時、不自然に置いてある箱が目に入った。
果南「あれ、なんだろうね」
花丸「見に行くずら」
二人は箱を開けて息を呑んだ。そこに入っていたのはおそらく日本刀と思わしき刀。そしてもう一つには、弓矢。
果南「なんか…すごい、リアルだね」
花丸「たぶん、本物じゃないですかね…供養とかで少し見たことあるんです」
果南「へえ…」
鈍い輝きを放つそれを振り抜くと、さわさわと風が通り抜ける。それが妙に心地よかった。
花丸「やっぱり絵になるずら…あの撮影も果南さんにして正解だったし」
果南「そんなことないよ」
ジリリリリリ!
どこからか警報のような音が聞こえると、目の前に大きな画面が現れる。
『「果南さんに花丸!」「ちゃんと無事みたいね!」』
『「あれ、千歌ちゃんは――」「果南さんがいるなら安心ですわ」』
『「花丸ちゃあ!」「無事ヨーソロー!って、千歌ちゃんは!?いないの!?」』
『「えっ!?千歌がいないの!?じゃあ、今ひとりで…」』
千歌がひとり…?え?そう言えば私達以外の人がいない…
??『ふふふ。君達が探している人の居場所が知りたい?』
不意に、一際大きな画面が出てくると、真っ暗な中からくぐもった声が聞こえてきた。
『「誰なんですの!よくも千歌さんを…!」』
??『教えてあげないけどね。今から説明をするから、しっかり聞いておいてね、一度しか言わないよ?』
果南「花丸、メモ」ボソッ
花丸「は、はいっ」
??『そっちのリーダーを監禁させてもらったよ。ここは比較的新しい廃校。それから、届いてる箱は見てくれたかな?君たちにはここで一つのチームとして相手チームと戦ってもらうよ』
『「何でそんなことしなきゃなんないのよ!」』
??『え、嫌だって?嫌ならいいよ、こっちには人質がいるから。ほら、そんな怖い顔しないで。あと、腕時計送っとくね。各武器の説明、見取り図…ああ、めんどくさい!他にも色々見れるから』
これは素で話しているのだろうか。それとも、油断させるため?
??『最後に!面白い戦いを見せてほしいな!あ、監視してるし、逃げるとかも考えない方がいいよ。しばらくしたらまた来るから、作戦会議でもしといてね。それじゃ。』プツン
果南「……どう思う?」
『「ひとまず状況を整理しましょう。花丸がメモを取ってくれてたから、とりあえず物騒な話は後回しね」』
『「ですがこんな状況を整理、と言われましてもどうしたらいいのか…」』
果南「遠くの方は霧がかかって見えないね…まるで、逃がさないようにしてるみたい」
果南「それから、まだ日があるのに満月が見えるね」
『「え?どういうことなの?」』
果南「太陽や地球の位置的に、有り得ないことなんだよ」
『「さすが果南ね。でも、これってどういうことなの?」』
果南「作り物ってことだよね…演出、とか?考えてもよく分かんないや」
『「プロジェクションマッピングみたいな?誰か、他にはある?」』
花丸「例の腕時計が届いたみたいずら」
『「あ、本当ですね、今は10時半ごろ…」』
『「場所に時間、これくらいかしら?それでは千歌さんのことですが、どうしたらいいのでしょう…」』
果南「千歌の安全が最優先。下手に手出しはできないね」
果南「こっちは、って言ってたから単独犯ではないだろうし、相手チームもいるみたいだし」
『「監視もありますし…ぅゅ…」』
『「私達全員を攫ったのよね。思ったより敵は多いのかも…」』
『「皆さんやけに冴えてますわね…」』
果南「普段使わない分をフル回転してるからね」
花丸「えっと、皆の持ち物はどうなってますか?」
『「携帯に財布、他も色々なくなってるよ」』
画像>6枚 ' border=no /> 花丸「おらは、内ポケットにメモとペンがあったずら。そう言えば、果南さんは何で知ってたの?」
果南「花丸はいつも持ち歩いてたからね、持ってるものだと思って」
『「なら内ポケットには何か入っているかもしれないわね…」』
『「っ!百円玉かぁ…」「ハンカチとティッシュです」』
『「ガムね」「ブレスレットよ」』
『「ヘアゴムとピンですわ」「防犯ブザーがありました」』
果南「絆創膏があったよ。思ったより、使えそうな物が多いね」
何にとは言わないが察したのか、しん、とした空気が流れる。それもそうだ、誰だってこの話題には触れたくないだろう。
『「やはり、戦うしかないのですかね…」』
『「だったらっ!千歌ちゃんが死んでもい――」「曜さんやめてっ!おねぇちゃんだって…」』
『「…まだ殺しあえなんて言われてないじゃない、競技の可能性だって…!」「無いわよ…あの武器で戦うってそういうことでしょ…」』
重苦しい雰囲気。沈黙に耐えかねて誰かが口を開きかけたその時。
??『はーい。あれ、作戦立ててないじゃーん。それどころかなんか険悪だし。真面目にやってよねー。全く、こんなんで大丈夫?あっちはやる気まんまんで練習してるのになあ。』
-----------------------------
海未「ふっ、はっ!たあっ!」ビュビュッ!ビュッ!
真姫「さすが、負けてられないわね。…くっ」パンッ
海未の素振りはやはり習っているだけあって、気迫が凄まじい。もちろん、穂乃果の危機だということもあるだろうが。
なのに自分はどうだろうか…一発撃つだけでもこの様だ。
もっと強く。正確に。
狙いを定める。こんな反動なんかに――
真姫「負けないんだからっ!」パンッ
弾は的、正確には、ダンボールの上端を撃ち抜いた。幸い、弾切れなどは起こらないようだ。
…都合の良い仕様だと思うけど、考えないでおいてあげる。こうでもしなきゃ、戦えないもの。
-----------------------------
ことり「穂乃果ちゃんが…うっ、ぐすっ…」
絵里「ことり…大丈夫よ。穂乃果は生きてる。それにね、」ナデナデ
絵里「戦って、勝てばいいのよ。穂乃果のために。それで穂乃果が戻ってくるなら、見ず知らずの人達なんて――」
絵里「…ことりも落ち着いたら作戦を立てましょう?それまでこれらを使ってみるから」
絵里は自分の武器を手に取り、握る。
以外とぴったりね…不思議だわ。
絵里「ふっ!」
絵里が
力任せに振り下ろすと、重ねたダンボールが大破した。
見た目より結構な威力がありそうね。あ、そっちも試してみましょう。
もう一つの武器を取り出し、撃ってみる。ダンボールは黒焦げと化し、煙が上がった。
わざわざ注意書きしないといけなくなってしまったのか
呆気ない、そんなことを考えてしまう自分とこの状況を変に思えないほど、泣いている仲間を放っておけるほど、実際は落ち着いてはいなかったのだった。
ことり「ねえ。ほのかちゃんって、誰?」
-----------------------------
凛「なんでことになっちゃったんだろう…凛もっ!皆もっ!何も悪くないのに!」
希「うん…皆悪くないよ…でもね、凛ちゃん、だからこそ戦わなくちゃいけないの。ご飯と同じよ。命を、頂きます、って」ギュッ
凛「分かってるよ…分かってる、けど!」グスッ
希「…凛ちゃんが苦しかったら、どこかに隠れてて。できる人だけでやるから」
希「……かわいい後輩を守るのは先輩の役目やん?」ニコッ
凛「希、ちゃん…」
大丈夫。弱い自分なんか、自慢の関西弁と肝っ玉で、隠し通して見せるやん?
-----------------------------
にこ「えらいことになったわね…」
花陽「…穂乃果ちゃんが…」ポロッ
にこ「こっち来なさい」
花陽「うん…」
にこ「いい?そうならないために、私達が戦うから。辛いなら隠れてなさい」ポンポン
花陽「…でもそんなの、花陽だけ待ってるなんて…」ポロポロ
にこ「いいのよ、凛だってきっと今頃、希に抱きついてるわよ」ナデナデ
穂乃果を、皆の笑顔を、楽しかった日常を――私が取り戻してみせる。
-----------------------------
??「うんうん。いいね〜皆、ゾクゾクしちゃう!」
??「ふふ、趣味が悪いのだ〜こんなの知られたら、普通幻滅どころじゃないですよ?」
??「あなたも人のこと言えませんよ?」
??「あ、おっかえり〜!説明おつかれさま。こんなこと出来てるのも、あなたのおかげだけどね」
??「まあお金は貰ってますから」
??「じゃあ、お金があれば何でもしてくれるの?次はどうしよっかな〜?」
??「まだ終わってもないじゃないですか」
??「まあまあ――」
??「あなたは内ポケットの存在忘れてましたよね」
??「うぅ〜…」
-----------------------------
花丸「…やっぱり、覚悟を決めないといけないんですね」
果南「そうみたいだね…」
??『はいはーい、やる気ある練習中の皆さん、ぐだぐだ言ってるみなさん、言っとくけどもうすぐバトル開始だからね?あと、消耗品はないから安心してね〜』
??『あ、サービスでまた繋いであげるね、じゃっ』プツン
『「皆、聞いて!第一に、固まって一人にならないようにしましょう。もしそうなったら逃げて合流を目指しなさい。まずは昼休憩まで、必ず生き延びるのよ」』
『「複数ある持ち物は分けてあげてください。では、ご武運を」』プツン
??『それじゃ、1時間頑張ってね。スタート!』
マップ情報
1階〜3階廊下
上から見ると長方形、東西に長い
それぞれの角に階段がある
玄関
東廊下に面している
下駄箱がある
体育館
1階にあり、とても広い
出入口は南西階段横のみで、直接外には出られない
各教室
机や椅子、教卓などがそのままある
南廊下、北廊下に面している
特別教室(1階 保健室、職員室、2階 休憩室、美術室、被服室、3階 実験室、会議室、図書室)
広め、南廊下、北廊下に面している
アイテムが見つかることもある
美、被、実、会には机が並べられている
保健室には薬や道具がある
職員室にはデスクが沢山あり、通路が狭い
休憩室には自販機、大きなソファがある
図書室には書架がある
屋上
とても広い
出入口は南西階段のみ
校庭
とても広い
南廊下側にある
玄関からしか行けない
裏庭
西廊下外側にある
少し暗い
玄関から校庭を迂回しなければならない
北側には囲いがあり、霧で中も見えなくなっている
WC
戦闘中は入れない
中庭
霧がかかって向こう側が見えない
入れない
\
::::: \ >>1の両腕に冷たい鉄の輪がはめられた
\::::: \
\::::: _ヽ __ _ 外界との連絡を断ち切る契約の印だ。
ヽ/, /_ ヽ/、 ヽ_
// /< __) l -,|__) > 「刑事さん・・・、俺、どうして・・・
|| | < __)_ゝJ_)_> こんなスレ・・・たてちゃったのかな?」
\ ||.| < ___)_(_)_ >
\| | <____ノ_(_)_ ) とめどなく大粒の涙がこぼれ落ち
ヾヽニニ/ー--'/ 震える彼の掌を濡らした。
|_|_t_|_♀__|
9 ∂ 「その答えを見つけるのは、お前自身だ。」
6 ∂
(9_∂ >>1は声をあげて泣いた。 武器
薙刀 海未
拳銃 真姫
レーザーガン ことり
メリケンサック 絵里
狙撃銃 花陽
斧 にこ
ダイナマイト 希
双剣 凛
日本刀 果南
弓矢 花丸
ナイフ 鞠莉
トンファー 善子
鉄扇 ダイヤ
鉈 梨子
クロスボウ ルビィ
グローブ 曜
一人よがりってまさにこんなんやな
読ませる気がない
果南と花丸は校庭にいた。
果南「まずは、鞠莉が言ってたとおり、仲間と合流しよっか」
花丸「うん、人数は多い方がいいよね」
たしか、裏庭は行き止まりだった。もし誰かが攻められてたら逃げ場がないし、先に行ってみよう。
突然、激しい風に見舞われ、砂煙があがる。何者かが近づいてくる気配を感じ、目を凝らすと、たなびく黒髪が見えた。
なんだ、ダイヤか。強ばった体を緩める。
果南「もう、脅かさな――」
いや違う。ダイヤはヘアゴムで髪をまとめているはずだ。
なんか文字化けいっぱいしてるんだけどなに書いてんの
果南「花丸っ、下がって!」
後ろを庇うように構えると、風が止んだ。 意思の強そうな目にたじろぎながらも、彼女は叫ぶ。
果南「あなた、誰なのっ!?」
??「相手に名を聞くときは、先に自分から名乗るのが礼儀だと教わりませんでしたか?…まあ、いいでしょう――
――園田海未と申します。以後お見知り置きを」
-----------------------------
目の前で起きていることは、現実には思えなかった。果南さんと女の子が武器を振り回して戦ってる。
しかも、勘違いじゃなければあの人はμ'sの…マルに、できるのかな。憧れの人達を、なんて。
なんで二人ともあんなに落ち着いてるの?人を、傷つけるんだよ?おらは…怖い。
-----------------------------
海未「やあっ!」
果南「っ!」
襲いかかる刃を避け、受け止め、押し返される。攻勢一方であるはずの海未は、簡単に倒せると思った相手に手間取っていた。
…少々認識を改めないといけませんね。
後ろの方を庇いつつ、私に立ち向かう、その心意気はもちろんの事。
最初は太刀筋、間合い、構え、どれもなっていませんでしたが、良くなってきています。
本来なら、鍛えて成長を楽しみたいところですが。後々のことを考えると、そうも言ってられられないでしょうね。
不本意ではありますが、圧をかけさせてもらいます。
-----------------------------
一層力を入れた振りを受け止め、鎬を削ると、後ろに飛んで距離をとられた。
海未「これが貴女と私との差です。圧倒的不利なこの状況でどうするつもりですか?」
果南「…そうだね、このままじゃ全然勝てそうもないや」
果南「…でもそれなら、有利を作ればいいだけだよ!」
言うと同時に、果南は面食らった相手の懐に飛び込んだ。
いける。攻めてる。
果南「たあっ!」
海未「う…くっ!」
果南「っ!」
しかし、果南が攻められたのは数秒だけで、また防戦に戻ってしまう。
果南「いけるとっ、思ったんだけどっ、なっ!」
海未「経験とっ、鍛錬の差ですっ!」
距離を詰めた分、避けることは困難になる。が、薙刀の勢いは弱まって見えた。
持久戦ならいけるかもしれない。耐えてみせる…!
-----------------------------
彼女らを校舎の陰から見つめる者がいた。
??「助けに行った方がいいかしらね…」
彼女は足音を忍ばせ、近づいていった。
-----------------------------
開始の合図がなった頃、2階南側にある教室に希と凛がいた。
希「それじゃ、凛ちゃん。ウチは少し様子見てくるから、隠れといてな」
凛「…ごめんね。希ちゃん」
希「気にすることないんよ」
そう言って希が出ていくのを確認すると、凛はそっと部屋を出て南東階段を上っていく。
ごめん希ちゃん、嘘ついちゃって。いつも通りにして隠してたけど、少し震えてたから。凛だけじゃない。希ちゃんだって怖いんだ。
階段を上がるとすぐの会議室に入り、誰もいないのを確認。作戦を思い出す。
『「私達は練習してた。けど多分あっちは状況を受け入れられなかったんでしょうね」
「海未もいるし、こっちの方が有利。基本はバラけて、勝てそうなら叩く、負けそうなら逃げる、手が空いてたら助ける、ね」
「音も響くはずだし、人数も多いから合流しやすいでしょ?」
「…今日の真姫はやる気ですね」
「当然。絶対勝って、皆で帰るんだから」』
うん、大丈夫。頑張ろう、私。
-----------------------------
希は同じ南廊下にある美術室に向かっていた。
さっき聞こえた声って…もしかして。
そっと窓から覗くと、やはり、髪色が特徴的な彼女達が何やら話していた。
気がつくと、震えは止まっていた。いつもと同じ彼女を見て、少し安心したのかもしれない。
希は、ありがとう、と心の中で呟いた。
…私も、凛ちゃんを安心させてあげないと。
-----------------------------
希「あれ、凛ちゃん、上手く隠れたなあ。出てきてくれん?」
しん、と静まり返った教室。応じる声はない。
希「凛ちゃん?返事して?」
またもや返事はない。
嫌な想像が浮かんでくる。相手に見つかった?追いかけられてる?それとも既に…?
そんな思考を追い出すかのように、希は頭を振る。
いやいや、冷静に。こんな短時間で大きな音もせず、というのは無理があるし、走る音もしなかったはず。…だったら何で…?
駄目だ。このまま考えてるより、探した方がいい。それに、別の場所に隠れた可能性もある。
希は南東階段をかけ降りていった。
-----------------------------
海未と別れた真姫は、玄関の前の大きな木に体を預けていた。
…どうしようかしら。海未は校庭に行ったし、私は中に入るのがいいんだろうけど。
真姫は先程から何度も、立ち上がって数秒して俯いては座る、を繰り返している。
何してるのよ、私。早く行かなきゃ。
それでも、彼女の足は進まない。
いざとなると怖いんじゃない。あんな事、言わなきゃ良かった。
……駄目ね。後悔してても始まらない。もっとポジティブに考えるのよ。
こんな時、にこちゃんがいたらなんて言うかしらね。しょうがないわねー、とか?
真姫「……ふふ」
悩むより、焦るより、のんびりと、か。ほんといい歌よね。
また練習でもして待ってましょ。
-----------------------------
……はあ、やっぱりまだ扱い慣れないわね。慣れたくもないけど。
ん?誰か走ってきた…
希「真姫ちゃんっ!凛ちゃん来なかった?」
真姫「え、凛?見てないわ」
希「そっか、ありがとうっ」
そう言うと希は足早に校舎へ戻っていった。
……何だか分からないけどついて行った方が良かったわね。追いつけるかしら。
-----------------------------
希が去った後、美術室では絵里とことりがいた。
さて、どうしたものかしら…?今のことりのことを考えると、別行動は得策とは思えないわね。でも、庇いながらは厳しいし――
絵里「っ!ことり、誰か来るわ。後ろに」ボソボソ
ことり「うん…」コソッ
二人はドアの陰に隠れ、息を潜める。
絵里は視界に入ってきた人物を確認すると、思い切り殴りかかった。
-----------------------------
二人分の声が体育館に響く。
曜「ごめん、ルビィちゃん。どこか――えっと、職員室とかに隠れててくれないかな?」
ルビィ「え?でも鞠莉さんが固まってって」
曜「…うん、言ってた。でも私、ルビィちゃんを守りきれるか分からないし、巻き込んじゃうといけないからさ…」
曜「本当に、ごめん…」
ルビィ「いえ…」ニコッ
やっぱり曜さん、千歌ちゃんの方が――ううん、当たり前だよね。 曜さんの邪魔になっちゃうもん。
二人は職員室に入る。
曜「……ふぅ、ここは誰もいないみたいだね」
ルビィ「どこに隠れよう…」
曜「ねえ、この中なんかいいんじゃないかな」
ルビィ「引き出しの中は無理ですよぉ…」
曜「違うって。ほら」
デスクの下、縦に並んだ三つの引き出しは中が繋がっていた。そこは、隠れるのにうってつけの場所に思われた。
ルビィ「ここならきっと見つからない…」
曜「だよね。お、ちゃんと入ったね」
ルビィ「…曜さん。行ってらっしゃい」ニコッ
曜「うん、行ってきます」
本当は、行ってほしくなんかないし、そばにいて欲しい。でもルビィも、大事な人を送り出して待ってられるように強くなりたいんだ。おねぇちゃんみたいに。
-----------------------------
ああ。私、慕ってくれる後輩一人も守れないんだ。あんな事言って、邪魔だって言ってるようなもんだよ。
でも……集中しないと。その分頑張らないとね。
そんなことを考えながらいつの間にか、曜は2階の西廊下に来ていた。
角を曲がり、南廊下を渡る。そこまで警戒していなかった曜がそれを避けられたのは、勘であった。
曜「っ!」
目の前を通った拳を後ろに飛んで避けると、金髪の女の子が姿を現した。
拳を構え、相手を見据える。動いたのは、ほぼ同時。
絵里「ふっ!」
迫る拳を避け、曜は絵里の腕を掴む。
このまま…投げる!
ダンッ!
曜「…っ! 」
しかし曜は逆に投げ返されてしまう。
すぐさま迫る拳を転がって避け、蹴ると、すんでのところで躱された。
絵里「…」
曜「はっ…はあっ…」
同い年くらいの女の子に互角以上。けっこう自信あったんだけどな。やっぱり、庇いながらは無理だ。
-----------------------------
こんなかわいい女の子を殴るなんて。だからといって手加減なんて出来ないけれど。
あの子、思ったより強い。もし教室に入られたら?私はことりを守れるの?
………ごめんなさい、ことり。すぐに戻るから。
絵里「場所を移さない?ここだと私達には狭くないかしら…?」
曜「…いいよ」
絵里「着いてきて」
二人は被服室へと向かった。
-----------------------------
どうしよう。絵里ちゃんどこかに行っちゃったし、ここにいるべきかな…?
ことりはふと窓の外を見る。すると、見知った人がいた。
絶対、海未ちゃんだ。それから3人。顔はあんまり見えないけど、きっと戦ってるんだろうな。私と違って。
自分の頬を両手で叩く。
だめだめ。しっかりしなきゃ。
-----------------------------
さっきの通信、背景がちらっと見えたのよね。近い方にしましょう、行き止まりだし…
え?これ、何… ?
鞠莉「…」
善子「……鞠莉さん」
鞠莉「…行きましょう」
-----------------------------
屋上のドアが開く。
鞠莉「ダイヤ、梨子」ガチャ
ダイヤ「鞠莉さんに善子さんっ。貴女方でしたか…焦りました」
鞠莉「ごめんなさいね。って梨子は?」
ダイヤ「そちらですわ」
善子「リリー!」ギュッ
梨子「よっちゃん!?よしよし、鞠莉さんが呼んでるから」
鞠莉「…提案なんだけど、挟み撃ちってどう?私達が引きつけて、二人が後ろから合流するの」
梨子「それなら、最初から四人でいた方が――」
善子「不意打ちに意味があるのよ。だから、お願い」
梨子「…」
ダイヤ「同意しかねます」
鞠莉「っ…何故?」
ダイヤ「鞠莉さん、善子さん。貴女方を囮などに使いたくないのです、それなら私が致します」
鞠莉「……すぐにget tiredな硬度10にそれは無理ね〜」
ダイヤ「…ならやはり四人の方が――」
鞠莉「とにかく!お願い、ね。バイバイ」
善子「…じゃあね」
ガチャ
………これでいいのよ。
カチャリ
-----------------------------
ありがとう鞠莉さん、協力してくれて。おかげで上手くいったわ。
善子「とりあえず会議室に戻りません?」
鞠莉「そうね」
会議室に入ると、二人は先客と目があってしまった。
??「っ!」
善子「っ…!」
鞠莉「え?……っ!」
2対1。有利なはず。
ダン!
鞠莉「今の音!下で戦ってる!?」
善子「助けに行ってあげて!」
鞠莉「それだと善子が!」
善子は横目で鞠莉を見つつ、じりじりと近寄ってくる相手に目を向ける。
善子「あっちは二人相手かもしれないでしょ!早く!」
鞠莉「…っすぐ戻るから!」
鞠莉は南西階段を降りていった。
-----------------------------
わざとらしくはぐらかして、そそくさと…いつもの事ながら、貴女が何を考えているのか分かりません。
梨子「あの…ダイヤさん…?」
ダイヤ「すみません、少しぼうっとしてしまいましたわ」サラサラ
梨子「くすぐったい…」
ダイヤ「動かないで下さい。はい、出来ましたよ」キュッ
ポニテ梨子「ありがとうございます。じゃあダイヤさんは私が」
たまにはしてもらうのも良いものですね。確かに少しくすぐったいですが。
梨子「できました。」キュッ
ポニテダイヤ「ありがとうございました。これで動きやすいでしょう…それと、武器の扱いに慣れておかなければ」
-----------------------------
にこ「落ちついた?」
花陽「うん、もう大丈夫だよ」
にこ「ここは裏庭だから行き止まりだし、少し様子見てくるわ」
にこ「花陽は隠れてて、時間が経って大丈夫そうなら出てくればいいから」
にこ「こんな時ぐらい先輩に頼りなさいよ」
花陽「……ありがとう、にこちゃん」
やっぱりかっこいいなあ、にこちゃんは。でもね、μ'sは先輩禁止なんですよ? 花陽だって、皆を守りたい。
武器は狙撃銃。遠距離戦で当たらないといけない。せめて使えるようにしておかないと。
花陽は銃を構え、スコープを覗く。
パシュッ
弾は空を切った。
…惜しい。でも、思ったよりは当たりそうかな。
-----------------------------
??「職員室の引き出し細工したでしょ?」
??「バレちゃいました?えへへ」
??「Aqoursを贔屓するのはいいけど、これからは平等にお願いしますね?」
??「……は〜い。そういえば、お礼言ってなかったなあ。ありがとう、私達が出会えたのはあなたのおかげです!」
??「急に改まってなんですか…別にいいですよ、こっちも儲か――ゴホン」
??「…もしかして照れてるんですか?いい年して?かわいい〜」バシバシ
??「違いますからっ、ちょっ、やめてくだ――あっ」
カシャン
??「ほら、落ちたじゃないですか…」スチャ
??「ごめんごめん」
??「もう、今いい所なのに…二人とも静かにしててよ〜」 プンスカ
-----------------------------
海未の後方から声がかかる。
??「苦戦してるわね」
海未「…っ!…にこ、でしたか…」ホッ
やっぱり、気づいてなかったみたいね。
にこ「気をつけなさい。いくらあんたでも、私が敵だったら危なかったのよ?」キッ
海未「すみません…」
にこ「…ま、とりあえずは目の前の敵ね。あんたほどじゃないけど、私が入れば少しはマシになるでしょ」
海未「……別々で戦いませんか?あと、体格的に私が剣の方、にこが弓の方がいいと思うのですが」
にこ「じゃあ、そうしましょ。まずは距離を詰めなきゃ…ねっ!」
にこは声と同時に地面を蹴る。ついてくる足音を聞きつつ、自分目掛けて走ってくる相手に斧を振るう。
そして予想通りに避けられると、彼女はもう一人へと走る。
任せるわよ、海未。
果南「行かせな――」
海未「貴女の相手は私です」ザッ
大人しくしてなさいよ。
すぐに終わらせてあげるから。
にこは、動けないでいる花丸目掛けて斧を振り下ろした。
-----------------------------
まずい状況になった。
足止めをくらっている場合ではないのに。
海未「ふっ!はあっ!」ビュッ
果南「いっ…!」ピッ
切っ先が果南の頬を掠める。
海未「さっきまでの勢いはどうしたのです!?集中しなければすぐに終わってしまいますよ!?」
集中?…出来るわけない。
分断されてから一度も後ろを確認できていない。この人のせいで。
だいぶ離れたのか、音も聞こえない。
花丸はどうなってるの?早く助けにいきたいのに。
海未の攻撃は更に速度を増す。
果南についた切り傷がズキズキと痛みを増す。
足止めや時間稼ぎなんかじゃない。
この人は本気でとりにきてる。 迂闊に背中を見せれば、やられる。
果南「…」スッ
海未「っ!…ようやくですか」
先にこの人をどうにかするしかない。
それまで無事でいて、花丸。
-----------------------------
花丸の本能的な回避により、にこの一撃は空を切った。
その間に花丸は走り出す。
にこ「待ちなさい!はあっ!」ブンッ
花丸「っ!」タタッ
にこ「このっ…避けるんじゃないわよっ!」ザクッ
花丸「はあっ…はあっ…」
花丸は、斧が地面に刺さった隙に走る。
どうしよう。果南さんとだんだん離れてく。きっと逃げ続けることは出来ない。
戦う?おらだけで?
もう、目の前に頼もしい背中はない。
誰か、助けて。
急に服を掴まれ、花丸はつんのめり転んだ。
振り返ると目が合った。
助けなんて来ない、とでも言いたげな眼差しと。
ああ、もう駄目だ。
花丸は目をぎゅっと閉じた。
皆、今までありがとう。
千歌さん、ごめんなさい。
じーちゃん、マルは親不幸者です。
あれ、痛くない…?
戸惑いながら目を開けると、花丸は先程と変わらない視線を浴びていた。
にこ「……ねえあんた、やる気ある?」
花丸「え?」
にこ「戦う気はあるのかって聞いてんのよ。ずっと逃げ回って、追いつかれてもろくに反撃もしない。潔いって言ったら聞こえはいいけど。」
花丸「…」
さっきから文字化けしてる部分はなんなんだ
伏線かなにか?
にこ「少し前から見てたけど、ずっとあの子の後ろにいたわよね。あの子は守りながら戦ってるの、必死で。…あんたはそれでいいの?」
にこ「…ほら、射ってみなさいよ。どこでも狙えるわよ、ほら」
花丸「……っ」ギギギ
花丸「……」ギッ
花丸「……っ…」ガシャン コロコロ
にこ「……出来ないのね。やっぱりあんたは、後ろで守られてるだけ。それが嫌ならせいぜい隠れるなりしてなさいよ」クルッ
足音が遠のいていく。その行く先が分かっていても、花丸は動くことができなかった。
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>>80
そう言えば誰かも言ってたな。伏線も何も無いよ。あれ、まともに読めるの自分だけだったりする? >>79
たとえばあれ痛くない?の後とか、花丸の前とか、括弧の後とか読めない >>87
三点リーダとか半角の擬音とかも?
>>88
改行の文字化けかも。痛くない…?の後は空白だし 変換出来るのは読む側しかなさげなので、とりあえずこのままで。おやすみなさい
何であんなこと言ったのかしらね。
そのまま楽に倒せたはずなのに。
なんだかんだ言って、私も怖かったってこと?それとも――
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果南「はあっ!」ブンッ
海未「おっと」スッ
やっと攻めてきたと思えば、動きが単純になっています。恐怖、いや焦りでしょうか。
果南「はっ!」ブンッ
海未「…」スッ
果南「ふっ!」ヒュッ
海未「…」サッ
何なのでしょう、この気持ちは。
まるで鉄の塊にでもなったような。
海未「――らない」ボソッ
果南「え?」
海未「もういいです。どうぞ逃げて下さい。追いませんから」
果南「……」
背を向けこちらを一瞥した彼女は、仲間の元へと走った。
ふと気づけば、巻き込まれたらしい歪な形の花びらが、髪に張り付いていた。
その鮮やかなオレンジが海未の目を見開かせる。
……何故私はあんなことを?
《鍛えて成長を楽しみたいところです》
ドクン
《別々で戦いませんか?あと、体格的に私が剣の方、にこが弓の方がいいと思うのですが》
《集中しなければすぐに終わってしまいますよ!?》
ドクン
《どうぞ逃げて下さい。追いませんから》
《つまらない》
ドクン
穂乃果を取り戻すのではなかったのですか!?
もう、自分が何をしたいのか分かりません。
海未は薙刀を放り、地に倒れ込んだ。
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机が散らかった被服室。対峙する二人がいた。
両者とも疲労しているものの、ほぼ無傷である。
曜「…はっ…はあ…」
絵里「……は…っ…」
柔道の授業、真面目に受けておいて良かったわ。案外役に立つものね。
……にしても、こんなに削ったのにまだ動けるのね。海未や凛といい勝負じゃない。
これほど強いのなら、多分向こうの主力のはず。潰せるうちに潰しておきたいわね。
拳を構えた曜が駆け出す。
曜「はあっ!」ブンッ
大振りね。避けるのは容易いわ。
曜「っ!」ブンッ
曜「やあっ!」ブンッ
もったいない。体力もあるし、運動神経も良いのに、動きが大きいのよ。だから早く消耗する。そのことに気づけなかったのが貴女の敗因よ。
絵里「ふっ!」ヒュッ
曜「っ…あっ!」ササッ
隙あり。
絵里「はっ!」ドゴッ
曜「うっ…」フラッ
今のは深かった。ごめんなさい、よく頑張ったわね。
絵里は曜を壁際に押さえつけ、空いている手で殴った。
絵里「………」ヒュッ
一層大きく振りかぶった拳が曜の身体に下ろされようとした、その時。
??「離れなさいっ!」ヒュン
横から銀色の物体が飛んでくる。絵里はバックステップでそれを躱すと、乱入者の方をみた。
??「ナイフ投げ…昔やってたのよね」
曜「まり、さ――」
絵里が彼女を睨みつける。
鞠莉「…私、数分待って戻って来なかったら助けに来るよう仲間に言ってあるの」
鞠莉「アナタも負傷してる、三人相手は難しいんじゃないかしら。それでもいいなら戦いましょ?」
絵里「……止めておくわ。貴女の言ってることが、嘘だとしても」クルッスタスタ
鞠莉「…」
熱を帯びた拳。痺れるような痛み。理性を侵食する、不思議な高揚感。
今はまだ、余韻に浸っていたい。
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鞠莉「バレてたけどとりあえず良かった。曜、怪我は!?動ける?」
曜「……多分休めば大丈夫だと思うよ、それより――」
鞠莉「善子のことね、私に助けに行けって言って、戦ってる」
曜「じゃあ早く戻って!善子ちゃんがっ!」
鞠莉「落ち着いて!今曜を一人にするわけにはいかないから、動けるようになったら言って。それに私も聞きたいことがあるの」
鞠莉「…ルビィはどうしたの?」
曜「最初に、巻き込まれないように隠れてもらったよ。絶対見つからない所に」
鞠莉「そう…」
襲われたら戦えない。善子も十分強いけど、戦力的に曜を失うのは大きいもの。
曜「…鞠莉さん?」
鞠莉「ああ、ごめんなさい。アイツ何か言ってなかった?」
曜「何も。いきなり殴りかかってきて、ずっと戦ってたよ」
鞠莉「…好戦的、というのかな。危険ね、あんなのが他に何人もいたら…」ゾワッ
曜「やっぱり、善子ちゃんの所に行って」
鞠莉「……なら、アナタもついて来て。負担がかかるだろうけど」
曜「そのくらい平気だよ!行こう、早く!」グイッ
そう言って、曜は鞠莉の手を引き走り出す。
なんで怪我してる曜が引っ張ってるの、もう少し自分の身体を大事にしてよ。
それに比べ、損得で考えてた私は――
――なんて冷たいんだろう。
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ガラガラッ
希「凛ちゃん、いる!?」
職員室はしん、と静まり返っていた。
うーん。
さっき降りてきたとき、向こう側の廊下も静かだったし…
希「…上だったのかな」タッタッタ
3階…ううん、その前にえりち達に聞いてみようかな。
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な、なんで希ちゃんがいるの…!?
もしかして戦わなきゃいけないのって、μ'sなの…?
ルビィ「そんなの…」ボソッ
μ'sとAqoursのみんな。憧れの存在と大切な仲間。選びたくないよ…
ルビィ「やだ…っ」ググッ
ルビィ「やだよぉ…」ギリギリ
あ…強く握りすぎたのかな、血が出ちゃった。とりあえずティッシュで――
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真姫「見失ったわ…」キョロ
手前側に保健室、向こう側には職員室がある。希を見失った今、真姫の目的は敵との遭遇ではなく、アイテム探しであった。
真姫「…こっちにしましょ」
ガラガラ
良かったわ。誰もいないみたい。
真姫「救急箱は、と…これね」ガサゴソ
絆創膏に消毒液、ガーゼ、綿棒などのお馴染みのセットの中に、見慣れぬ瓶があった。
真姫はそれを取り出してラベルを見る。
真姫「何よこれ、痺れ薬…?」
ガラッ
突然開いたドアに驚いた真姫は、咄嗟に手にあった瓶をポケットにしまった。
??「やっぱり、μ'sなんだ…」ボソッ
彼女は目が合った途端、入り口で止まっていた。真姫は彼女にゆっくりと近づいていった。
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うーん。たぶん、絵里ちゃんが戻ってくるまでここにいた方がいいよね?
ことり「大丈夫かなぁ…?それとも、探しに行った方がいいのかも…?」
あれ、こんなところにタロットカード…希ちゃんの?
ことり「痛いっ…ちょっと指切れちゃった…」プツッ
希ちゃんのはこんな刃物みたいなのじゃないと思うし、アイテムってことかな?
ことり「うーん…」
とりあえず、貰っておこうかな。
絵里「ことりっ」
ことり「絵里ちゃんっ。大丈夫…って、希ちゃんも一緒だったの?」クルッ
希「ううん。ウチはさっき会ったばっかり。ことりちゃんは、凛ちゃん見てない?」
ことり「ううん。見てないよ」
希「そっか…」
絵里「ねえ、希は凛を探してるのよね?その時丁度トイレに行ってたんじゃないかしら?」
希「えりち…トイレは行けないって説明に――」
絵里「え?ごめんなさい。そういえばそうだったわね…」
ことり「もしかして、休憩室じゃないかな…?」
希「そういえば、そこは見てなかったなぁ…」
絵里「なら、行ってみましょう」
ことり「ちょっと待って。これ、希ちゃんのじゃないよね?」
希「んー、ウチのとちゃうよ。どうしたん?」
ことり「さっき落ちてたのを見つけて…その後二人が来たの」
ことり「見た目はタロットだけど刃物みたいになってて、希ちゃんのためのアイテムじゃないかなって」
希「でも、ことりちゃんが拾ったものやし…」
絵里「希、武器は何なの?」
希「ダイナマイト」
ことり「接近戦だと、使えないよね?やっぱり希ちゃんに持っててほしいな」
希「…なら、貰っておくね。ありがとう」
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会議室に踊る、二人の影。
善子「…はっ、はっ…」
善子は、衰えない凛のスピードに焦り始めていた。
凛「とあっ!」ブンッ
善子「っ!」キンッ
善子「はぁっ…っ」ザッ
凛から距離をとって呼吸を整える。額から滴る汗が、疲労を物語っていた。
かっこいいからってゲームの装備にしてて助かった…意外と使えてる、かも。というか、そろそろ逃げないと体力が…
善子「…はあっ、はあっ…」
凛「…はっ、はっ………ねえ」ジッ
凛「…それでも本気なの?」タッ
凛は言うやいなや、善子に飛びかかる。
善子「何…よ…」ピクッ
凛「覚悟が足りないって言ってるのっ!」ヒュッ
善子「っ…言わせておけば!」ヒュン
ガキンッ
金属特有の甲高い音が響く。善子はその勢いを殺さぬよう手首を返し、凛の腕を打った。
凛「いっ…!」ポロ
当たった!手が痺れてる今なら、きっと…!
善子「と、りゃっ!」ヒュンッ
凛「っ!」ガッ
凛がふらついた隙を狙い、善子は腕を振る。バランスを崩した凛を横目に、善子はその勢いのまま走り出した。
凛「待っ――」タッ
いけるかと思ったのに。追いつかれ――
??「善子ちゃん!!」
廊下に出た前方にその人はいた。
善子「っ!」ダッ
善子「曜さん!」
曜「大丈夫!?頑張ったんだね…」ギュ
鞠莉「後は任せて、と言いたいところだけど…逃げるよ」ボソッ
善子「え」
曜「行くよっ!」グイッ
善子「わっ!」ダッ
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凛「…」
さっきはあれほど嫌がっていたはずなのに、今は躊躇うことなく剣を振るう自分がいた。
おかしいのはこの状況。
適応させてるのは防衛本能。
生きて帰る為、皆を守る為に、やむを得ないこと。
そんなことは分かっている。なのに。
震えが、止まらない。
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ガキンッ
梨子「今の音って!」
ダイヤ「参りますわよ!って…」ガッ
ガチャガチャガチャ
ダイヤ「何故鍵がかかってますの!?」
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え?これ何… ?
鞠莉は床に落ちている何かを拾い上げた。
鞠莉「アイテム説明…?」
ポチッ
??『これを見つけた君!はっ――じゃなくて、楽しんでる〜?これは繰り返しドアに取り付けて、鍵をかけることができるアイテム!』
??『使う対象や場所はおまかせするよ、でも一定の時間を過ぎると開いちゃうからね。あと、それまではかけた人しか開けることができないよ。じゃっ!』プツッ
鞠莉「…」
善子「……鞠莉さん」
鞠莉「…行きましょう」
善子「…」テクテク
鞠莉「…」テクテク
廊下を歩きながら、何か言いたげな二人。先に沈黙を破ったのは善子だった。
善子「ねえ鞠莉さん。あの鍵、使わない?」
鞠莉「丁度そう言おうと思ってたの。でも、実戦で使う前に試しておきたいわよね」
善子「リリー達がいる屋上は、ドアが一つだけだからおあつらえ向きね。時間もどのくらいか知っておきたいし…」
鞠莉「……もしかして、二人を足止めしたいの?」
善子「そ、そんなことあるわけないじゃない…」
鞠莉「まあ善子が梨子のこと大好きなのは置いといて、ダイヤも体力ない方だから」
善子「じゃあ、協力してくれます?」
鞠莉「もちろん。二人には適当なこと言って、私達だけ出てくればいいのね」
ガチャ
鞠莉「ダイヤ、梨子」
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ダイヤ「きっとあの二人ですわっ…何考えてますの!」
梨子「お、落ち着いて」
ダイヤ「はーっ…まったく…」
梨子「そうだとしても、二人とも何か考えがあってのことだろうし…」
ダイヤ「どうせ私達のことを舐めて、守っているつもりなのでしょう」
梨子「そんなの、自分達の負担が重くなるのに…」
ダイヤ「…戻ってきたらただでは済ましません」
梨子「このまま、ここに居ることしか出来ないのかな…?」
ダイヤ「流石に、飛び降りる訳には行きませんもの…はあ…」
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??「ねえねえ、そういえばさあ、あの花植えたのって誰なの?」
??「私です、それぞれのリーダーの色なので丁度いいかなと思って」
??「オレンジ色だもんね!」
??「えっ、みかん色だよ!」
??「ほぼ同じ。どっちでもい――」
「「良くない!」」
??「ええ…」
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