善子「(沼津から東京への交通費…水筒、お弁当…キャリーケース…)」
善子「…よしっ」
善子「今までお世話になりました。行ってきます、ママ」
バタン
善子「今日は風が強いわね…」
スタスタスタ……
ピロリン♪
善子「ん?」
ルビィ『東京に行っても頑張ってね!』
花丸『応援してるずら〜』
善子「……ふふっ」
善子「あ、り、が、と…っと」
スタスタスタ…
〜沼津駅〜
善子「(ここで切符を買うのよね)」
ピッピッピッ
善子「(えっと…改札を通って…)」
〜2年前〜
梨子「善子ちゃんを見てるとね、いいなぁっていつも思うの」
善子「ヨハネ!…なによ、急に」
梨子「ほら、ヨハネちゃんって黒魔術とか、堕天使とか、そういうのが好きでしょ?」
善子「えぇっ?!まぁ、そうだけど…///」
梨子「私は…まだ信じられないの、自分のことが」
善子「…どういうこと?」
梨子「自信を持って言えないの、その…ピアノが好きだって」
善子「…ピアノコンクール優勝したから、もうすっかりその気になってたかと思ってたわ。千歌と曜のおかげで」
梨子「あぁっ、うん、でも音ノ木坂から転校してAqoursに入る前よりはずっと好きになれたと思うよ」
梨子「…でも、まだ本当にピアノが好きだった、小さい頃の私には戻れてない」
善子「…ふぅん」ジーッ
梨子「あ…な、なんかごめんね!先輩なのに弱音吐いちゃって…かっこ悪いよね」アセアセ
善子「いいわよ別に。私とリリーの仲じゃない」
梨子「善子ちゃん…」
善子「それに、不安になる必要なんてないわ」
梨子「え…?」
善子「少なくとも私は、梨子の曲好きよ」ニコッ
梨子「っ…!///」ドキッ
善子「みんなもそう思ってるわよ。きっと」
梨子「う、うん…!」
善子「それに、もし梨子の曲が良くなかったらAqoursはここまで来れなかったと思う」
梨子「ありがとう、善子ちゃん…」
善子「っ、上級リトルデーモンが困ってたらこれくらいのことはするわよ、別に///」テレテレ
梨子「優しいね、堕天使さんは」ニコッ
善子「や、優しいなんて言葉、堕天使には似合わないわよ!///」プイッ
梨子「えー?」クスクス
善子「うぅ…///」
梨子「…あのね、善子ちゃん」
善子「こ、今度はなによ!///」
梨子「私、善子ちゃんのことが好き」
善子「えぇぇっ?!///」カァァッ
梨子「優しいところも、堕天使なところも、すぐ調子に乗るところも、全部…」
善子「なっ…!///」
梨子「善子ちゃん、顔真っ赤」フフッ
善子「だ、だって!そ、そんな……」
善子「(リリーが私に告白…?!嘘でしょ…?!)」
善子「(好きな人と、両想いだったなんて…)」
善子「わ、私も!リリーのこと、うぅっ…///」
梨子「なぁに?」フフッ
善子「(なんでそんなに余裕そうなのよ…!)」
梨子「ね、言って?」ボソッ
善子「っ、リリーのことが、好き、です……///」
善子「(あぁぁどうしよう…まともに顔が見れないじゃない…!)」
梨子「うん、ありがとう…」
〜1年前〜
善子「っ、っ、り、りりぃ……」グズッ
梨子「うんっ……」グスグス
善子「そつぎょう、おめ、で…と…」グズグス
梨子「うん、ありがとう…」グスッ
善子「りりぃは、わたしの、いちばん、たいせつ、な、りとる、でーもんでっ…」
梨子「善子ちゃんっ……!」
ギュウッ
善子「うぅっ、う…うぁぁぁんっっ!!!」
梨子「また、絶対、会えるから…ううん、会おう?ねっ?」
善子「うんっ、うんっ……」ズビズビ
梨子「でも、やっぱり、善子ちゃんと離れちゃうのは、悲しい、かな……」グスッ
善子「私だって悲しいわよ…!」ズズッ
梨子「元気でね、善子ちゃん」
善子「リリーも、東京で元気でいなさいよ…!」
善子「あ、あのね、リリー…っ、さ、最後に…したいことがあって」
梨子「うん…?」
善子「私、リリーとっ…梨子と、き、キス、がしたい、です…!///」
梨子「え…?」
善子「思い返してみれば、ほら…したことなかったじゃない?」
梨子「……」
ブロロロ…
千歌「りーこーちゃーん!バス来たよー!」
梨子「あ、はーい!……それじゃあ善子ちゃん、またね。花丸ちゃんとルビィちゃんと仲良くするのよ?」
善子「っ、え?あ、えぇ……」
タッタッタッ……
ブロロロ……
善子「…………」
善子「(あれ…?なんで…?どうして…?)」
善子「リリー………」
〜電車〜
善子「(よく考えてみたら、付き合おうだなんてどちらも言ってなかったのよ…)」
善子「(梨子が言ってた"好き"って、私のとは違ったみたい…)」
善子「(だったら、どうしてあんな思わせぶりなことばっかり…!)」
善子「梨子のばか……」ボソッ
善子「(全部話してもらうんだから…)」
善子「(たとえ、どんなに私が傷ついても…)」
|c||^.- ^|| あくあくAqoursですわ
〜東京〜
ピロリン♪
梨子「…え…善子ちゃん…?」
善子『話したいことがあるの』
善子『今どこ?』
善子『東京でしょ?』
梨子「…まさか、沼津から来てるの…?!」
プルルルル…
プルルルル…
プルルルル…
梨子「……」
ピッ
梨子「あの堕天使…どこにいるの…?!人にメール送っておきながら電話に出ないなんて…!」
梨子「まったく……」ハァ…
梨子『東京駅の中のカフェで待ってる』
梨子「(善子ちゃん、急に東京に来るなんて…)」
梨子「(もしかして、あの日のこと何か思ってるのかな…)」
梨子「なんて言えば……」ポツリ
〜数時間後〜
梨子「(善子ちゃん遅いわね…)」
梨子「(もう一回電話をーーー)」
善子「梨子っ!!!」ハァッハァッ
梨子「善子ちゃん…!」ガタッ
善子「久しぶりね」
梨子「もう、なんで電話出なかったの…?!心配したじゃない…!」
善子「ごめんなさい。あの後スマホの充電無くなっちゃって…」
梨子「それにしても、どうして東京に…?」
善子「…話したいこと、色々あるの」
梨子「っ…!」ドクンッ
善子「とりあえず、コーヒー頼んでもいいかしら?」
〜数分後〜
梨子「それで…どうして東京に?」
善子「見たらわかるでしょ。これよ、これ」
梨子「キャリーケース…?…えっ、善子ちゃんまさか…」
善子「東京の大学に合格したのよ」
梨子「そうだったんだ…おめでとう、すごいじゃない!」
善子「ママみたいにね、学校の先生になりたいの」
梨子「あ…確かに善子ちゃんのお母さん、学校の先生だったわよね」
善子「うん、そう。まだ細かいことは何も決めてないんだけどね」
梨子「花丸ちゃんとルビィちゃんは?」
善子「ずら丸は沼津の本屋で働きながら小説家を目指してて、ルビィは沼津のご当地アイドルのリーダーになったって」
梨子「そうだったんだ…二人ともすごいわね…」
善子「なんか、私だけ普通すぎてつまらないわね」
梨子「そんなことないよ。学校の先生だって立派な職業よ?」
善子「んー。そうかしら?ありがと。梨子の方は?上手くいってるの?」
梨子「そうね、どちらかと言えば…うん」
善子「テレビで見たわ。『天才ピアニスト桜内梨子』って」
梨子「えぇっ?!あの番組、沼津でも放送されてたなんて…」
善子「プロデビューもそう遠くないみたいね」
梨子「そんなことないよ。私なんてまだまだで…」
善子「また生で聞いてみたいわ。梨子のピアノ」
梨子「善子ちゃんにはよく聞いてもらってたなぁ…音楽室で、二人きりで」
善子「(ふ、二人きりってわざわざ言わなくてもいいじゃない…!)///」ドキドキ
梨子「…善子ちゃん?」
善子「い、いいえ。なんでもないわ」
梨子「……」クスッ
善子「な、なによっ、人の顔ジロジロ見て…!///」カァァッ
梨子「…やめちゃったの?」
善子「な、なにを…?」
梨子「あのお団子」
善子「掘り起こさないで!あんな黒歴史!」
梨子「えぇ?!く、黒歴史?!黒歴史になってたの?!」
善子「ならないはずないじゃないあんなのぉ…///」
梨子「堕天使ヨハネちゃーん♡」ケラケラ
善子「も、もうっ!!本気で怒るわよ?!」
梨子「ふふっ。ごめんね?」
善子「まぁ…一カ月前まではやってたわよ、スクールアイドル堕天使ヨハネ」
梨子「そうなの?」
善子「言い方悪いけど、アレが私の売りだったしね。途中で辞めたら支障が出るかもだし」
梨子「いつからそんな風に思ってたの?」
善子「言ったでしょ。梨子に。堕天使なんかいないってこと知ってるって」
梨子「そんな前から…」
善子「でも後悔はしていないわ。あの時の私がいたからAqoursに出会えて、いい経験をさせてもらったし」
梨子「結果的には良かった、ってこと?」
善子「…そうね」ニコッ
梨子「うん…私も、ピアノに触れなかった時期があったからこそこうやって…」
善子「ん?」
梨子「……善子ちゃんと出会えた」
善子「……梨子」
梨子「うん」
善子「本当は、どう思ってたの?」
梨子「なにが?」
善子「私のこと」
梨子「………」
善子「どんな目で見てた?」
梨子「同じこと考えてたみたいね」
善子「…は?」
梨子「……似てるのかな、私達」ボソッ
善子「…えっ?」
梨子「そうやっていつまでも昔のこと引きずってるの」
善子「っ…!」ズキンッ
梨子「仲良くなれたのは…秋頃だったよね。善子ちゃんが拾った犬…懐かしい…」
善子「質問に答えなさいよっ…」
梨子「善子ちゃん家でお泊り会もしたよね。私が持ってきたケーキ、美味しかった?」
善子「ねぇっ…」
梨子「あとは何があったかなぁ…」
善子「っ…!」プルプル
善子「なんで、なんでそんなっ…!」
梨子「なに?」
善子「私とは、遊びだったの…?!」
梨子「遊び…?」
善子「気持たせるようなことしておいて、自分は勝手に卒業して…私のこと置いて行って…」
善子「高校生なんて、もう子供じゃないのよ?!」
善子「人の気持ちで遊んで、どうせ陰で笑ってたりしたんでしょう…?」
善子「こんなこと、言いたくなかったけど…」
善子「梨子って、サイテーだったのね」
梨子「………!」ハッ!
梨子「待って善子ちゃん!ちが、違うの!なにか勘違いしてる!!」
善子「もういいわ。あなたには呆れた」
梨子「善子ちゃんっ…!」ガシッ
善子「お代は置いておくから。じゃあね」
梨子「あ……」
梨子「(なんで…なんで私、あんな酷い事言っちゃったんだろ…)」プルプル
梨子「(自業自得よ…そんな事言ったら嫌われるに決まってるじゃない…)」ポロポロ
梨子「(私のバカっ…泣いたってどうにもならないのに…!)」ポロポロ
梨子「ごめ、ごめん、な、さい、善子ちゃん……」シクシク
スタスタスタ…
善子「(よかった、これでよかったのよ……)」
善子「(梨子は、私のことなんてどうでもよかったんだわ…)」
善子「(梨子は、私の恋人なんかじゃなかった)」
善子「(すべてはあの時の、私の勘違いだったのね…)」
善子「(……まさか、騙されるなんて)」
善子「(家の鍵、貰いに行かなきゃ…)」
スタスタスタ……
ポツ…ポツ…
善子「!」
ザアアアアア
善子「うそ、雨……?!」
善子「(傘…傘持ってきてない…!)」ガサゴソ
善子「天気予報じゃ晴れだったのに…」
善子「(このまま走って何処かで買えばいいわよね…)」
梨子『風邪、引くわよ。あと、これ』
善子『いらない』
梨子『……はい』スッ
善子『どうして戻ってきたの?』
梨子『考えてみたら、帰っちゃったら本当に出てきたときに会えないなって』
善子『堕天使っていると思う?』
梨子『え?』
善子『私さ、小さい頃からずっと運が悪かったの』
善子『本当に、そういうのないのかなって。運命とか、見えない力とか』
梨子『見えない力はあると思う。善子ちゃんの中だけじゃなく、どんな人にも』
善子『……そうかな』
梨子『うん。だから信じている限り、きっとその力は働いていると思うよ』
ザアアアアア……
善子「っーーーーーーーーーーー」
善子「(あの日も、こんな雨で……)」
善子「(あの時の言葉も、表情も、ぜんぶぜんぶ、嘘だったなんて、そんなの…)」
善子「信じたく、ない……」
善子「(でも、嘘だった)」
善子「(不幸体質、だもんね。仕方ないわ)」ダッ
パシャパシャパシャ……
善子「(さようなら、梨子…)」ポロポロ
梨子「風邪、引くわよーーーっ!」
善子「梨子…?!」
梨子「そんな寒そうな格好で…!」ダッ
善子「こっち来ないでよ!」
梨子「本当に嫌なら逃げているはずよ」
善子「……」
梨子「相合傘、しよ?傘持ってないんでしょ?」
スタスタ…
善子「一体、なんのつもり?」
梨子「…私は、善子ちゃんで遊んでたわけじゃない」
梨子「本気だった。善子ちゃんのこと」
善子「だったら、だったらなんで…!」
梨子「臆病だったの。善子ちゃんに対して」
善子「おく、びょう…?」
梨子「私は本当に好きだったけど、善子ちゃんはどうなのかなって」
善子「へ……」
梨子「私ね、恋に恋してたことがあったの」
梨子「運良くその人とは付き合えたけど…上手く行かなかった」
善子「なんで…?」
梨子「私からこの人への恋愛感情はないって、気づいちゃったから」
梨子「私は恋に恋してる、って気づいちゃったから」
善子「……」
梨子「怖かったの。いつか捨てられちゃうんじゃないかって」
梨子「だから、付き合おうなんて言えなかった。キスすることもできなかった」
善子「っ……」
梨子「今までたくさん傷つけちゃってごめんね、善子ちゃん」
善子「本当、酷い話よ…!どうして話してくれなかったの…?!」グスッ
梨子「ごめん、ごめんね…」ギュウッ
善子「私は…ずっと梨子のこと好きだったのに…」グスッ
善子「今でも、私の気持ちは変わってないのに…」ボソッ
梨子「え…?」
善子「梨子。私は今でもあなたのことが好きよ」
梨子「……!」ドキッ
善子「恋に恋なんてしてないわ。一年も会えてなかったのに、梨子以外考えられなかった」
善子「本当に、好き。世界で一番、愛してるの」
梨子「よし、こちゃ…」ウルウル
善子「私と、付き合ってくれませんか」
梨子「はいっ…喜んで」ポロポロ
ギュウッ
トサッ
梨子「よ、善子ちゃん、傘、落ちて…」
善子「どうせ濡れてしまうなら、梨子と一緒がいいわ…」
梨子「そんなセリフ、どこで覚えたの…?」
善子「…さあね」
善子「……梨子///」
梨子「善子ちゃん…///」
善子「愛してる。好きよ……」
梨子「私も、愛してる……」
チュウッ
善子「んっ……ふ…んんっ///」チュッ
梨子「はぁっ…んん…はぁっ…///」チュッ
善子「(梨子の唇、柔らかい…好き…)」
梨子「(善子ちゃんの顔…必死で可愛い…)」
善子「んっ……///」スッ
梨子「っ?!?///こ、こらっ!!///」
善子「んぇ…?」
梨子「い、一応外なんだからヘンなとこ触っちゃだめ!!!///」
善子「あ……ごめなさい…」
善子「濡らしてしまったわね。傘、もう大丈夫よ。また、連絡するから」
梨子「え、ちょ、ちょっとまっ…!」
善子「走って帰るわ!そんな遠くないし!」
梨子「えぇぇっ?!待ちなさ…」
善子「大丈夫よ!私のことは心配しないで!」ニコッ
パシャパシャパシャ…
梨子「っ………///」ドキンドキン
梨子「(昔から何一つ変わってないなぁ…笑顔の作り方とか)」
梨子「行っちゃ、だめ」ボソッ
パシャパシャパシャ
ガシッ
善子「?!りーーーー」
梨子「家、来てよ」
善子「うぇっ?!?///」
梨子「せっかくまた会えたんだから…」
善子「い、いい、けど…?」
梨子「それに…さっきの続きも、できるから…///」
善子「ぁ…あ、は、ひゃい……///」
おわり
最後まで読んで下さった方々ありがとうございました。