朝、登校中
曜「ちーかちゃんっ!」
千歌「わっ、曜ちゃん。おはよう!」
曜「おはヨーソロー!早速だけど、これあげる!」
千歌「えっ。これ、ポッキー?」
曜「うん!本日11月11日はみなさまご存知、ポッキー&プリッツの日だけらね!」
千歌「ああ!そっか、今日だっけ!もらっていいの?」
曜「もちろんだよ!そのために持ってきたんだもん!」
千歌「ありがとー!おやつに食べるね!」
曜「ダイヤさんと仲良くね!」
千歌「あ、うん!ちょうどね、放課後は生徒会室に行く用事があるから、そのとき半分こして…」
曜「違うよー、違う違う。千歌ちゃん、そうじゃないでしょ?」
千歌「えっ。違う、って?」
曜「もう、しっかりしてよ。今日はポッキーの日なんだよ?」
千歌「うん、だからポッキーを半分こに…」
曜「違うってばー。ポッキーの日といえば、意中の人とポッキーゲームをする日でしょ?」
千歌「…ふぇっ?」
曜「気になるあの子との距離を、ポッキーがぎゅっと縮めてくれる日でしょ!」
千歌「え、ええっ!?だ、ダイヤさんと、ポッキーゲーム!?」
曜「頑張ってね、千歌ちゃん!」
千歌「む、むりむり!私にはそんなの無理だよ!」
曜「千歌ちゃんならできるよ!輝きはきっとある!」
千歌「そ、それとこれとは別の話!」
曜「じゃあ、やめる?」
千歌「やめな…って、何度もその手には乗らないよ!」
曜「じゃあ、やめない?」
千歌「や、やめる…ってそういうことでもなくって!」
曜「なるほどなるほど。つまり、やるかやらないかで迷ってるんだね。大丈夫、私が応援してるから!」
千歌「いや、だから…」
曜「大事なのは素直な気持ちと勢い!押して押して押しまくれば、きっと想いは伝わるから!」
千歌「よ、曜ちゃん?今日の曜ちゃん、なんだかいつになくイケイケじゃない?」
曜「全速前進ヨーソロー!大事なのは好きになる情熱ですっ!」
千歌「決め台詞に持ち歌まで…お、おかしい。恥ずかしがり屋の曜ちゃんが、今日に限ってこんなに積極的で生き生きとしているなんて…」
曜「むー、千歌ちゃんなかなか手強いな」
千歌「手強いのは曜ちゃんの方だと思うけど…」
曜「なら、とどめの一押ししちゃうよー」
千歌「とどめって、な、何?」
曜「ダイヤさん、可愛いよね」
千歌「う、うん」
曜「可愛いダイヤさん、好きだよね」
千歌「…うん。かっこいいところも、だけど」
曜「ならさ、想像してみてよ。ポッキーゲームに恥じらうダイヤさんを」
千歌「想像…」
千歌『ダイヤさん、ポッキーゲームしよう?』
ダイヤ『ふぇ!?』
千歌『ほらほら、そっち側をくわえて』
ダイヤ『あ…うぅ…!』
千歌『ふふっ、スタート!』
ダイヤ『ち、千歌さん、食べるのがはや――んむっ』
曜「――って感じで!」
千歌「ちょ、ちょっと待って!恥じらうダイヤさんが可愛いのはわかるけど、なんで私がリードする方なの!?それに最後のは何!?」
曜「千歌ちゃんからっていうのがいいんだよ!予想外のアプローチにダイヤさんもドキドキすること間違いなし!経験者の私が言うんだから、間違いありませんっ!」
千歌「経験者…そ、そうか!曜ちゃんはスクフェスURでダイヤさんとポッキーゲーム済み!経験者の余裕が、曜ちゃんをイケイケに変えたんだ!」
曜「ふふっ。それじゃ頑張ってね、千歌ちゃん!」
千歌「えっ、行っちゃうの!?あれだけ言ったんだから、一緒にSailingしてくれる流れじゃないの!?」
曜「そうしたいのはやまやまだけど、他の子にもポッキー配らなきゃだから。みんなの恋路を後押ししなきゃいけないのであります!」
千歌「ええっ、そんなぁ!?」
曜「あっ、そうこう話すうちに一年生ズを発見!おーい、みんなー!」
千歌「あっ、曜ちゃ…行っちゃった。ど、どうしよう、ダイヤさんとポッキーゲーム…」
『ダイヤさん、ポッキーゲームしよ?』
千歌「…!」
『ダイヤさんはそっち側くわえて。私はこっちから…んむっ』
千歌「…!!」
千歌『らいやひゃん…んっ――』
千歌「〜っ!むりむり、そんなの無理だよぉ!」
曜『頑張ってね、千歌ちゃん!』
千歌「ダイヤさんと、ポッキーゲーム…!」
放課後・生徒会
ダイヤ「ふむ…」
ダイヤ(私の手元には、果南さんと鞠莉さんに持たされたポッキーが二箱)
果南『ダイヤ、ポッキーだよ。頑張ってね』
鞠莉『私からもどうぞっ。ちかっちと仲良くね!』
ダイヤ(まったく。あのお二人、応援してくれているのか楽しんでいるのか…おそらく両方でしょうね)
ダイヤ(ですが、今日は年に一度のポッキーの日。この機を逃す手はありません、必ずやり遂げてみせます)
ダイヤ(生徒会長としてでも、黒澤家の長姉としてでもなく)
ダイヤ「ひとりの人間、黒澤ダイヤとして…!」
コンコン
ダイヤ「はい、どうぞ」
千歌「ダイヤさん、千歌です」
ダイヤ「ふふ。わかってますよ、窓から見えていますから。どうぞ」
千歌「し、失礼しまーす」
ダイヤ「ようこそ来てくださいました。さ、こちらへ」
千歌「は、はいっ」
ダイヤ(千歌さん?なにやら緊張しているようですが)
千歌(ううっ、あれこれ悩んだけど、考えがまとまらないうちに時間になっちゃった…それに曜ちゃんたら)
曜『さっきは言い忘れてたけど、私とダイヤさんがしたときには「最後」まで行ってないから安心してね!』
千歌(行きがけにあんなこと言うなんて…どうしたって意識しちゃうじゃん…)
ダイヤ「まずはお呼びした用件を済ませましょうか。この前提出のあった書類についてですが、こちらに訂正のサインを――」
千歌「あっ!」
ダイヤ「えっ?」
千歌「それ、ポッキー!」
ダイヤ「ああ、聞けば今日はポッキーの日だとかで」
千歌(ダイヤさん。もしかして、準備してくれたのかな…)
ダイヤ「いただいたのです。果南さんと鞠莉さんから」
千歌「あ、あー…ダイヤさんも?」
ダイヤ「と言うと、千歌さんもですか?」
千歌「うん、曜ちゃんがどうぞって…」
ダイヤ「ふふ、なるほど。それで後ろ手に持っていたんですね」
千歌(違った、準備してくれたわけじゃないんだ…)
ダイヤ「ちょうどおやつにしようと思っていたところです、用事が済んだら一緒にいただきましょうか。さすがに3箱は食べきれませんが」
千歌「は、はいっ」
ダイヤ「ではこの二ヶ所にサインを――はい、ありがとうございます」
千歌「これで大丈夫?」
ダイヤ「ええ。では、一息つきましょうか」
千歌(来た…!)
ダイヤ「ポッキーは普通のもの、アーモンド、いちご味の3種類ですね。どれにしますか?」
千歌「えっ?ふ、普通ので」
ダイヤ「ふふっ、意見が合いますね。私もそれがいいと思っていました」
千歌「あ、はは…」
ダイヤ「前に抹茶味を食べたことがあるのですが、最近は見かけませんね。季節限定だったのでしょうか」
千歌「あ、うん…」
ダイヤ「はい、千歌さん。半分こです」
千歌「あ、ありがとう。いただきまーす」
ダイヤ「いただきます――ん、さすが普通タイプ。王道の美味しさです」
千歌「そ、そうだね」
千歌(普通に食べ始めちゃった。もしかしたら、ダイヤさんの方から誘ってくれないかなって思ってたけど…)
ダイヤ(ポッキーゲームに誘うにしても、初手からはさすがに早すぎる。節操が無いと思われてもいけません。少し様子を見てからにしましょう)
千歌(やっぱり私から行かなきゃ…!でも、どうやって…)
ダイヤ「それで、そのとき鞠莉さんたちが――」さくさく
千歌(ダイヤさんのおしゃべり。楽しいけど、その分時間が過ぎるのも早くて。気付けば殆ど食べちゃった)さくさく
ダイヤ「ん、千歌さん?」
千歌(チャンスは一度きり…頑張れ私。全速前進、大事なのは情熱…)ぽりぽり
ダイヤ「千歌さん、千歌さーん」
千歌「んっ、えっ?」
ダイヤ「もうポッキーが空っぽですが、そんなにお腹が空いていたのですか?」
千歌「あ、ああっ!?しまった、全部食べちゃった!」
ダイヤ「ふふ。美味しいのはわかりますが、随分食いしん坊さんですね」
千歌「いや、これは緊張で…」
ダイヤ「…もしかして、まだ食べ足りないのではありませんか」
千歌「!」
ダイヤ「よければ…私のを少しお分けしますが」
ダイヤ(チャンスは訪れた…今こそ打って出るとき、です…!)
千歌「でも、ええっと…」
千歌(どうしよう。私からアプローチしなきゃなのに、なにもできないで…ん?)
千歌「あっ!」
千歌(残ってた…折れて小さくなったポッキーが、一本だけ…!)
ダイヤ「ん?ああ、袋の中で折れてしまっていたんですね」
千歌(サイズは半分くらいになってる。条件的には不利、だけど…!)
千歌「だ、ダイヤさんっ、ポッキーゲームしよう!」
千歌(や、やっと言えた…!)
ダイヤ「…!」
ダイヤ「ぽ、ポッキーゲーム…」
千歌「ダイヤさんさえよければ…だけど…」
ダイヤ「…私は構いません」
千歌「ほんと!?」
ダイヤ「ですが、そのポッキーは折れて短くなっていますね。ゲームには不向きな状態と見受けられます」
千歌「た、確かにそうだけど…なら、ダイヤさんのを――」
ダイヤ「…もぐっ」
千歌「!?」
ダイヤ「もぐ、もぐもぐ」
千歌「だ、ダイヤさん!?どうして手元のポッキーを一気に!?」
ダイヤ「ん…ふぅ、こうしたかったのです」
千歌「えっと、どうして?」
ダイヤ「少々贅沢な食べ方をしてしまいましたが…これで残るポッキーは、千歌さんのその一本だけですわ」
千歌「あ…!」
ダイヤ「…しましょう。ポッキーゲームを」
千歌「は、はいっ!」
ダイヤ「それと、ゲームを開始する前に、伝えておきたいことがあります」
千歌「えっ、なに?」
ダイヤ「私はいま、ポッキーを勢いよく食べきったため、程よくお腹が満たされています。ですから…最後のポッキーは、千歌さんに食べて欲しいのです」
千歌「そ、それって」
ダイヤ「私がポッキーを支えます…お願い、できますか?」
千歌「は、はいっ!」
千歌(それって、そういうこと…だよね?)
ダイヤ「では、始めましょう。あむっ」
千歌「あ、あむっ」
ダイヤ「…」
千歌(ポッキーが短いせいで、初めから顔が近い…)
ダイヤ「…っ」
千歌(間近で見るダイヤさん、可愛い…)
ダイヤ「…すみません。千歌さん、えっと、あまり見ないでください」
千歌(えっ…)
ダイヤ「近くで見つめられると、その…ドキドキしてしまいます…」
千歌(あ、ああ!)
ダイヤ「…ふふ、かといって目を閉じてしまっては、何も見えませんよ」
千歌「ん、んー」
ダイヤ「ふふ。それなら大丈夫そうですね」
千歌(…ダメだなぁ、私。ダイヤさんに助けてもらってばかりで、いざという時に怖気づいて)
ダイヤ「では、改めてもう一度…あむっ」
千歌「あむっ」
千歌(だけど、いや、だからこそ。ちゃんとリードするんだ…ダイヤさんを、私が…!)
千歌「んっ」もぐ
ダイヤ「…っ」
千歌「…ん」さく
千歌(ポッキーは通常の半分以下…すでに鼻がくっつきそうな近さ)
ダイヤ「…」
千歌(視界がダイヤさんの顔でいっぱい…ちょっと赤くなってる、多分、私も…)さく
ダイヤ「…!」
千歌(あと少し…ダイヤさんに、届く…!)
パキッ
ダイヤ「!」
千歌「!!」
千歌(そんな…あとちょっと、あとちょっとで折れ――)
ダイヤ「――っ!」
千歌「んむっ!?」
ダイヤ「ん…」
千歌「ん、むぅ…んっ!」
ダイヤ「ん、んー…」
千歌「んーっ…ぷあっ…」
ダイヤ「…ふふ、無事食べきりましたね」
千歌「だ、ダイヤさん…!」
ダイヤ「ごちそうさまでした」
千歌「あ、うぅ…」
ダイヤ「食べ足りなかったので、最後の一口を頂いてしまいました。ごめんなさい」
千歌(ダイヤさんの方から…嬉しい…でも、どうして?ダイヤさん、いつもはすぐ恥ずかしがっちゃうのに…ん、この疑問、さっきどこかで…)
ダイヤ「ポッキーをくださった曜さんに、感謝しなければですわね」
千歌(そ、そっか。ダイヤさんもポッキーゲーム経験者!曜ちゃんがそうだったように、ダイヤさんもまたポッキーゲームの恥ずかしさに耐性がついてるんだ…!)
ダイヤ「嬉しかったです。千歌さんの方からポッキーゲームに誘ってくれて。勇気を出して進んできてくれて」
千歌「ダイヤさん…」
ダイヤ「だから、今度は私から――」
千歌「えっ。ダイヤさん、ポッキーはもうな、んっ――」
私のとっておきを、あなたに――
終わり
ちかダイポッキーゲームでした、ありがとうございました
|c||^.- ^||乙ですわ
脳内再生していて笑顔が止まりませんでした
描写が細かくそのシーンが楽に想像出来る素晴らしい作品でした。お疲れ様です
>>42 人様のSSスレで自分の書いたSSを挙げるのは、荒らしという認識なので拒否する
>>43 改善点も挙げずにツマンネの一言レスの時点で十分クソ荒らしだから認識改めろ