人より優れた有り余る運動能力を持ちながらもそれを活かさずスクールアイドル部に所属していた為指定校推薦を貰えなかった星空凛。
高校を卒業して2年、大学受験に2度も失敗した凛は自暴自棄になっていた。
ピンポーン
花陽「凛ちゃん、迎えに来たよ〜」
ガチャッ
凛「…あぁ、かよちんか…今何時?」
花陽「えっと…お昼の1時半だけど…もしかして今起きたの?」
凛「まぁ…うん…なんか久しぶりだね」
花陽「う、うん…」
凛「…出かける用意してくるけど…暑いし中入る?」
花陽「あ、うん…」
凛の部屋
凛「そこ座ってていいよ、確かここに服しまってたと思うんだけど…」ゴソゴソ
花陽「…あ」
凛「どうかした?」
花陽「制服…懐かしいなと思って…まだそこに掛けてるんだ」クスッ
凛「…懐かしいんだ、かよちんには」
花陽「え?」
凛「そうだよね、かよちんは卒業してから大学に通って2年も経つんだもんね」
花陽「え、えっと…」
凛「私にとってこの2年は何も無かったよ、毎日味のしないガムと同じでね、だから制服を片付けようとも思えないんだよ」
花陽「…」
凛「卒業してから色んな事を新しい場所で経験したかよちんには懐かしい制服かもしれないけど、あれから時間が止まったままの私にとっては」
花陽「ごめん」
凛「…」
花陽「…ごめんね、凛ちゃん」
凛「……この辺に服しまったんだけどなぁ」ゴソゴソ
凛「…おまたせ」
花陽「あっ」
凛「なに?」
花陽(この服…高3の時2人で買った…)
凛「…どうかしたの?」
花陽「…髪伸びたね、凛ちゃん」
凛「まぁ引き篭ってるし、運動もしないのに短くしとく理由も」
花陽「かっ…かわいいと思うっ、よ!」
凛「……」
花陽「…行こっか!そろそろ集合時間だし」
凛「うん」
駅前
花陽「おまたせ〜」
絵里「こんにちは花陽、凛は?」
凛「…」ノソッ
絵里「…もしかして…」
凛「…久しぶり、絵里ちゃん」
絵里「凛!ホントに久しぶりじゃない!なんでこんな暑いのにニット帽被ってんのよ…おかげで一瞬誰かわからなかったわよ」
凛「かよちんが…凛の髪が伸び散らかってるって言うから」
花陽「そ、そんなこと言ってないよ!」
凛「…」
絵里「…も、もう少ししたら残りも来ると思うわ、少し待ちましょうか」
二浪するってこうも人を変えるのか…そういや成人式来なかった二浪のクラスメートいたしな…
?「ほいっ」ピョイッ
凛「あっ」
希「帽子なんか被らんでも可愛いよ、凛ちゃん」
花陽「希ちゃん!」
絵里「…希はてっきり遅刻してくると思ってたわ」
凛「…希ちゃん、帽子返して」
希「だーめ!これは没収!」
凛「…でも…」
希「でも??」
凛「…久しぶりに外に出たから、それが無いと落ち着かない」
希「……」
絵里「…」
花陽「り、凛ちゃん…」
絵里「…凛」ポンッ
凛「…」
絵里「大丈夫よ、凛はそのままで何も気にすることないんだから…」
凛「…」
希「…そうだよ凛ちゃん、元気無いなんてらしくないやん?」
凛「……忘れちゃったんだよね」
絵里「え?」
凛「私ってどんなだっけ」
花陽「……」
絵里「…凛…」
にこ「ちょっとちょっと!そこの髪色の明るい長髪美少女は誰よ!」
希「あ、にこっち」
凛「…」チラッ
にこ「って凛じゃない!何よ大人な雰囲気になっちゃって〜」ビシバシ
凛「…痛っ…痛いって…」
花陽「に、にこちゃん、凛ちゃん痛がってるから…」
絵里「にこ、あなたも凛を見習ってちょっとは大人になりなさい」
にこ「えぇ〜?にこにーオトナになりたくな〜い」ブリブリ
凛「…」イラッ
花陽「り、凛ちゃん…」
凛「…にこちゃんって」
穂乃果「おっまたせ〜!!」
希「穂乃果ちゃん、今日も元気やね」
凛「………」
穂乃果「えへへ、来る途中で大学に課題出しに行ったんだけどさ〜」
凛「……」
穂乃果「期限越えてたのに先生受け取ってくれたんだ〜」
にこ「ずっる」
絵里「穂乃果…そもそも期限内に出しなさい」
凛「…………」
穂乃果「…って凛ちゃん!?わぁ、久しぶりだねぇ!」
凛「…ひ、久しぶり」
穂乃果「髪伸びたね〜!ちょっと痩せた?なんか高校の時より海未ちゃんの妹みたい!」
海未「誰がですか?」
穂乃果「海未ちゃん!今回は穂乃果の方が来るのが早かったね」フフン
海未「……皆さん集まるのが早いですね」
穂乃果「あー!今穂乃果に負けたのが嫌だから皆早いねって言った!!」
海未「ちっ、違います!コホン…で、凛が私の妹みたいだと?」
凛「…う、海未ちゃん…」
海未「…ほう…確かに…なんだか雰囲気変わりましたね、凛」
凛「…」
海未「…でもやっぱり凛は凛ですね、寝癖直し忘れてますよ」スッ
凛「…ひっ!?」ビクッ
海未「…凛?」
凛「…じ、自分で直す、から」
花陽「…凛ちゃん…」
希「…」
凛「…ちょっとお手洗いで鏡見てくる」スタスタ
絵里「…」
穂乃果「…凛ちゃん、何かあったの?」
希「…花陽ちゃん、何か知ってる?」
花陽「…詳しくはわからないけど…」
真姫「精神的にキてるんでしょ」
花陽「!」
海未「真姫、盗み聞きですか?」
真姫「失礼ね…普通に聞こえただけよ」
穂乃果「真姫ちゃん、凛ちゃんが精神的に…ってどういうこと?」
真姫「凛、ここ2年ずっと1人で浪人してるんでしょ?」
絵里「…確かにそれで少し参ってるのかもしれないわね」
真姫「それだけじゃないわよ」
花陽「…」
真姫「…花陽、説明して」
花陽「…凛ちゃんは…自分と皆を比べてるんだと思う」
にこ「比べてる?」
花陽「うん、自分は大学に落ちて、高校生から何も進んでない、止まったままだって」
絵里「…私達は別に凛が落ちた事気にしてないのに…」
希「…本人からしたら皆と同じラインに立ててない事は大きいんじゃないかな」
真姫「そうね、結局私達からすれば他人事だし?凛の気持ちなんてわかるわけないわ」
海未「ま、真姫!そんな言い方は…」
真姫「じゃあ海未ならわかるの?」
海未「…そういう訳では…」
真姫「自分自身でなんとかさせるしかないのよ、私達ができることなんて無いわ」
花陽「…わ、私…凛ちゃんの様子見てくるっ!」タッ
にこ「え?ちょっと花陽!」
真姫「…」
トイレ
凛「……」
花陽「…り、凛ちゃん」
凛「…今日はもう帰るよ」
花陽「え?」
凛「楽しくないし」
花陽「で、でも皆来てるんだよ?」
凛「だから何?」
花陽「……」
凛「……とにかくもう帰るから」
花陽「…待って」
凛「…何?」
花陽「私、今日1度も凛ちゃんの笑った顔見てない」
凛「…」
花陽「…」
凛「楽しくないし面白い事もない、そりゃ笑えないよ」
花陽「皆で…皆といると楽しいよ」
凛「…皆は楽しいんだろうね、私以外の皆は」
花陽「どうして…」
凛「皆笑ってたじゃん、私を見て」
花陽「…」
凛「私を見て、近付いて来てさ、変わっただの変わらないだの言ってニヤニヤしてさ」
凛「そりゃ面白いよね、今の私無職だし。ははっ」
凛「あ、今笑ったよかよちん、これでいい?」
花陽「…」
凛「なんか言ってよ」
花陽「…凛ちゃんって…バカだよね」
凛「………え?」
花陽「…」
凛「……」
花陽「皆が凛ちゃんを見て笑ったのは久しぶりに会えて嬉しかったからだよ」
凛「…」
花陽「…本当はわかってるくせに…どうしてそんなに卑屈な考えするの?」
凛「…私は皆に会っても何も嬉しくないよ」
花陽「…」
凛「皆が求めてるのはさ、あの頃の私でしょ?でももう私、自分がどんなだったか覚えてないし」
凛「それに腹立つんだよね…皆が真っ当な道を歩いて生きてるの見てるとさ」
花陽「…」
凛「私は毎日こんなに苦しいのに、へらへら笑ってさ」
凛「私より不真面目な人でも私より普通に生きててさ」
凛「優しくされても、哀れな負け組に手を差し伸べてる感じがして気分が悪いんだよ」
凛「かよちんにはわからないでしょ」
花陽「…わかんない」
凛「そりゃそうだよ、かよちんは私とは違うんだから」
花陽「…違うなんて…言わないでよ…」
凛「…かよちんもそうだよ、私に寄り添ってるつもりかもしれないけど」
花陽「やめて」
凛「私からすればそれも」
花陽「やめてよ!!!」
凛「っ!」ビクッ
花陽「…やだよ凛ちゃん」
凛「……」
花陽「元に戻ってよぉ…」ポロポロ
凛「…戻るって、何さ」
凛「元に戻るって何?じゃあ今の私はなんなの?」
花陽「……っ…」ポロポロ
凛「教えてよかよちん、私はなんなの?」
花陽「…凛ちゃんは…もっと優しい子だよ…」グスッ
凛「…かよちん、泣かないで」
花陽「…凛ちゃん…」ポロポロ
凛「…ごめんねかよちん」ギュッ
花陽「…うっ…うぅ…」グスッ
凛「……いや、こんなんじゃなかった気がする」
花陽「…えっ?」ポロッ
凛「…私ってこんなんじゃないよ」
花陽「…凛…ちゃん…」
凛「…ごめん、やっぱり帰るよ…」
花陽「まっ…待って凛ちゃん!」
凛「次会う時までにはさ」
凛「星空凛がどんなだったか思い出しとくから」
花陽「……凛…ちゃ…」
凛「またね、かよちん」ニコッ
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真姫「…心が壊れちゃったんでしょうね」
花陽「…」
絵里「もっとたくさん凛と連絡を取っておけばよかったのかしら…」
にこ「関係ないでしょ、凛は自分と他人を比べて劣等感でおかしくなっちゃったんだし」
希「むしろ干渉した方が今よりもっと悪化しちゃうって事やね」
真姫「そういうこと」
海未「凛…」
穂乃果「…大変だね、凛ちゃん」
花陽「……私、どうしたらいいのかな」
真姫「さっきも言ったでしょ、放っておくしかないのよ」
花陽「でも…」
真姫「自分で乗り越えさせるしかないの、凛の場合…受験かしら」
花陽「…」
凛の部屋
凛「皆に酷いことしちゃったと思う?」
凛「どうだろう、でも皆も凛に酷いことしたよね」
凛「でもかよちんが言った通り、皆に悪気があった訳じゃないかもしれないよ?」
凛「でもどっちにしろあのまま凛がいてもよくなかったと思うんだ」
凛「ことりちゃんの留学お疲れ様会なのに、あのままじゃ皆凛に気を使って楽しめないよね」
凛「そうだよ、だからこれで正解」
凛「凛は逃げたわけじゃない」
凛「………」
凛「…はぁー…」
凛「…もうつらいにゃ」
月日が流れたある日
海未「…あれ、凛じゃないですか?」
ことり「えっ、嘘!どこどこ?」
凛「……」テクテク
ことり「ほんとだ!凛ちゃ〜ん!!」
海未「あっ、こっ、ことり…」
凛「!」
ことり「どうかした?海未ちゃん」
海未「…その…皆と相談してことりには知らせていなかったんですが…凛は…」
凛「ことりちゃん!久しぶりだね!」タッタッタッ
ことり「凛ちゃん!やぁ〜ん♡やっぱり凛ちゃんは可愛いねぇ」スリスリ
凛「んもう!くすぐったいよぉ〜」クスクス
海未「……凛?」
凛「んん?どうしたの?海未ちゃん」
海未「…あ、いえ…」
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海未「…という事があったんですが…」
絵里「…な、治った…ってこと?」
真姫「…どうかしら」
絵里「で、でも!あの頃の凛そのままだったんでしょ?ね、ことり!」
ことり「うん、少なくともことりにはまったく同じに見えたなぁ」
真姫「…あれから数ヶ月しか経ってないのよ?1度精神に異常が出た人がこんな短期間で元に戻るなんて…」
海未「…おかしい、ですか?」
真姫「…えぇ」
絵里「でも実際戻ったんでしょ?だったら…」
ことり「…あ、でもね」
絵里「え?」
ことり「…強いて言うなら…凛ちゃん、何も変わってなくて…変わって無さすぎて…」
ことり「…本当にあの頃の凛ちゃんそのまんまで…」
真姫「……花陽に連絡してみるわ」
花陽「……よしっ」
ピンポーン
花陽「…凛ちゃん、いる?」
ガチャッ
凛「かよちん!どうしたの?」
花陽「いきなりごめんね、凛ちゃん…入っていい?」
凛「うん!いいよ!」
花陽「……お邪魔します」
凛の部屋
凛「いきなりどうしたの?かよちん」
花陽「…えっと…とくに用事があったわけじゃないんだけど…」
凛「あ、じゃあ遊びに行こうよ!ちょうど新しい服買いに行きたくてさ〜」
花陽「…凛ちゃん」
凛「ん〜?」
花陽「…どうしたの?」
凛「え?」
花陽「……」
凛「…凛、なんか変かな?」
花陽「へ…変じゃない…けど…」
凛「何それ!変なかよちん!あははは」
花陽「…凛ちゃん…笑えてないよ」
凛「え?ほんと?…困ったなぁ…次会う時にはあの頃の凛に戻しとくって約束だったのに…」
花陽「……え……」
凛「ん〜、難しいねぇ」
花陽「…り、凛ちゃん…?」
凛「ん?どうしたの?」
花陽「…作ってる…の?」
凛「あぁ、キャラ?うん」
花陽「……」
凛「あの頃は自然にできてたんだけどね〜、難しくってさ」
花陽「………」
凛「海未ちゃんとことりちゃんには通用したんだけどなぁ…かよちんにはやっぱりバレちゃうね、あはは」
花陽「…………っ」グッ
凛「わっ、どうしたのかよちん?急に立ち上がって…」
花陽「…私、帰る」
凛「えぇ〜?せっかく来たんだから遊ぼうよ〜」
花陽「…本当に…そう思ってる?」
凛「えぇ?」
花陽「凛ちゃんは本当に私と遊びたいの?」
凛「…いや別に…でも「凛」なら遊びたいと思うよ」
花陽「……………」
凛「…そんなにダメ?今の私…」
花陽「…」
凛「……わかったよ…じゃあ次にかよちんに会う時までに、またなんとかしてみる」
花陽「…もういいよ」
凛「え?」
花陽「…私が好きなのは…そのままの凛ちゃんだから」
凛「…どういうこと?」
花陽「だから、もういい」
凛「ふ〜ん…」
凛「よくわかんないね、かよちんって」
それから凛は二浪目にして遂に大学に合格。
しかし凛の入学と年長組3人の卒業を祝うパーティに花陽の姿は無かった。
花陽は凛に会うのが怖くなってしまった。
自分が接している相手が本当にその人なのか、誰かと話している時常にそれを疑うようになってしまった。
やがて花陽は人と話すことができなくなり、大学を辞めて今は自室に引き篭っている。
真姫「心の病は移るのよ、立派な伝染病ね」
凛「怖いね〜」
真姫「で?凛…あなたは治ったの?」
凛「うーん…よくわかんない」
真姫「…もういいわ」
おわり
花陽ちゃん思い通りにならなくて駄々こねただけになっちゃった
今回も面白かったわ、乙
毎度の如くお前さんの書くSSの独特な世界観に引き込まれてる
読み耽てしまう
すべてお見通しってワケか───
俺もこれ思い出した
二浪して引きこもり状態なら友達に会うとかせんやろ‥。花嫁だけならともかく
言う程ラブライブ優勝って進学に有利にならんか?次期リーダーだし
>>46
学歴コンプ抱えて到底無理な高み目指して落ち続けるパターンかもしれん