かすみ「私、好きな人がいるんです」
かすみ「相談に乗ってくれませんか?」
「えっ!?」
その人は目を丸くして、私を見つめている。
アワアワして目を泳がせて、でも最後はしっかりと私を見据える。
……顔、真っ赤じゃないですか。
せつ菜「力になれるか分かりませんが、どうぞ」
後輩を助けようとする、真剣な目。
……そこに、落ち込んだ様子はない。
かすみ(少しガッカリした、とか)
かすみ(……勝手ですよね)
かすみ「その人が気になり始めたのは、わりと最近なんです」
〜夏休み明け〜
かすみ「ああーっ!!どうしようー!?」
かすみ(って、この声はアイドル失格ですかね)
でも今部室にはかすみん一人なので、セーフとしましょう。
それより今は、もっと大変なことがあるんですから!
……可愛いスクールアイドル生活を満喫中のかすみんは、ただいま大ピンチなんです!
数学小テスト「25点ダヨ」
かすみ「ぐっ……このままだと…中間に続いて赤点に」
果林「あら、早いわね」
かすみ「ぬわあああっ!?」
果林「そんなに驚かなくてもいいじゃない!」ピラッ
果林「って…あら?」
テスト用紙「ニッコニッコニー」
かすみ「うわああっ、返してください!」バッ
慌ててテストを奪い取りましたが、沈黙が痛いです。
かすみ(いくら果林先輩でも、これは……)
果林「……かすみちゃん」
かすみ「な、なんですか!?」
果林「小テストなんだし、そんなに落ち込む必要はないんじゃないかしら」
かすみ「……はあぁ」
そうでした、この先輩もこっち側の人でした。
かすみ (無駄にいい顔で言ってくるから変な説得力があるんですよねぇ……)
かすみ「果林先輩、次の定期試験がいつか知ってます?」
果林「それくらい知ってるわよ、2週間後でしょう」
かすみ「よく自信満々に言えますね……」
かすみ「この小テストが大体次の範囲なんですよぉ……。今週は練習したいし!このままじゃまずいんです〜!!」
果林「なら誰かに教えてもらったら?普通科なら先輩がいるじゃない」
かすみ「…ゆ、侑先輩は転科したばかりですし」
果林「歩夢は?」
かすみ「歩夢先輩って…テスト前に計画とか立ててコツコツ勉強してそうじゃないですか?」
果林「ああ…してそうね、真面目だし」
かすみ「ペース崩しそうで悪いかなって……」
侑先輩のサポートとかもしてそうだし。
果林「じゃあ残るは一人じゃない」
かすみ「うっ……そうなんですけど」
かすみ(その最後の一人が問題なんですよ!)
優木せつ菜。
同好会ではたまに?暴走する人ですが、勉強面でサポートしてくれるなら心強い先輩です。
なんせ生徒会長だし、全校生徒の名前を覚えてるとかよく分からない記憶力だし、授業もちゃんと聴いてそうです。
かすみ(ですが!)
かすみ「いやー、でもせつ菜先輩にこのテストなんか見せたら…」
せつ菜「こんにちは!!」
かすみ「うえええええっ!?」
かすみ(まずいです、鬼みたいに怒られます!)
果林「ちょうど良かったわ、せつ菜。かすみちゃんを助けてあげてくれない?」
かすみ「あああ!果林先輩待ってくださ」
せつ菜「助ける?かすみさん、何か悩んでいるんですか?」
かすみ(ああ、せつ菜先輩がその気に!)
かすみ「だ、大丈夫です!せつ菜先輩には関係ないことですから!」
せつ菜「そうですか……?」
かすみ「はい、他の、あ!そうだ愛先輩とかに相談しますから!せつ菜先輩は絶対大丈夫です!」
せつ菜「……そうなんですね……」
かすみ「全然平気ですから……!」
果林「ちょっと、かすみちゃん?」
かすみ「……はい?」
かすみ(何でしょう、果林先輩からの視線が痛いですね)
せつ菜「そ、そうですよね……」シュン
かすみ「……うっ」
かすみ(すごい落ち込んでる!)
せつ菜「いいんです、私はあんまり相談とか向いてませんし……」
せつ菜「愛さんとか、歩夢さんとかの方が気遣いもできてかすみさんも話しやすいでしょうし」シューン
かすみ(ああもう…なんですかその顔は!)
果林「どうするのよ、せつ菜大分落ち込んでるわよ」
かすみ「いやその…先輩が頼りないとは言ってないんですよ!?ただせつ菜先輩は厳しそうというか……」
せつ菜「……厳しそう?」
かすみ「あっ」
果林「ハァ、ほらこれよ」
せつ菜「ん?小テスト?」
かすみ「えっ、いつの間に…あああぁ!」
せつ菜「にじゅう…5点」ピクッ
かすみ(果林先輩の薄情者〜〜!!)
せつ菜「かすみさん」
かすみ「ひゃぃっ!?」
せつ菜「練習後に少し…お話しましょう」
かすみ「はい……」
というわけで、練習後の部室にはかすみんと先輩の二人きり。
裏切り者こと果林先輩は「頑張ってね♪」といい笑顔で帰っていきました。
かすみ(言い過ぎたかすみんも悪いですけど…!)
せつ菜「さて、かすみさん…」
かすみ「……うぅ」
かすみ(眼鏡掛けた先輩……ちょっと苦手なんですよね)
せつ菜「このテストを見る限り、一学期の範囲からやり直さないと駄目です」
かすみ「うっ」
せつ菜「残り2週間でおさらいまでするとなると…おそらく時間が足りません」
かすみ「はい…」
せつ菜「ですから」
せつ菜「かすみさんが公式を使えるまでは、私がつきっきりで教えないといけませんね!」
かすみ「…はい?」
せつ菜「今日から1週間毎日勉強すれば、基本はどうにかなるでしょう。練習の後は空いてますか?」
かすみ「空いてますけど…いいんですか!?せつ菜先輩の勉強は?」
せつ菜「私は普段から勉強してますし大丈夫です。かすみさんを放っておく方が心配です」
かすみ「いやでも、あと2週間ですよ?今25点ですよ!?先輩に見てもらっても、あんまり良い結果にはならないかな〜って…」
せつ菜「大丈夫です、かすみさんなら出来ます!」
かすみ「な、何でそんな言い切れるんですか…。自慢じゃないですけど私、勉強はだいぶ苦手で」
せつ菜「でも…かすみさんはランニングも歌も、いつも諦めずに練習しているでしょう?」
せつ菜「苦手なこともちゃんとやる頑張り屋さんなのは、私がよく知っていますから!」
かすみ「っ!うう……」
せつ菜「ど、どうしました!?あっ、私また何か言い過ぎて」
かすみ「うわ〜ん、せ"つ"なせ"んぱ〜い!」ダキッ
せつ菜「うわぁ!?かすみさんっ?」
かすみ「ありがとうございます……このままじゃ赤点かもって、かすみんもうどうしたらいいかぁ」グスッ
せつ菜「もう……今度はもっと、早く相談してくださいね?」ナデナデ
かすみ「はーい……」
せつ菜「ところで…他の教科は大丈夫ですか?」
かすみ「……」ピクッ
せつ菜「……」
せつ菜「2週間に延長しましょう」
かすみ「はい……」
せつ菜「全教科、みっちり計画を立ててやりましょう」
かすみ「ハイ……」
せつ菜「じゃあ早速!場所はファミレスでいいですか?」
かすみ「オ、オッケーです!」
その日から、放課後にファミレスでの勉強がかすみん達の日課になりました。
かすみ「うえぇ…この問題難しくないですか?」
せつ菜「それは一昨日やったことの応用ですよ」
かすみ「え?えっとぉ…」
かすみ「というか…せつ菜先輩、なんで勉強会のときはその格好なんですか?」
勉強会での先輩は三つ編みに眼鏡装備。
生徒会長の菜々モードです。
せつ菜「これですか?勉強を教えるなら、こちらの方が暴走しなくていいかなと思いまして」
かすみ「そうですかぁ?」
せつ菜「かすみさんのペースに合わせるのが一番大切ですからね!」
かすみ「じゃあ、かすみんも菜々先輩って呼んだ方かいいですかねー」
せつ菜「かすみさんの好きな呼び方で構いませんよ」
かすみ「それじゃあ、菜々先輩!かすみん…ちょっとあま〜いジュースで休け」
せつ菜「さぁ、今日は日本史をあと2ページですよ」
かすみ「うぐっ……」
かすみ(菜々先輩になると、なんだか隙がなくなるような気がします…)
せつ菜「でも、その呼び方は今までされた事ありませから……かすみさんが初めてですね!」
かすみ「へ、へぇ……」
せつ菜「そう思うとなんだか、照れますね……///」
かすみ「時間差で照れないでください……!」
かすみ(こっちまで恥ずかしい……)
かすみ(急に子どもっぽくなるんですから……年上なのに!)
せつ菜「ごめんなさい……」
かすみ(でもこの呼び方、そっか、かすみんだけなんだ……。まあ、どうでもいいですけどね!)
〜数日後〜
かすみ「で、できましたー!」
せつ菜「ふむふむ…。おお、85点ですよ!やりましたね!」
かすみ「本当ですか!?これで今度の範囲はバッチリですね!」
せつ菜「まあ油断は禁物ですが、あとは演習問題を解いていけば大丈夫でしょう。頑張りましたねかすみさん!」
かすみ「えへへ…全部菜々先輩のおかげです!」
せつ菜「あとちょっと、頑張りましょう!」
かすみ「おーっ!」
そして二週間は過ぎ、テストも無事乗り切れた…ハズです!
〜テスト返却日、放課後〜
かすみ「はぁっ、な…せつ菜せんぱーい!」ガチャ
璃奈「かすみちゃん?」
しずく「そんなに急いでどうしたの?まだ私達しか来てないよ?」
かすみ「あ…。まだ来てないかぁ」
璃奈「テストで何かあったの?」
かすみ「ふっふっふ……じゃーん!!」
璃奈「わ、すごい。数学70点…奇跡」
しずく「他の教科も!どうしちゃったの?」
かすみ「二人とも地味に失礼じゃない?」
まあ、今のかすみんは無敵なので良しとしましょう!
侑「こんにちはー!あれ、一年生だけ?」
しずく「侑さん、お疲れ様です!今ですね…」
かすみ(菜々先輩、早く来ませんかね…)ソワソワ
かすみ「侑先輩、せつ菜先輩見ませんでした?」
侑「えっ、せつ菜ちゃん?今日は生徒会の仕事があるから来れないって言ってたよ」
かすみ「そ、そうなんですか!?」
璃奈「生徒会、大変そう…」
かすみ(自分が教えた結果とか、気にならないのかな)
かすみ(というか、侑先輩にだけ連絡するんだ……)
かすみ(ふーん)
しずく「かすみさん?」
かすみ「もう!練習する!!」
侑「おお?すごいやる気だね、かすみちゃん!」
〜生徒会室前〜
かすみ「結局、来てしまいました……最後まで練習来ないし……」
かすみ(まあ、いなかったら帰りましょうk)ガチャ
せつ菜「あれ、かすみさん?」
かすみ「お、お疲れ様です!もう仕事終わりですか?」
せつ菜「鍵を返しに行くところですよ。もう練習は終わりですよね、何かありましたか?」
かすみ「えっと…中間テストの事なんですけど」
せつ菜「テスト?ああっ、どうでした!?」
かすみ「あの…数学も他の科目も、70点超えてたんです!菜々先輩が付きっきりで見てくれたおかげですっ」
せつ菜「……」
かすみ(あれ、なんで反応なし!?)
かすみ(もしかして…先輩にとって70点は、不合格だったとか?)
かすみ「な、菜々先輩?」
せつ菜「うう、」グスッ
かすみ「ええ!?なんで泣くんですか!」
せつ菜「かすみさん……、頑張りましたね!」ダキッ
かすみ「うわああっ!?きゅ、急に抱きつかないでください……!」
かすみ(顔、顔が近いです!)
かすみ「生徒会長がこんな所で、ダメですよ!」
せつ菜「ごめんなさい!でも本当に良かったですね、あの小テストから…」
かすみ「それは本当に…ありがとうございました」
せつ菜「やっぱり…かすみさんは頑張れる人です。すごいです」ナデナデ
かすみ「へ……///ちょ、ちょっと撫でないでくださいよ…」
せつ菜「駄目でしたか?」
かすみ「う、だって恥ずかしい…じゃなくて、子ども扱いしないでください!」
せつ菜「でもかすみさん、なんだか撫でやすいです」
かすみ「かすみんの方が背高いんですからね!一センチも!」
せつ菜「そうですけど…。あ!鍵を返さないと。待っていてくれますか?一緒に帰りましょう」
かすみ「わ、分かりました」
かすみ「ふぅ……」
かすみ(まさか抱きつかれるとは思いませんでした…)
かすみ(ああしてるとせつ菜先輩っぽいですね。いや、同じ人ですけど)
かすみ「まあ、あんなに喜んでくれるなら良かった…のかな?」
かすみ「……えへへ///」
〜また数日後〜
かすみ「果林先輩、新作のコッペパンをどうぞ!」
果林「あら、ありがとう。半分だけ頂くわね?」
かすみ「そう言うと思って、ヘルシーなサラダコッペパンにしてみました〜」
果林「美味しいわねぇ。かすみちゃん、最近調子良さそうね」
かすみ「そりゃもう!テストも終わりましたし、可愛さ磨きに全力ですよー!」
果林「絶好調といえば…あっちも気合入ってるわね」
見つめる先にはせつ菜先輩。ダンスの練習真っ最中です。
かすみ「先輩のライブは明日ですからね。果林先輩、モデルの仕事とか入れてないんですか?」
果林「入れてないわよ。しっかり現場で見させてもらうわ、かすみちゃんもでしょう?」
かすみ「もちろん!ばっちり技を盗んでみせますよー」
果林「握手会もやるのは少し心配だけど」
かすみ「せつ菜先輩は熱心なファンも多そうですしね……」
果林「まあ、学校内だから大丈夫でしょうけど」
果林「ところで…お礼はもう渡したの?」
かすみ「うっ、まだですけど」
果林「意外ね。すぐ渡すかと思ったけど」
かすみ「タイミングを逃してるだけです!明日のライブの後に渡しますよ!」
勉強を見てくれたお礼にちょっとしたプレゼントを渡そうと、果林先輩にアドバイスをもらったのが3日前。
同好会で毎日会っているのに、いざ渡そうとすると周りの目が気になって渡せていない。
まあ、明日ライブの後なら二人きりになれるはずです!
かすみ(ずっと持ってるのも変だし、さっさと渡しちゃおう)
〜翌日〜
侑「せつ菜ちゃん、準備はいい?」
せつ菜「バッチリです!!来てくれた人達全員を楽しませてみせます!」
侑「気合い十分だね!私も本当に楽しみだよー!」
かすみ「もう、侑先輩も運営側ですからね!」
せつ菜「お二人も観ていてくださいね!」
かすみ「先輩……頑張ってくださいね」
せつ菜「はいっ!では……行ってきますね!!」
キャー!セツナチャーン!
せつ菜「みなさーん!!いきますよ!」
せつ菜「CHASE!!」
ファン「凄かったねー!」ワイワイ
侑「握手会に参加される方はこちらからどうぞー!」
かすみ「……」
ライブは大成功。
会場の盛り上がりは最高潮で、みんな興奮ぎみに感想を話している。
かすみ(やっぱりすごいなぁ……せつ菜先輩は)
だってほら、まだ余韻が残ってるもん。
かすみ「握手会、ちょっと覗いてみようかな……」
せつ菜「来てくださってありがとうございました!」
ファン1「せ、せつ菜ちゃんかわいい……」
ファン2「今日のライブもすっごく凄かったです!」
かすみ(どれどれ……)
かすみ「げっ!?何ですかあれ!ちょっと侑先輩!」
侑「あれ、かすみちゃん……うわぁ!?な、なに?」
かすみ「侑先輩!何ですかあの衣装!!」
侑「あぁ、あれ?新曲だからあれでやりたいってせつ菜ちゃんの希望で」
かすみ「なんでDIVE!の衣装なんですか!?ファンとあんな近くで話すんですよ、まずいですよ!」
侑「学内イベントでうちの生徒しか来ないし……いや私もね?ちょっとお腹とか脚とかに目はいったけど、握手だけだから!大丈夫だよ!」
かすみ「変なことまで暴露しないでください……」
侑「でもほら、テーブル挟んでるし……」
ファン3「わたし今度試合があって、このライブに勇気を貰えたんです……あの、もう少しだけ応援してもらえませんかっ!」
せつ菜「分かりました!私の所に来てくださって、とっても嬉しいです!剣道部ですよね、頑張ってください!」ガバッ
ファン3「!?」
ゆうかす「!?!?」
侑「だ、抱きついてる!?ま、待ってせつ菜ちゃん!それ以上はぁ!!」ダダッ
かすみ「な、なっ……」ワナワナ
〜握手会終了後〜
かすみ(全く……なんであの人は!あんなに危なっかしいんでしょうか!!)
思い出すのは、良い笑顔でファンの子に抱きついた先輩。
かすみ(あと、相手の真っ赤な顔!まったく、ファンに抱きつくとか)
かすみ(せつ菜先輩は、誰にでもあんな事するんですね……)
かすみ「もうっ、やめやめ!」
せつ菜「お、お待たせしました……かすみさん?」
かすみ「……お疲れ様です」
せつ菜「先程はすみませんでした。ついテンションが上がってしまって」
かすみ「いえ、まあファンの子は大変そうでしたけど……」
かすみ(魂抜けてましたけど…大丈夫だったんですかねあれ)
かすみ「せつ菜先輩も気をつけてくださいね!アイドルは、ファンに近づき過ぎてもダメなんですから!」
かすみ(握手会のこと、月曜に先輩達に怒られちゃえばいいんです!)
せつ菜「おっしゃる通りです。侑さんにも心配されました……」
かすみ「はぁ……」
せつ菜「うぅ、あのかすみさん?何か用事があって待っていてくれたのでは」
かすみ「あ!そうでしたね。あの…これ」
せつ菜「……?」
かすみ「ほ、ほら!開けてみてくださいよ」
せつ菜「わあ!これ、メガネケースですか?」
かすみ「あげます。お礼です、この前の……テストの時の」
せつ菜「お礼…してくれるなんて」
かすみ「テストを乗り切れたのはせつ菜先輩、いえ菜々先輩のおかげですから!」
せつ菜「いえ、私がかすみさんの助けになるのは当然のことですよ」
かすみ「同好会の仲間だからですか?」
せつ菜「それも勿論ありますが……。私は、皆さんに迷惑をかけてしまいましたから」
かすみ「……迷惑?」
せつ菜「私は今、同好会が本当に楽しいんです。ですが……それを一度失くそうとしたのも、私です」
かすみ「あ……」
せつ菜「私を迎えてくれた皆さんにも、ここを守ってくれたかすみさんにも恩返しがしたいんです」
かすみ「それで……」
せつ菜「私が力になれることがあるのなら、とても嬉しいんです」
かすみ「それで……かすみんを助けてくれたんですか?」
せつ菜「ええ!これからもどんどん頼ってくださいね」
かすみ「……」
かすみ(そっか、別に……)
かすみ(困ってるのが他のメンバーでも、助けてたんだよね)
かすみ「そんなの、当たり前か……」
せつ菜「……かすみさん?」
かすみ「それを渡そうと思ってただけなので……今日は、帰ります」
せつ菜「あの、何か……」
せつ菜先輩が何か言っていたけど、適当な返事しかできなかった。
〜次の日、ファミレス〜
しずく「せつ菜さん、すごい怒られてたね……」
璃奈「先輩達、怖かった。でもライブはすごい評判だったね、かっこよかったって」
かすみ「……」
かすみ「……せつ菜先輩がかっこいい?」
璃奈「うん。さっきもファンの人に言われてた」
しずく「今日すごかったもんね!ファンレターもあんなにたくさん…」
かすみ「……」
かすみ「……そんな事ないと思うけど」ボソッ
璃奈「え?」
かすみ「せつ菜先輩がかっこよかった場面、今までにあった?」
しずく「いや…?え、普通にいっぱいあると思うけど…」
かすみ「ふーん。…あ、ごめん。かすみんちょっとドリンクバー行ってくるね」
しずりな「「……」」
しずく「えぇ……何あれ?」
璃奈「かすみちゃん…どうしたんだろう?」
しずく「せつ菜さんと喧嘩したとか」
璃奈「でも、さっきの練習では普通にしゃべってた。新しいイタズラ?」
しずく「私達に悪口言ういたずらって意味あるかな…それに悪戯にしてはテンションが低かったような」
璃奈「帰ってきたら聞いてみよう」
かすみ「おまたせー♪じゃーん!見てみて、かすみん特製、とってもかわいいアイスオレンジティーを…」
璃奈「せつ菜さんと何かあったの?」
しずく(直球でいった!)
かすみ「えっ!?あー、さっきのは……」
璃奈「?」
かすみ「や、やっぱなし!イタズラのつもりだったけどやめた!」
しずく「でもかすみさん、さっきの感じは絶対なにか…」
かすみ「何もないから!しず子もりな子も、この話はここでおしまい!」
しずく「ええ…」
((絶対何かあったでしょ……))
しずく「絶対何かあったよね?」
璃奈「うん。バレバレ」
かすみ「ぐっ……!違うの、何もないのが問題というか……」
かすみ「かすみんが勝手に悩んでるだけ、っていうか」