ーー部室
にこ「はい、全員注目!」ビシッ
穂乃果「わっ、どうしたのにこちゃん?」
凛「なんかテンション高いにゃ」
にこ「ふふ、テンションも上がるってもんよ。なんとーー」
にこ「A-RISEとの合同ライブが決まったわよ!」
花陽「あ、アライズとライブ!? それってまさか来月UTXが主催で行われるとネットで専らの噂になってるスクールアイドルの合同ライブのこと!?」ガタッ
真姫「ちょ、落ち着きなさい花陽!」
花陽「はっ! ご、ごめん。あまりのことに驚いちゃって」
にこ「さすが花陽は情報が早いわねー。その通り! その合同ライブにμ’sも招待されたってわけよ」
穂乃果「おー、何だか凄そうだね」
花陽「! 凄いなんてもんじゃな…ふがっ」
真姫「いーから、花陽はちょっと座ってなさい」
ことり「あ、丁度お茶が入ったよ。かよちゃん、どーぞ」コトッ
花陽「あ、ありがとうことりちゃん…あ、美味しい」
ことり「ほんと? 良かった〜」
穂乃果「ことりちゃん、私も飲みたいです!」
ことり「皆の分も淹れるから、少々お待ちを〜」
真姫「それで、にこちゃん続きは?」
にこ「今勢いに乗ってるスクールアイドルが一堂に会する訳。いつも通りだと周りの迫力に呑まれてしまうんじゃないかと思うのよ」
絵里「なるほどね。それで急にミーティングしようなんて言い出したのね」
希「つまり、次のライブに向けて皆で話し合おうってこと?」
にこ「そういうこと。言わば今回のミーティングは…」カキカキ
『第1回音ノ木坂学院アイドル研究部 スクールアイドル合同ライブ対策会議』
にこ「こういうことよ!」ババンッ
穂乃果・凛「「おお〜」」パチパチパチ
にこ「どう? 事の大きさが分かった?」
海未「大事な会議だとは理解できましたが、第一回って要りますか、それ?」
真姫「あ、それ私も思った。二回目は多分ないでしょ、削って良くない?」
にこ「どうでも良い所に食いつくわねあんたら…」
絵里「それなら音ノ木坂学院も消していいんじゃない?」
希「アイドル研究部も分かりきってるから要らない気がするね」
にこ「……」ケシケシケシ
『スクールアイドル合同ライブ対策会議』
にこ「はい、始めるわよ!」
ことり「あ、にこちゃん。お茶どうぞ」コトッ
にこ「あ、うん。ありがと」
穂乃果「んー、でも対策会議って言っても、何を話し合えばいいんだろ?」
海未「そうですね、いつも通りであれば曲順や衣装などを決めるところですが」
ことり「今回のライブはいつもと同じじゃないんだもんね。何から決めればいいんだろう? はい、海未ちゃん、穂乃果ちゃん」コトッ
穂乃果・海未「「ありがとう(ございます)!」」
真姫「ことり、皆にお茶配るの面倒だろうからお盆ちょうだい。こっちに回しちゃうわ」
ことり「わ、ありがと真姫ちゃん」
真姫「はい、希、エリー」コトッ
希「お、ありがと。真姫ちゃんは優しいなぁ」
真姫「ふつーでしょこれくらい」
希「んふふ」
真姫「何がんふふよ」
絵里「まずはやっぱり曲じゃない? そこを決めないと話が進まないと思うし」
希「そうやねー。にこっち、ウチらの出番ってどれくらい取れそうなん?」
にこ「1グループ大体20分が目安って聞いてるわ。細かくは後から調整するそうよ」
希「それだと3〜4曲くらいは考えておいた方が良さそうやね」
絵里「3〜4曲ね」ウーン…
凛「凛あれがいいなー、ノーブラ! 絶対盛り上がるにゃ。かよちんは何がいい?」
花陽「私は…うーん…………今回出場するスクールアイドルの曲の傾向とμ‘sの曲とのバランスを考えると…」ブツブツ…
凛「お、おーい、かよちーん?」
穂乃果「それなら私はスタダがいいなー」
海未「START:DASH!!ですか?」
穂乃果「うん、スタダ」
海未「変な略し方しないでください」
穂乃果「え、変かなぁ? ファンの人たちも使ってない?」
海未「START:DASH!!くらい略して言う必要もないでしょう」
穂乃果「うわー、海未ちゃん細かい」
海未「細かくありません。穂乃果が大雑把なんです」
穂乃果「そっかなぁ」
ことり「私も使うかなぁ、スタダ」
海未「なっ!?」
穂乃果「ほらー、海未ちゃんが細かいんだよぅ」
海未「若者の言葉の乱れはここまで進んでいましたか…」
穂乃果「同い年でしょ私達!」
真姫「まぁ、私たちの曲って確かに略して呼ばれる事が多い気はするわね。凛がさっき言ったやつとか」
凛「ノーブラのこと?」
真姫「……そうよ」
凛「略さないの?」
真姫「略さないわよ」
凛「言わないの? ノーブラ」
真姫「No brand girlsね」
凛「ノーブラだね」
真姫「……」
凛「真姫ちゃんはノーブラなの?」
ベシッ
凛「痛いにゃ…」
真姫「イミワカンナイ絡み方するんじゃないわよ」
凛「希ちゃーん、真姫ちゃんがぶったー」
希「おー、よしよし」
真姫「自業自得よ」
花陽「……インパクトを考えると1曲目に……いや、意外性を狙うならもっと別の選択肢が…」ブツブツ
絵里「ちょ、ちょっと皆ストップストップ。曲をどうするかって話でしょう?」
にこ「そうよ、あんた達。耳の穴かっぽじってよーく聞きなさい」
絵里「にこ。部長としてビシッとお願いね」
にこ「トーゼン。曲はーー『にこぷり女子道』に決まってんでしょ」
絵里「にこ!?」
穂乃果「にこちゃんずるーい! それソロ曲じゃん!」
にこ「うるさいわね〜、μ’s全員で歌えば問題ないでしょ?」
凛「それはちょっと寒くないかにゃー!」
にこ「寒いですってぇ!?」
花陽「ソロ曲…! そういうのもあるのか……!」
ことり「それがアリならことりは海未ちゃんとアネモネハートを…」
海未「ことり、枠は3〜4曲ですよ? さすがに無理だと思います」
ことり「海未ちゃんがつれない…」シュン
真姫「大体合同ライブでソロだのデュエットだの披露してどうするのよ」
希「意外と話題にはなるんやない?」
絵里「はいはいストップストップストーーップ! 話し合ってちゃラチが明かないから、皆自分が良いと思う曲を書いてこの箱に入れて」トンッ
絵里「ただし、ソロとかデュエットはなしね。今回はあくまでμ’sというグループとして合同ライブに参加するんだから」
絵里「全体曲の中から希望するものを書いて、その結果を見て改めて話し合う。これでいきましょう」
オォー
穂乃果「さすが絵里ちゃん! 穂乃果達に出来ないことを平然とやってのけるッ」
凛「そこにシビれるッ、あこがれるゥ!」
絵里「はいはい、ありがと。さ、二人も書いて」
穂乃果「スタダ、と」カキカキ
凛「ノーブラ、と」カキカキ
真姫「書くのはいいけど、箱に入れる必要あるの? せーので見せあえばいいんじゃない?」
絵里「だって同時に見せ合いなんてしたらまた話が脱線していきそうじゃない」
μ’sの会議の脱線してなかなか話が進まない感じ好き
希「ふふ、人数が多いとどうしても賑やかになるものやん?」
絵里「まぁ、皆で集まるといつもこうだものね」
真姫「希、ずいぶん嬉しそうね」
希「うん、真姫ちゃんもそうやろ?」
真姫「は、はぁ?」
絵里「あら、違うの?」
真姫「な、なによエリーまで」
希・絵里「「…」」ジーッ
真姫「……違わない、けど」ボソッ
希「はい、ごちそうさま」
絵里「いただきましたー」
真姫「あなた達ねぇ〜…!」
にこ「まったく、なにをいちゃいちゃしてるのよ」
真姫「いちゃいちゃなんてしてませんけど!?」
にこ「ていうか花陽? あんたまだ考えてるの? 意見の一つに過ぎないんだから早く書いちゃいなさいよ」
花陽「うーん……でもどの曲も捨てがたいし、どの曲も大好きだし……海未ちゃんと真姫ちゃんの思いがこもった曲ばかりだし…」
真姫「花陽…」
海未「花陽…」
ことり「かよちゃんは良い子だね〜、なでなでしたくなっちゃう」ナデナデ
花陽「わわっ、ことりちゃん」
海未「同感です。花陽は天の使いです」ナデナデ
花陽「う、海未ちゃんも?」
真姫「…」ナデナデ
花陽「真姫ちゃんまで!?」
凛「あー、皆してかよちんをなでなでしてずるいにゃ! 凛もするー!」
花陽「ぴゃぁぁぁぁ」
絵里「…」ウズッ
希「絵里ち、ストップ。混ざりたいのは分かるけど」
絵里「え!?」
にこ「あんたまで参加したら収拾がつかなくなるわよ」
絵里「…うぅ、私も花陽のほっぺたぷにぷにしたい…」
希「目的それなん?」
にこ「どさくさに紛れて何しようとしてんのよ」
穂乃果「ふふ、なんだか平和だね」ズズー
にこ「あんたは何をのんびりお茶飲んでるのよ」
穂乃果「あ、茶柱だ」
にこ「あのねぇ、あんた一応リーダーなんだから少しは統率力を見せなさいよ」
穂乃果「うわっ、ひどいっ。一応って。それを言うならにこちゃんも」
にこ「なによ」
穂乃果「うーん…名ばかり部長?」
にこ「ぁあん!? ほっぺつねるわよ!?」
穂乃果「ひぃっ、冗談だよー!」
穂乃果「分かったよ、私がμ’sのリーダーだという所を見せるよ!」
にこ「おっ」
穂乃果「コホン。ことりちゃん、海未ちゃん、真姫ちゃん、凛ちゃん!」
ことり「ん?」ナデナデ
海未「む?」ナデナデ
真姫「え?」ナデナデ
凛「にゃ?」ギュー
花陽「ダレカタスケテ…」
穂乃果「そんなにいっぺんになでなでしたらダメでしょ! 花陽ちゃんはペットじゃないんだよ!?」
ことうみまきりん「!!」
穂乃果「同じμ‘sのメンバー……仲間でしょ!?」
花陽「ほ、穂乃果ちゃん…」
穂乃果「だったら一人一人、もっと気持ちを込めてなでるべきなんじゃないの!?」
ことうみまきりん「……」
ことうみまきりん「……?」
花陽「えぇ…」
海未「言葉の意味は分かりませんが…確かに四人同時はよろしくありませんね」
真姫「そうね。花陽の髪もくしゃくしゃになっちゃって、悪かったわね」
ことり「任せて、私が整えるよ〜」
花陽「あ、ありがとうことりちゃん」
凛「凛は髪が乱れたかよちんも好きだよ?」
絵里「じゃあ花陽を愛でるのは一人一人順番こね。最初は私から」
希「ぶれないなぁ絵里ち」
穂乃果「うんうん、仲良きことは…嬉しいな?だね!」
海未「美しきかな、かと」
穂乃果「あー、それそれ」
穂乃果「いたぁっ! 何すんのさにこちゃん!」
にこ「どこでリーダーシップ発揮してんのよあほのか!」
穂乃果「あほのか!?」
にこ「花陽のなでなではどうでもいーの! 曲を決めるのが優先でしょうが!」
にこ「それから絵里! 真姫! 海未! あんたらまで一緒になって乗るんじゃないわよ! 話が進まないでしょ!」
凛「あれ、凛達は?」
希「ツッコミ側にはカウントされてないみたいやね」
ことり「かよちゃん、髪型ちょっといじってもいい?」
花陽「えぇ? は、恥ずかしいよぉ…」
にこ「はぁ…はぁ…はぁ…」
絵里「だ、大丈夫、にこ?」
にこ「大丈夫じゃないわよ…酸素缶が欲しいわ」
絵里「そんなに? でも、さすがにこね。見事な軌道修正だったわ」
にこ「あんたが乗らなきゃ私がここまで声張る事もなかったけどね」
絵里「うっ…し、仕方ないじゃない。だって花陽よ?」
海未「ええ、花陽ですから」
真姫「花陽だからね」
にこ「花陽に狂い過ぎなのよあんた達は…」
にこ「ったく、いい? 今回のライブはね、最初に言った通り、今勢いに乗ってるスクールアイドルが集結するの」
にこ「そこで私達だけ平凡なパフォーマンスを見せてみなさい。μ’sのファンはきっと失望するわ」
絵里「さすがにそれは言い過ぎなんじゃない?」
にこ「いーや。ワンマンライブと違ってね、合同のライブはどうしても周りと比較されがちなものなのよ」
ことり「そういうものなのかなぁ?」イジイジ
花陽「うん。特定のグループのファンだけが集まる訳じゃないから……あ、あの、ことりちゃん?」
ことり「うん?」イジイジ
花陽「えっと、花陽の髪…」
ことり「あ、まだ動いちゃダメだよかよちゃん。もう少しで……出来た!」
ことり「じゃーん! 穂乃果ちゃん風サイドテールかよちゃんだよ〜」
花陽「え、えぇぇ?」ホノパナァ~
穂乃果「おぉっ、流石ことりちゃん、いいね! 花陽ちゃんとお揃いだー」
凛「かよちん似合ってるよ! 可愛いにゃー」
花陽「ぁぅ……なんだか恥ずかしいよぉ」
絵里「ハラショー……ハラショーよことり!」
真姫「……ま、まぁ悪くないんじゃない?」クルクル
海未「ことり、あなたは最高です!」
ことり「えへへ〜」
キャッキャッウフフ
希「……あ、あーあー、皆ー? にこっちが何か言いたそうやんな?」
「「「あ」」」
にこ「……コホンッ」
ことり「ご、ごめんねにこちゃん! 続けて続けて?」
にこ「とにかく! 今回のライブは特別なの!」
にこ「参加している他のグループと比較されるであろう厳しいライブ…いや、まさしくスクールアイドル同士の闘い!」
にこ「そして、そういう状況の中でもファンの期待に応える…期待を上回る結果を見せる!」
にこ「それこそが私達が目指すべき頂き……本物のスクールアイドルってやつなのよ!」
「「「おぉ〜」」」
花陽「に、にこちゃん、かっこいいです……!」パチパチパチ
にこ「ふふん」
希「他のグループのファンにもμ’sをアピール出来る良い機会でもある、か」
にこ「そうよ! だからあんた達、もっと気合い入れてライブの対策を…」
希「あ、もしかしてそれで自分のソロ曲提案したん?」
にこ「…」ギクッ
真姫「一人だけソロ歌って目立ちたかった、と」
にこ「……」
絵里「にこ……」
希「にこっち……」
にこ「えーい、憐れむような目でこっち見るんじゃないわよ!」
海未「……本物のスクールアイドル、ですか」ボソッ
絵里「? 海未?」
海未「目指すべき頂き……高み……」ブツブツ
真姫「な、何ぶつぶつ言ってるのよ…?」
海未「……ふふ」ニヤッ
花陽「!? う、海未ちゃん?」
海未「ふふふふふふ、何と心を奮わせる響きでしょうか…!」ゴォォォォ!
絵里・真姫・花陽(なんか変なスイッチが入ったー!?)
穂乃果「こ、この海未ちゃんは…!」
絵里「知っているの穂乃果!?」
ことり「間違いない…『山頂アタックモード!』」
真姫「知っているのことり!?」
凛「海未ちゃんが困難や逆境を登山の如く乗り越えんとした時に陥る高揚状態……! こうなった海未ちゃんは誰にも止められないにゃ!」
花陽「し、知っているの凛ちゃん!?」
希「ふふ、この海未ちゃんと一緒に何度地獄に付き合ったことか……!」
にこ「ノリ良すぎでしょあんたら…」
海未「申し訳ありません、にこ。少し気が緩んでいたようです」キラキラ
にこ「わ、分かればいいけど、大丈夫? なんか目がキラキラしてるんだけど…」
海未「任せて下さい。ここまであなたに頼り切りでした。ここからは私が音頭を取りましょう」キラキラ
海未「そして皆で辿り着きましょう。エベレストよりも高い、スクールアイドルの頂きへ!」キラキラ
にこ「あんた、なんか怖いんだけど…」
海未「さぁ! では早速ランニング10kmです!」キラキラ
にこ「何でよ!?」
海未「根の弱い樹に美しい花は咲きません。まずは基礎体力から鍛え直しましょう!」
にこ「話の流れぶった切るにも程があるっつーの!」
絵里「そ、そうよ海未。まずはこの箱に皆の曲の意見を集めるって話だったでしょ?」
穂乃果「あっ、そういえばそういう話だったね」
凛「すっかり忘れてたにゃ」
真姫「大体ね、ライブは来月でしょ? 今から基礎体力つけようったってたかが知れてるわ」
海未「そんなことはありません!」クワッ
真姫「ひゃ!?」
海未「確かに普通ならこの短期間で体力の向上など望めないでしょう…しかし!」
海未「それはあくまで普通ならの話! 限界を越えるという強い心意気さえあれば、不可能はないのです!」メラメラ
花陽「あ、暑い…海未ちゃんから炎が見えます…!」
凛「情熱が変な方向に向いちゃってるにゃ!」
真姫「……うみこわい」グスッ
ことり「真姫ちゃん、よしよし」
海未「さ、話は決まりましたね!?」
穂乃果「決まってないよ!!」
海未「メニューは……ランニング10kmの後に各種筋トレからの遠泳……ふふ、血湧き肉踊るとはこのことですね」キラキラ
にこ「聞く耳持たないわね…」
絵里「どこを泳ぐつもりなのかしら…」
海未「さぁ、ぐずぐずしている暇はありません、出発しましょう!」
にこ「くっ、この情熱バカをどうにかしないと会議にならないわ。どうにかしなさい幼馴染ズ!」
穂乃果「そ、そうは言われましても…」
ことり「こういう時の海未ちゃん、止めようがないというか…」ナデナデ
真姫「……グスッ」
希「ふむ。どうやらーー」
希「ウチの出番のようだな」
凛「の、希ちゃん!? いやーー希隊長!?」
希「海未ちゃん(ターゲット)を仕留めるには精神を素に戻す必要がある。そのためには精神的なショックを与えるのが一番手っ取り早い」
凛「精神的なショックを…」ハッ
凛「ま、まさか希隊長!」
希「…」ニッ
凛「だ、ダメです希隊長! 海未ちゃんにアレを使えば、あなたは…!」
希「うろたえるな凛二等兵!」
凛「!!」
希「貴様は軍人だろう。いついかなる時にも毅然とした態度を崩すんじゃない」
凛「のぞみ、隊長ぉ…」
希「馬鹿者。涙を見せるなどもってのほかだ」
凛「わ、私も行くであります、希隊長!」
希「なにぃ!?」
凛「隊長にだけ重荷を背負わせるなど…!」
希「ばかものっ!」
凛「!?」
希「いいか、これは上官命令だ。凛二等兵……」
希「貴様は必ず、生きて帰還しろ……!」
凛「隊長……希隊長ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
希「おおぉぉぉぉぉ! 行くでぇぇぇぇぇ海未ちゃん!」
海未「む?」
ワシワシィィィィィィィィ!
キャァァァァァァァァァ!?
バチーン
凛「希隊長ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
海未「……失礼しました。少し冷静さを欠いていたようです」
希「やれやれ、海未ちゃんも世話が焼けるやんな」ヒリヒリ
凛「犠牲は大きかった……でも得るものも大きい闘いだったね」
海未「うぅ、私は辱められただけです…」
希「海未ちゃんのはちょっとわしわし甲斐がなかったかな?」
海未「もみじ、もう一枚ご所望ですか?」ニコニコ
希「じ、冗談やーん」
凛「ともかくこれで一件落着、だね。ねー、みんな?」
絵里「よし、と。皆の希望の曲、これで全部書き写せたわね」キュッキュッ
真姫「後はこの中から選んでいくだけ。でも、なかなか難しいわね」
穂乃果「3〜4曲にしないと何だよね? うーん、どれがいいのやら」
花陽「ライブに参加する他のグループがどういう曲で来るのか考慮するのも大事だと思います。通して見た時に曲の印象が変わると思うから」
ことり「なるほど、色々と考えないといけないことが多そうだね」
にこ「その辺も含めて、どうすればμ‘sを印象づけられるか考えていかなくちゃね」
凛「あれー!? いつの間にか会議が進んでるにゃー!」
凛「もー、凛達放っといて勝手に進めちゃうなんて酷いよー」
ことり「あ、コント終わった?」
希「おおぅ、ことりちゃん、意外と手厳しい…」
絵里「ごめんね。なんか海未がそっちに気を取られてたから、その……ね?」
真姫「エサに使わせて貰ったわ」
絵里「ちょ、真姫!? もうちょっとオブラートに…」
凛「うぅ、凛達とは遊びだったんだね…」
希「凛ちゃん、それ使い方だいぶ間違えてる」
にこ「てか長いのよあんたらの寸劇」
希「えー、元はと言えばにこっちが海未ちゃんを焚きつけたんやん?」
にこ「焚きつけとらんわ。海未が勝手に燃え上がったんでしょうが」
海未「お見苦しい姿をお見せしました…」
ことり「落ち込んでる海未ちゃんかわいいっ」ボソッ
穂乃果「ことりちゃん何か言った?」
ことり「ナンデモナイノヨナンデモ」
花陽「で、でもさっき海未ちゃんが言ってたように、ライブに向けて基礎体力を磨くのも大事だと思うよ?」
海未「花陽の優しさが五臓六腑に染み渡ります…」
絵里「うん、練習は今まで以上に頑張らなきゃね。でも、今はこっちね」トントン
海未「曲、ですね。あれ、ホワイトボードいっぱいに書いてありますが」
花陽「うぅ、ごめん、どうしても一曲に絞りきれなくて…」
穂乃果「私も後から色々書き足したよ!」
海未「そ、そうですか」
絵里「まぁ私も一人一曲って言ったわけじゃないから……うん」
希「……ん? 全体曲がほぼ全部書いてあるような…これだと紙に書いた意味が」
絵里「ごほんっ! さぁ、海未達も参加して、話を詰めていきましょう!」
希「絵里ち……」
凛「えっと、ノーブラスタダそれ僕僕今スノハレ夏色ワンダラダンスタぼららら……(略)……ホントだー、大体書いてある気がするにゃ」
海未「……待って下さい、凛。今なんと?」
凛「え? 曲名読み上げただけだけど」
海未「いやいやいや! 変な呪文みたいになってたじゃないですか!」
凛「えー、そんなことないよ」
穂乃果「あはは、ヤサイマシマシニンニクアブラカラメみたいだったね」
凛「もー、穂乃果ちゃん。ラーメン食べたくなっちゃうからやめるにゃー」
海未「ま、まさか……今のも曲の略称ですか!?」
凛「うん、そーだよ」
海未「……で、ではこの『ぼららら』とは?」
穂乃果「『僕らのLIVE 君とのLIFE』だよ!」
海未「くっ……! 認められません、何でもかんでも略すなど、曲名に込められた思いが軽んじられるような……!」
絵里「海未ぃ! クールよ、クールになりなさい!」
海未「はっ! す、すいません…」
真姫「曲の呼び方なんて何でもいいでしょ? 早く選びましょうよ」
ことり「真姫ちゃんは気にならないんだ?」
真姫「別に。呼び方で曲が変わる訳じゃないし」
凛「まきちん」
真姫「は?」
凛「真姫ちゃんをかよちんみたいに呼んでみたにゃ」
花陽「え、えぇ〜……?」
真姫「さ、早く選びましょうよ」
凛「希ちゃーん! 真姫ちゃんが冷たいよー」
希「おぉ、よしよし。マキチ、スルーは良くないやん?」
真姫「……何よマキチって」
希「エリチみたいに呼んでみた!」
真姫「あのね……」
希「あ、真姫っちの方が良かった?」
穂乃果「おお、いいね真姫っち!」
ことり「可愛いあだ名かも!」
真姫「……」
海未「真姫! クールです! クールに乗り切るんです!」
真姫「ぐっ……わ、分かってるわよ。海未の気持ち、少し理解できたかも」
海未「そうでしょう」
にこ「……」
絵里「もう、皆! そろそろ真面目に会議を……」
バンッッッ!!
絵里「ひゃっ!?」
花陽「ぴゃぁっ!?」
穂乃果「わっ!?」
にこ「……いい加減にしなさいよあんたら」
にこ「いつまでも関係ない話をぐちぐちと……次のライブがどういうライブか、ちゃんと説明したわよね?」
にこ「全員、もっとスクールアイドルとしての自覚を持ちなさい!」グスッ
ことり(にこちゃん、涙目になってる……そうだよ、私、にこちゃんに嫌な役を任せっきりで…)
真姫(反省しないといけないわね。μ‘s全体の問題なのに、私、どこか人ごとみたいに…)
凛(うぅ、凛達、ちょっとふざけ過ぎちゃったかな…)
海未(申し開きの言葉もありません…)
希「……ごめん、にこっち」
「ごめん」「ごめんね」「申し訳ないです」「ごめんなさい」
にこ「……ん。分かればよろしい」グスッ
にこ(いったぁぁぁぁぁぁ! 勢いよく机叩き過ぎたぁぁぁぁぁ!)ジンジン
絵里「それじゃあ改めて、会議を再開しましょうか」グスッ
花陽(あ、絵里ちゃんもちょっと涙目になってる…)
穂乃果(恐かったんだね絵里ちゃん)
絵里「にこが言ってくれたみたいに、皆もっとスクールアイドルとしての自覚を持って話し合いましょう。もちろん私も含めて、ね」ニコッ
「「「おー!」」」
穂乃果「よーし、気合い入れて曲決めよう! やっぱり最初の曲は盛り上がる曲がいいよね!」
凛「賛成! ダンスが激しい曲にしようよ!」
真姫「最初っからそんなに飛ばしたら後半バテるんじゃない? いつもとは環境も違うんだし」
海未「確かに、普段とは違ったプレッシャーが掛かるとは思います。体力もより消耗するのではないでしょうか」
絵里「ええ。最初はゆったりした曲からの方が無難かもしれないわね」
ことり「私もそれに賛成かな?」
希「そうやね、まずは様子見から入るのもアリか」
花陽「う、うーん……でも」
にこ(よしよし、ようやく話が逸れなくなったわね)
花陽「私は激しめの曲がいいと思う」
真姫「!……意外。花陽はこっち派かと思ったわ」
海未「ええ。少し驚きました」
凛「凛もちょっとびっくりしたにゃ…」
希「何か理由があるん? 花陽ちゃん」
花陽「う、うん。やっぱり一曲目の印象って大きいと思うから、合同ライブでお客さんの記憶に残るようにするには激しめの曲がいいのかなって。自分がライブに行った時に思ったことなんだけど…」
穂乃果「おお、スクールアイドルに詳しい花陽ちゃんならでは!」
ことり「うん、信頼できる意見だよね」
絵里「なるほど。安全策を取るかインパクトを取るか……ね」
にこ(うんうん、その調子その調子)
穂乃果「ならやっぱりインパクトだよ、インパクト!」
凛「ぎゅーんと踊って、わーっと盛り上げるにゃー!」
真姫「待って。花陽の言うことも一理あるけど、合同ライブなのよ? 失敗した時のことも考えないと」
海未「披露できるのは3〜4曲…1曲目を失敗するとかなり後に響きますね」
花陽「うっ……や、やっぱりそうだよね」
穂乃果「いやいや、挑戦あるのみだよ! 花陽ちゃんに一票!」
凛「凛もー!」
希「難しいなぁ、どっちが正解なんやろ」
絵里「正解不正解というよりは、別の問題な気もするわね」
ことり「別の問題?」
にこ(いいじゃないいいじゃない、どんどん話し合いなさい)
絵里「ええ。性格的な問題というか、個人的な好みの話というか…」
ことり「好みかぁ〜。うーん……それなら私はゆったりめの曲かな?」
穂乃果「むむ、ことりちゃんも海未ちゃんもゆったり派かー」
真姫「ライブを成功させることを考えるなら、そうなるでしょ」
海未「ええ、今回はそれでーー」
穂乃果「ええ? ライブの成功って、見に来てくれた人が喜んでくれることだよね?」
海未「? もちろんそうですよ」
穂乃果「失敗しないように、間違えないようにって考えたライブで、見に来てくれた人を喜ばせられるのかなぁ」
真姫・海未「!」
花陽「な、なるほど……」
希「穂乃果ちゃん、たまに鋭い事言うなぁ」
凛「うん、たまにね」
穂乃果「むむっ?」
にこ(……)
真姫「穂乃果の言葉に納得しちゃうのは釈然としないけど、その通りかもね」
海未「そうですね、釈然としませんが」
穂乃果「ちょっと! みんな私を何だと思ってるの!」
凛「じゃあ最初は激しい曲だね、何がいいかなー」
絵里「待って凛。穂乃果の言うことも最もだとは思うんだけど、こういう風にも考えられないかしら」
凛「なに?」
絵里「いつも通りなら私達のライブはアップテンポな曲から始まるでしょ? だから今回あえてスローな曲から入るのも面白いんじゃないかって」
希「ふむふむ、見に来てくれた人らの意表を突く、って感じやね?」
絵里「そうそう、そんな感じ」
花陽「むむむ、確かに一度でも私達のライブに参戦した経験のある方なら「おっ」と思うかもしれません…絵里ちゃんの意見も捨てがたい……」
ことり「それならミスする可能性は低くなって、見る人の印象にも残せる、一石二鳥だね」
にこ(この子達……)