東京オリンピックまで、あと3年。いまだ諸問題は落ち着かないが、私たちはこのイベントについてどれほど知っているだろうか。
ジャーナリストの森田浩之氏がオリンピックの知られざる重要な側面を追い、「TOKYO 2020」を多角的に考えるための連続リポート。第3回は、「復興五輪」という言葉とその実態を問う。
第1回はこちら『東京オリンピック「経済効果予測」のオカシさを暴こう』
「復興五輪」と言われるが…
2020年東京オリンピックは、東日本大震災からの「復興五輪」と言われる。だが、この言葉は実際のところ、何を意味するのだろう。
よく言われるのは「スポーツの力で被災地を元気にする」「復興に向かう姿を世界に発信する」の2つだ。
しかし、どちらも被災地の人々にとっては微妙なポイントだ。
「元気を与える」「元気をもらう」は最近よく耳にする言葉だが、「元気」なるものに実体があるわけではない。「復興に向かう姿を発信する」も、「復興」という言葉の使われ方が軽いと感じる被災者には受け入れがたいだろう。
それでも東北の被災地は、2020年大会に一定の参加をすることになっている。一部競技が開催されるほか、聖火リレーの出発地点の候補にあがっているという(石巻市は以前から、聖火リレーの出発地点に立候補している)。
リレーの期間も、IOCの「100日以内」という規定を緩和する形で、大震災の起きた3月11日の直後から開始する133日案が浮上している。
だが、このように被災地を大会にからめることが復興五輪なのだろうか。
2020年大会を本当の意味で復興五輪と位置づけるにはどうすればいいのか。もしそれができないなら、いたずらに期待をあおる復興五輪という言葉は忘れたほうがいいのではないか……。
■「復興五輪だという意識は全くない」
これに対して、2020年大会はどうなのか。被災地を走る聖火ランナーの身体が復興五輪にからむ形で、なんらかのメッセージ性を持つようなことはあるのだろうか。
その点は疑わしい。河北新報(本社・仙台)が今年2月に被災地の42市町村長を対象に行ったアンケートの結果は、ある意味で衝撃的なものだった。
この調査によれば「オリンピックは復興に役立つか」との問いに、54%が「何とも言えない」を選択した。
「復興五輪の理念は明確だと思うか」という問いには、71%が「何とも言えない」と答えた。
「何とも言えない」は強い「NO」ではないものの、実名入りで報じられる記事のアンケートで7割に達したことには、首長たちの強い不満と戸惑いの表れと言えるだろう。
自由記述欄への回答も手厳しい。
〈(復興五輪という)位置付けは素晴らしいが、具体化の取り組みが見えない〉──阿部秀保・東松島市長(当時)
〈東京で開催するのは大歓迎だが、復興五輪だという意識は全くない〉──戸羽太・陸前高田市長
〈五輪は被災地だけで行われるものではない〉──戸田公明・大船渡市長
控えめに解釈しても、被災地の首長たちは復興五輪という言葉をまともに受け取っていない。東京オリンピックが開かれることで自分たちの自治体にプラスの要因があるなどとは、ほとんど信じていないように思える。
これが、2020年大会の復興五輪という言葉をめぐる意識なのだろう。
つづく
2017年7月28日 15時0分 現代ビジネス
http://news.livedoor.com/lite/article_detail/13398885/