最年少プロ棋士としてデビューから公式戦29連勝の新記録を打ち立てた中学3年の藤井聡太四段(15)の母裕子(ゆうこ)さん(47)がインタビューに応じ「聡ちゃんの好きなようにやってほしい。本人が強くなりたいと話すのでできる限り強い棋士に、みんなに愛される魅力的な人になってもらえれば」と心境を語った。
◆振り返る間なく
昨年十月にプロになり、最初の対局が十二月末。のんびりスタートしたと思ったら急に対局が増え、連勝中は慌ただしく。振り返る間もなくあれよあれよという感じでした。
本人は口にヘルペスができたり、目が腫れて「ごろごろする」と話したり。疲れていたんでしょう。体力がないと対局にならないので睡眠時間は確保してほしいです。別の棋士がする対局の中継を見て寝るのが遅くなることがあり「続きは朝にしたら」と言ってしまいます。でも、それでいいのか悩みます。
普段、午後四時半に学校から帰り、新聞を読んだり、おやつを食べたりし合間に対局をチェック。勉強との両立は大変そうですが、親がとやかく言って効果があるかというとそうでもない。本人の意思に任せています。
◆自ら考える子に
読み方の響きが気に入り、聡太と名付けました。思いを込めすぎない方がいいかなって。「こうなってほしい」ではなく、「自分でこうやったらいい」と思うように、絵本を読み聞かせ、たくさん話し掛けました。
幼稚園が伸び伸びとやらせてくれて「ハートバッグ」という画用紙の編み物を作り、二百個以上、持ち帰りました。立体パズルのキュボロも難しいのに複雑な形をいろいろ組み立てました。熱中すると止まりません。
◆好きにさせる
電車が好きで運転士になりたがっていました。五歳の夏に母がたまたま将棋盤を渡して、将棋が好きと分かりました。地元のお年寄りの将棋サークルで「子どもは来ちゃだめ」と言われ「早くおじいちゃんになりたい」と残念がっていました。
小学生の時に何げない会話をしていて「分かった」と叫ぶので何かと思ったら、頭の中で詰め将棋を解いていました。自分がふがいなくて負けると泣きじゃくり、私が代わりに三位の賞状を受け取ったこともあります。
◆いい出会いで育つ
どんくさいというのが家庭での評価。小学六年の時、宿泊先に服を全部忘れてきました。今もよく傘をなくします。「何やってるの」ということが多く、すぱっと切れるタイプじゃないです。
母が「突然変異。あんたから生まれたのは信じられない」と笑いますが素質はあったと思います。師匠や周りの人とのいい出会いで、すくすく育ったんでしょう。偶然だけど、好きなことに巡り合えたのが大きかったと思います。
◇サラリーマン4人家族
<藤井四段の家族> サラリーマンの父と専業主婦の母はともに音楽が趣味。4歳年上の兄がいる。藤井四段は根っからの負けず嫌いで、家族でトランプやボードゲームをすると、自分が勝つまで続けていたという。愛知県瀬戸市の自宅の隣には母方の実家があり、祖父母が当初、将棋の手ほどきをした。
(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017073190140029.html
将棋で負け、頬にバツ印を書かれた小学1年ごろの藤井聡太四段(右から2人目)=家族提供