日本ハムの大谷翔平投手(23)が今季終了後にポスティングシステムを利用して米大リーグに挑戦する意思を固めていることが明らか
になったが、問題なのは、肝心のそのポスティングシステムだ。とかく批判が多く、大リーグ機構(MLB)側から改正の申し入れがあって、
現在、日本野球機構(NPB)との間で交渉中。改定ではNPB球団側が不利になる可能性があるため、「大谷特例」なども含めて水面下の
交渉が続けられている。大谷の渡米はもちろん、今秋ドラフトの目玉で将来的なメジャー挑戦を希望している早実高・清宮幸太郎内野手の
進路に大きな影響を与える可能性もある。
「巨人が“ポスティング潰し”の思惑があって故意に明かしたのではないか」
大谷のメジャー挑戦が濃厚になった13日。都内のホテルで行われたプロ野球オーナー会議終了後、巨人・老川祥一オーナーが、ポステ
ィングシステムの改定に関して、MLBとNPBの交渉過程を報道陣に明かしたときのこと。他球団関係者からいぶかる声が上がった。
実は交渉過程の情報は“マル秘”扱いだった。巨人は、球団方針としてポスティングシステムによるメジャー移籍を認めていないだけに、
他球団関係者が、「巨人はわざとマル秘情報を公開したのではないか」と疑ったというわけだ。それほどポスティングシステムの日米間の
改定交渉はナーバスな問題だ。
ポスティングシステムは、フリーエージェント(FA)でないNPB球団の選手がMLB球団への移籍を希望した場合に使われる。
2013年に成立した現行制度では、NPB球団が上限2000万ドル(約22億円)の譲渡金を設定し、支払う意思のあるMLB全球団との交
渉が可能となっていた。今回の改定での主な見直し箇所は、MLB球団からNPB球団へ支払われる譲渡金。要するに譲渡金額を抑えたい
MLB側と、多くもらいたいNPB側のせめぎ合いだ。
もし、交渉がうまくいかずにまとまらなければ、今後の日本選手の大リーグ挑戦に大きな影響が出るだけに、慎重な交渉が必要な案件で
ある。
オーナー会議終了後も、熊崎勝彦コミッショナーと末沢寿一議長(日本ハムオーナー)は、新ポスティングシステムに関して「交渉中なの
で内容は一切申し上げられません」としていたのに、老川オーナーが、選手の契約総額に応じて大リーグ球団が日本の所属球団に支払う
「譲渡金」の額が決まる案が検討されていることを明かしてしまったので、NPBサイドは真っ青になった。
老川オーナーの発言内容に間違いはなかったが、交渉中の中身を一方的に公開してしまった格好だけに、今後のMLB側のリアクション
に戦々恐々で頭を抱えている。
ポスティングシステムをめぐる日米間交渉には、苦い経験がある。
2013年オフ、当時楽天の田中将大(現ヤンキース)を巡り、改正が日米間で議論されたときだ。ちなみに当時のMLB側の交渉役は、事
務方トップで現コミッショナーのロブ・マンフレッド氏だった。
その内容はいまも極秘扱いで明らかになっていないものの、いったんは日米間で合意。ところが、これに労組・日本プロ野球選手会が「
選手が複数の球団と交渉できる自由がないと意味がない」と強硬に反対。やむなくNPBが再交渉を求めると、MLBは日本側の煮えきらな
い態度に激怒。それならと、最終的に「上限2000万ドル(約22億円)の譲渡金を支払う球団すべてと交渉できる」という現行システムで妥
結。日本の各球団は当初の合意案より譲渡金額を低く抑えられ、NPBともども苦虫をかみつぶしたものだ。
MLB球団側にとっても大谷はぜひ来季から米国でプレーさせたい素材であることから、今回の改定で、日本ハムの取り分が少なくなるこ
とのないように「大谷特例」が検討されているため、大谷のメジャー行きが消滅することはなさそうだが、現行制度の期限である10月31日ま
でに、新ポスティングシステムがどんな形になるのかは全く予断を許さない。
今秋ドラフトの目玉で将来的にメジャー挑戦を希望している早実高・清宮の進路にも影響を与えることになる。清宮はポスティングを認めて
いるNPB球団を選ばないと早期の大リーグ挑戦に障害が出る。制度改定でポスティングに消極的なNPB球団が増えたりすると、大リーグ
挑戦のハードルが高くなる結果になる。
夕刊フジ:
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170915-00000022-ykf-spo