第90回アカデミー賞主要部門予想
世界最大の映画の祭典「第90回アカデミー賞」の授賞式が米ロサンゼルスで4日午後(日本時間5日午前)に行われる。作品賞のノミネートは例年並みの9本だが、ゴールデン・グローブ賞で4部門を受賞した「スリー・ビルボード」と、今回13部門でノミネートされた「シェイプ・オブ・ウォーター」が最有力とみられている。夕刊フジで「LA発芸能WATCH」を連載する板垣眞理子氏、「HOLLYWOOD聖林裏表」の産経新聞ロサンゼルス支局長、住井亨介氏、国際映画祭での審査員経験もある映画評論家の小張アキコ氏が予想した。
まずは個人賞からみていこう。主演男優賞は、「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」でチャーチルを演じたゲイリー・オールドマン(59)で一致。その特殊メークも話題を集めている。
「素晴らしい演技力でチャーチルそのもの」(住井氏)、「長年の輝かしい経歴にもかかわらず、賞とは縁が薄い(2度目の候補)だけに同情票が集まる可能性が」(板垣氏)とみる。
主演女優賞は、「スリー・ビルボード」のフランシス・マクドーマンド(60)に票が集まる中、小張氏は「シェイプ・オブ・ウォーター」のサリー・ホーキンス(41)に投じた。「フランシスはアカデミー賞の前日に発表されるフィルム・インディペンデント・スピリット賞の主演女優賞に回るのでは」と見通す。
3人の意見が完全にわかれたのは助演男優賞。「『スリー・ビルボード』で人種差別の悪徳警官を演じたサム・ロックウェル(49)のうまさに脱帽」という板垣氏に対し、住井氏は「圧倒的な存在感。セクハラ疑惑で降板したケビン・スペイシーの代役を完璧にやり遂げた」として、「オール・ザ・マネー・イン・ザ・ワールド」(原題)のクリストファー・プラマー(88)を推す。
小張氏は「スリー・ビルボード」からウディ・ハレルソン(56)を。「票が割れるだろうが、黒澤明の『生きる』の志村喬のように“生き抜く”ことを演じきった名優に」としている。
助演女優賞は板垣、住井両氏が「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」で主人公の母を演じたアリソン・ジャネイ(58)、小張氏が「シェイプ〜」のオクタヴィア・スペンサー(45)にそれぞれ投じている。
監督賞は、これまた全員一致で「シェイプ〜」のギレルモ・デル・トロ監督(53)に。「メキシコ人ということもあり、人種的な意味でも有利。人間的な魅力でも人気の彼に優位に働きそう」(板垣氏)、「すてきなおとぎ話の背景に米ソ対立まで感じさせる演出が光った」(小張氏)と称賛する。
そして、注目の作品賞だが、板垣、小張両氏が「スリー・ビルボード」に投じる一方、住井氏は1980年代のイタリアを舞台に同性愛に目覚める少年を描く「君の名前で僕を呼んで」に1票。
注目の「シェイプ〜」には票が入らなかったが「下馬評では『シェイプ〜』に勢いがあるが『スリー・ビルボード』の素晴らしい脚本と演技陣を強く押す声も多い」と板垣氏。
「君の名前で〜」の主演、ティモシー・シャラメ(22)は主演男優賞にもノミネートされているほか、作品賞候補の「レディー・バード」にも出演しており注目の俳優。「とてもきれいな映像、切ないエンディング、オスカーのために作り上げられた映画」(住井氏)と指摘する。
住井氏も「女性の進出が目立つ。作品賞候補のうち半分以上が女性を話の中心に据えて描いており、6作品でプロデューサーが女性。セクハラ問題の端緒となった大物プロデューサー、ハーベイ・ワインスタイン氏がいなくなり、女性へのハラスメントを許したハリウッドの風潮が一掃されたのか」とみる。
昨年は、作品賞の発表を間違えるという前代未聞の失態が起きたが「今年はそんなお粗末はないと思う」と小張氏。
注目の授賞式は、WOWOWで5日午前8時半から生中継される。
「スリー・ビルボード」
「シェイプ・オブ・ウォーター」
「君の名前で僕を呼んで」