巨人の山口寿一オーナー=読売新聞グループ本社社長=が12日、今季が3年契約最終年の高橋由伸監督(43)に来季続投を要請する意向を示した。
3年連続で優勝争いから脱落したが、高評価の理由は岡本和真内野手(22)ら若手野手の台頭だという。
球団創設者の正力松太郎がいの一番に掲げた「巨人軍は常に強くあれ」という遺訓に従い、非情なまでに勝利を最優先してきた伝統が、巨人を特別な球団たらしめてきた。
平成最後の秋に「常勝」の看板を下ろし12分の1の普通の球団となるのか。(笹森倫)
7月に就任した山口オーナーはこの日、都内で12球団オーナー会議に初出席。帰り際に報道陣に対応し、高橋監督の手腕について言及した。
「今春キャンプのまだ始まって間もない頃に、監督は『今年は若い選手を勇気を持って使っていく』という話をしていた。
その後、いろいろ誤算があってチームの状態が必ずしも望んでいた状態ではないが、その姿勢を貫いてきてくれているところは、私としては評価をしています」
具体例として、通算1本塁打から4年目の大ブレークで4番に定着した岡本、大卒2年目で二塁の定位置をつかみかけたが故障離脱中の吉川尚を挙げ、
「本人たちの努力がもちろん大きいわけだが、かなりの成績を残してきているのは、監督やコーチ陣が力を合わせて若手を育てようとしてきたことも大きかったと思っている」とたたえた。
さらに踏み込む形で、「まだペナントレース途中だから、この先のことはあれこれ言える時期ではないけれども、十分にチームを整えて監督には腕を振るってもらいたい」と続投を希望した。
原前監督の最終年から数えて、球団ワーストタイの4年連続V逸は確実。2リーグ制以降、1人で3年連続で優勝を逃した監督は“ON”の2人だけだ。
1976、77年に優勝後、78年から3年連続でV逸した長嶋茂雄監督は解任された。
最後の80年はV戦線から脱落後、未来を見据え前年秋の伊東キャンプで鍛えた若手を積極起用。
野手は中畑清、篠塚和典、投手は江川卓、西本聖、角三男らが頭角を現した。
球団首脳に「勝率5割以上でAクラスなら続投」と明言され、最終戦で勝って61勝60敗9分の3位を確保したが、約束はほごにされた。
翌81年には藤田元司監督のもと、前年に育った若手が原動力となり日本一まで上り詰めた。
86年に就任から3年連続で優勝を逃した王貞治監督は留任。
翌87年に見事優勝も日本一には届かず、88年に首位から12ゲーム差で再び2位に沈むと解任され、藤田監督の再登板となった。
あのONさえ、勝利のためなら斬る厳しさが、巨人の伝統だった。山口オーナーの高橋監督への評価に照らせば、投打の若手を数多く成長させ、翌年に優勝を争う態勢を整えた80年の長嶋監督は続投だろう。
王監督は就任から優勝を逃した3年間もAクラスは死守し、3年目は1位広島とゲーム差なしの2位だった。高橋監督は初年度こそ2位も、昨季は11年ぶりのBクラスの4位。
現在は3位だが、山口オーナーは「現状にはもちろん、危機感は持っている。3年間優勝できていないだけではなく、優勝争いから遠ざかっている」と厳しい現実を認める。
それでも今季の敗因を指揮官に求めず。先月の観戦後に「毎回似たような負け方」と評した後、「投手陣はやっぱりコマ不足。後ろも苦しいし、先発も苦しい」と言及した通り。
一時は親会社サイドも監督候補と目するまで評価を高めていた斎藤投手総合コーチに責任を負わせる情勢だ。
球団OBは「1軍は結果がすべて。“若手を育てたからOK”の球団もあるが、巨人がそれではダメだ。時代が変わったというより、ONのときの藤田さんのような、困ったときに頼める監督候補がいない」と人材難を嘆く。
もっとも、長嶋監督の電撃解任のように、球界人事の一寸先は闇。山口オーナーも続投方針について、「連日試合が続いてるから、監督とまだそういった話もできていない。
これはあくまでも今の時点での私の一方的な考え」と断りを入れたが、球団実質トップの読売新聞グループ本社・渡辺恒雄主筆とも考えは一致している。
https://www.zakzak.co.jp/spo/news/180914/spo1809140006-n1.html
2018.9.14