メジャーリーグのみならず、サッカーでも日本人の海外名門への入団は珍しくなくなった。が、そんな時代にいまだ「高い壁」となっているのが、言わずと知れた世界最高峰の米プロバスケットボールリーグ(NBA)。ここに目下、風穴を開けようとしているのが八村塁(20)である。
ベナン人の父と日本人の母との間に生まれた八村は、現在米国ゴンザガ大の3年生。NBAに詳しいスポーツジャーナリストが言う。
「先日、全米の大学強豪が参加したトーナメントでは優勝候補のデューク大を撃破し優勝。八村はチームの中心選手としてMVPを獲得しました。203センチ102キロの体躯でフォワードを務める彼は、フィジカルが強くてジャンプ力もあると現地で高い評価を得ており、来年6月のドラフトでは上位指名が確実とみられています」
NBAではさる10月、田臥勇太に続いて渡邊雄太が日本人2人目となるデビューを果たしているが、
「2人とも、自らチームのトライアウトなどに参加して契約に至っており、これまで日本人でドラフト指名されてNBAでプレーした選手はいません」
と言うのだ。NBAのドラフトは、リーグ所属30チームが2巡にわたって指名できる。戦力の均衡という観点から、プレーオフに出場できなかった下位14チームに優先権が与えられるのが特徴であり、実際に現地のドラフト予想サイトでは、八村が10位前後で指名されるのでは、といった見通しも立っている。
■必死で勉強して
快挙が待ち遠しい八村は、富山県生まれ。地元の小中学校から、バスケの強豪・宮城の明成高校へ進学し、在学中は全国高校選抜優勝大会(ウインターカップ)で3連覇を成し遂げている。母親の麻紀子さんが言う。
「小学生の頃は野球と陸上をやっていて、小6で腰を痛めてしまいました。だから『無理してスポーツをしなくても』と思っていたのですが、入学した中学がバスケの強豪で、本人が誘われてやる気になったのです」
母は英会話スクールの講師を務めながら、息子の試合の応援に駆け付けており、
「チームのコーチが、あの子の我が強い部分をうまく導いて、自信を持たせる指導をして下さったおかげで上達したのだと思います」
本格的に米国でのプレーを意識し始めたのは、高校入学後だという。
「勉強は好きではなかったのですが、目標があるというのは強いようで、まずTOEFLのスコアをパスしないと現地の大学に入れないと分かって、必死で勉強を始めました。大学でも成績が悪いと試合に出してもらえないので、今は高校時代よりも勉強していると聞きました」
米国では、大学2年生からNBAドラフトの有資格者となる。八村も来年にはプロ入りが濃厚で、肝心の報酬については、
「今年のドラフトを基準にすれば、仮に15位で指名されても年俸は2年契約でおよそ305万ドル(約3億5千万円)となり、10位だと約385万ドル(約4億3700万円)。スター選手ともなれば、年俸10億円超が当たり前の世界です」(先のジャーナリスト)
トップ選手ですら数千万円という日本のBリーグとは比べるべくもないが、早々に億万長者の仲間入りを果たしそうな息子に、母の麻紀子さんは、
「プロに進んでも、まだ一歩一歩努力している過程。せめて私は、どっしり落ち着いていようと思います」
ルーキーの胆力は、母親譲りのようである。
「週刊新潮」2018年12月13日号 掲載
12/15(土) 5:57配信 デイリー新潮
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20181215-00553307-shincho-spo