報道やネットで、いろいろと批判されているのは知っています。ただ、批判があるということはボクがまだ注目されている証拠でしょう。なるべくポジティブに考えるようにしているんです」
こう話すのは、北海道日本ハムファイターズの斎藤佑樹(31)だ。早稲田実業時代に甲子園を、早大時代に神宮を沸かせた「ハンカチ王子」もプロ入り9年目。
今季は1勝もあげられず、’13年以降の7年間でわずか4勝と壁にブチ当たっている(9月2日現在)。だが話を聞くと、意外にも笑顔が絶えない。以下は、背水の斎藤との一問一答だ。
――表情が明るいですね。
「調子は悪くないんですよ。手ごたえを掴めましたから」
――手ごたえとは?
「3月に、アスレチックスとのプレシーズンゲームで投げたんです。2イニングだけでしたが、メジャーの強打者を抑えられた。失点は唯一の失投を本塁打された1点だけ。ボクの球は打者が2巡目に入ると見極められますが、1巡目なら通用する実感を得られたんです。’13年に右肩を痛めてからは試行錯誤の日々。どうしたらいいか答えがわからず苦しみ焦っていましたが、ようやく自分なりの投球スタイルを見つけられました」
――今季一軍未勝利という現状をどうとらえている?
「もちろん納得はしていません。でも、以前のような先発での勝利にこだわりはない。ショートリリーフなら抑えられると思います」
――自分に足りないモノはなんだと思いますか。
「う〜ん……。速球の威力ですね。変化球には自信があります。ただ、ストレートが速くないので変化球をいかせていない。もしボクに150kmの剛速球があれば、もっと変化球を効果的に使えます。30歳を超えても、ストレートの速度を上げることは可能だと思いますよ」
――そのために、どんな練習をしている?
「肩の可動域を広げるトレーニングをしています。年をとると、可動域は自然に狭まります。それを、下半身の動きなどで補おうとムリをするからフォームが崩れる。今は朝食後の1時間、午後は2時間、ストレッチボールに上半身をあずけるなどして肩の可動域を広げています。理想は腕をムチのようにシナらせ、キレのあるストレートを投げることです」
――ここ数年結果を残せていない。それでも一軍で投げられるのは、甲子園のスターへの「特別扱い」という声もありますが……。
「それは栗山(英樹)監督の判断ですから。ボクが言う立場にありません」
――報道やネットでは、いろいろと辛らつな批判もあります。
「愛情があるからこそ、叱ってくれるんだと思います」
――ポジティブですね。
「いやいや。『ポジティブ』じゃないッスよ。『ポジティブに考えよう』と意識しているだけです。高校時代は、マスコミに書きたてられるのがホントにイヤだった。ただ大学の監督やOBの方に、『変なコト書かれても世の中の人はほとんど気にしていないゾ』と言われたんです。それからは、ある程度聞き流すようにしています」
――落ち込むことはないんですか。
「ありますよ〜。8月6日のオリックス戦で、3回4失点で降板した時はムチャクチャ悔しかった。ただ、落ち込んでいるだけでは進歩がない。この試合も、最初の2回は無失点に抑えられました。失点はすべて3イニング目。だから3回の投球だけ反省し、ショートイニングなら通用するんだとポジティブに考えるようにしました」
――野球以外では何をしているんですか。
「本はよく読みますね。最近読んだのは、『メジャーリーグの現場に学ぶビジネス戦略』。おカネの流れなど、野球ができるバックグラウンドを知ろうと思ったんです」
――今後の目標はありますか。
「先発で10勝することは難しいでしょうが、短いイニングのリリーフとして多くのゲームで活躍したい。来季は50試合以上登板したいです」
――では10年後のイメージは?
「難しいなぁ。もちろん現役でいたいですが、そうでもなくても野球に携わっていたい。例えば甲子園で1000球投げた球児が、なぜ肩を壊さなかったのか研究をするとか……」
――もう31歳。そろそろ結婚の予定は?
「ボク、結婚願望が強いんです。子ども大好き。ただ今は、朝から晩まで野球のことばかり考えているので……。イイ出会いはないですかねぇ」
結果が出なくても腐らないのは、ポジティブ思考のなせるワザ。本人の言葉通りショートイニングに活路を見出せるか、斎藤の正念場は続く。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190902-00000002-friday-base