自粛生活のため自宅で映画を見る機会も増えたはずだ。だからこそつくづく思うことがある。映画とフットボールは
似た者同士だと。どちらも監督が必要だし、どちらも熱烈なファンによって支えられている。そしてもう1人、どちらにも
欠かせない存在がいる。そう、ハンス・ジマーである。
映画好きの方には説明不要だと思うが、彼は映画音楽界の偉大な作曲家だ。誰もが一度は彼の曲を耳にしているはずだ。
アカデミー作曲賞とゴールデングローブ賞を受賞した1994年公開の『ライオン・キング』のテーマ曲の他、これまで
数え切れないほどの名作で音楽を手がけてきた。
『レインマン』『恋愛小説家』『クール・ランニング』『グラディエーター』『パイレーツ・オブ・カリビアン』『シャーロック・ホームズ』
『ラストサムライ』『バットマン ビギンズ』など、挙げ始めたらきりがない。
そんな映画音楽界の巨匠は、サッカー界にも音楽を提供している。今年2月、アメリカのMLS(メジャー・リーグ・サッカー)が
発足25周年を記念してアンセムを発表したのだが、それを手がけたのがジマーだった。
完成した音楽についてスポーツ情報局『ESPN』は、リドリー・スコット監督の『グラディエーター』やクリストファー・ノーラン監督の
新生『バットマン』シリーズといった、壮大な映画に欠かせないジマーらしい音楽要素が取り込まれていると称賛する。
実際に聞いてみると、確かに『パイレーツ・オブ・カリビアン』の戦闘シーンで流れてもおかしくないような迫力あるベースドラム
が印象的だ。「サッカー以上に人の心を動かすものはない」とジマーは語る。「MLSアンセムの楽曲はスリリングな挑戦であり、
とても光栄なことだった。MLSの精神とそのサポーターにふさわしいアンセムを作曲した」
ジマーがフットボールの音楽を手がけるのはこれが初めてのことではない。ビデオゲーム『FIFA 19』の音楽に携わったことがあるし、
何より2018年ワールドカップ・ロシア大会で公式テーマ曲を制作している。大会期間中は日本のTV放送のオープニングでも必ず
流れていた曲なので、聞き覚えはあるはずだ。
そんなジマーだが、実は正式に音楽を習ったことはないという。ドイツ生まれのジマー(本来の発音は“ツィマー”であるべきか)は、
10代で英国に渡って高校を出ると、音楽バンドでキーボードやシンセサイザーを担当して下積み生活を送った。世界的に大ヒットした
バグルスの『ラジオ・スターの悲劇(Video Killed the Radio Star)』(1979年発売)では、サポートメンバーとしてキーボードを
演奏したそうだ。
そうやって独学で音楽の才能を磨き、現在の地位にまで上り詰めたジマーは、自身の学歴について過去のインタビューで
こう語ったことがある。
「音楽学校や大学を出ていないことで、新しい映画に取り組む際には勉強が必要になる。大変なことだが、それが楽しいのさ。
『ダ・ヴィンチ・コード』に取り組んだ際には、1年ほどかけてダ・ヴィンチや絵画について学んだんだ」
そんな飽くなき探求心で数々の名曲を生み出してきたジマー。今後も銀幕の世界はもちろん、スポーツ界にも美しい楽曲を
提供してくれることだろう。
ちなみに、MLSはジマーの公式アンセムが収録されたアルバムのジャケットデザインを5月24日まで公募している
(アメリカ在住者のみ対象)ので、興味がある方は応募してみてはどうだろうか。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200522-00010000-fballista-socc