巨人のエース・菅野智之がポスティングシステムを利用してメジャー挑戦することが決定的となった。巨人のセ・リーグ連覇は菅野なくては成しえなかった。プロ野球新記録の開幕13連勝を飾るなど、首位独走の立役者となり、14勝2敗、防御率1.97。3度目の最多勝、初の最高勝率(8割7分5厘)を獲得した。
新型コロナウイルスの影響で収益が大幅に減ったのは日本プロ野球機構(NPB)だけでない。メジャー球団も経営状況は厳しく、今オフの大型補強は消極的なチームが多いと言われている。
だが、菅野は別格だ。長年視察してきたスカウトは、こう予測する。
「彼は別格だよ。ダルビッシュ有(カブス)、前田健太(ツインズ)、田中将大(ヤンキース、現在はフリーエージェント=FA)に匹敵する力を持っている。球の精度が高く、試合を作る能力が高い。ポスティングになれば争奪戦になるだろう」
菅野は日本ハムのドラフト1位指名を拒否し、1浪して巨人に入団した経緯がある。エースとしてその後の申し分ない活躍を見れば、巨人も菅野の夢を叶えてあげたいという思いは強いだろう。
一方で、エースが退団するとなれば、大きな戦力ダウンになる。今季の巨人で2桁勝利は菅野のみ。高卒2年目の戸郷翔征が9勝(6敗)を挙げたが、今季の活躍で相手に徹底的に研究される。大きな伸びしろを持った投手だが、菅野の後のエースを託すのは荷が重い。来日1年目に8勝(4敗)をマークしたサンチェスは150キロ近い直球、スプリット、カットボールと球の質は高いが、突然崩れるなど投球は不安定の部分がある。田口麗斗、畠世周、今村信貴もまだまだ物足りない。
スポーツ紙の巨人担当は、こう分析する。
「菅野は数字以上の貢献度があります。カードの初戦に投げて相手打者を崩すことで、2戦目以降に先発する戸郷やサンチェスが投げやすくなる部分がありました。救援陣の負担も軽減するので助かったと思います。他球団からの補強で埋まる穴ではない。FA宣言すれば、巨人が獲得に乗り出していた中日のエース・大野雄大は残留。FA権を行使するか注目されるDeNAの井納翔一はスタミナ十分で能力が高い投手ですが、好不調の波が激しく、貯金を作れる投手ではありません」
巨人に独走を許したセ・リーグの5球団は目の色が変わるだろう。ある球団の打撃コーチは、こう声を弾ませる。
「143試合のシーズンで200イニング近く投げて15〜20勝する投手がいなくなるんだから、そりゃでかいよ。でも、こちらにとってみれば大きなチャンス。来年は混戦になってどのチーム優勝する可能性がある」
スポーツ紙のデスクは懸念する。
「巨人が深刻なのはスケールの大きい若手投手が少ないこと。日本シリーズで4連敗したソフトバンクには千賀滉大、石川柊太、救援陣も杉山一樹、松本裕樹、椎野新と、150キロを超える直球で勝負できる投手がゴロゴロいるのと対照的です。菅野という絶対的エースがいなくなれば、大型連敗の危険性をはらんでいる。優勝どころかBクラスもあり得るし、次のエースが育つまでは我慢のシーズンが続くかもしれない」
菅野の抜けた穴をどう埋めるか。リーグ3連覇に向けて最大の懸案事項になりそうだ。(牧忠則)
https://news.yahoo.co.jp/articles/44bb3b3e83e394de86e85d8085f7eedaa6ee5149