2021年12月25日
https://www.dailyshincho.jp/article/2021/12251056/?all=1
今月オランダで開催されていたカーリングの五輪最終予選。NHKが混合ダブルス4試合の中継を一旦は取りやめ、その後再開されることになった背景とは――。
***
楽しみにしていた人は、狐につままれた気分だったことだろう。問題が生じたのは、今月5日から18日までオランダで開催されていた、カーリングの北京五輪世界最終予選。NHKがBS1で7日までに予定されていた、混合ダブルス4試合の中継を、急遽取りやめたのである。
「“Easy Toys”というロゴ看板が掲げられるとの説明が、事前になかったようで、このロゴが、青少年に及ぼす影響に配慮するとか、品位と節度を心がけるといった、NHKの放送ガイドラインに抵触するという判断だと推察します」
と話すのは、NHK解説委員だった、法政大学スポーツ健康学部の山本浩教授。“Easy Toys”とはオランダのアダルトグッズメーカーで、そのピンク色のロゴが競技用氷面やスコアボード付近など、会場のいたるところに大書されていた。
「NHKより先に問題視し、放送中止を決めたのは、米国の三大テレビ局のひとつで、五輪中継も行うNBCでした。一方、NHKですが、視聴者の年齢層が高く、厳しいリアクションなどを予想して判断したのでしょう。特にカーリングは、冬のスポーツのなかではフィギュアスケートと並び、選手の顔がテレビに映る競技。視聴者に選手への親近感が湧きやすく、その背後にロゴが映ると、反感を買いかねませんからね」(同)
■かえって宣伝に
ところが事態は急転。平昌五輪で銅メダルを獲得し、おやつを頬張る「もぐもぐタイム」でも脚光を浴びた女子日本代表、ロコ・ソラーレらが出場する11日の予選から、テレビ中継が再開されることに。Easy Toysがロゴをすべて、“#equality for all(すべての人に平等を)”という言葉に置き換えたからである。
しかし、そもそも騒ぐようなことだったのか。
「NHKは大リーグの試合を中継するとき、球場内に掲げられたスポンサーの看板を、公共の電波を使ってすべて映しています。Easy Toysを問題視するなら、それらを暗黙の了解で済ましているのもおかしい」
とは、放送プロデューサーのデーブ・スペクター氏の意見。そして矛先は、NHKに先んじて放送を中止した米NBCに向かい、
「百歩譲ってNHKは公共放送ですが、NBCは民放で、日ごろイヤらしいドラマを放送しています。それに、Easy Toysという企業ロゴを一瞥しただけで、どんな会社なのかわかる視聴者が、いったいどれだけいるでしょうか」
日本にはほぼいないことだけは間違いなかろう。
「今回、同社がアダルトグッズを扱う企業だと指摘され、初めて知った人が圧倒的に多いのではないでしょうか。ですから、同社は放送中止騒動に巻き込まれて、宣伝効果を上げたと言えなくもありません。はたして指摘すべきだったのか」
https://www.dailyshincho.jp/article/2021/12251056/?all=1
今月オランダで開催されていたカーリングの五輪最終予選。NHKが混合ダブルス4試合の中継を一旦は取りやめ、その後再開されることになった背景とは――。
***
楽しみにしていた人は、狐につままれた気分だったことだろう。問題が生じたのは、今月5日から18日までオランダで開催されていた、カーリングの北京五輪世界最終予選。NHKがBS1で7日までに予定されていた、混合ダブルス4試合の中継を、急遽取りやめたのである。
「“Easy Toys”というロゴ看板が掲げられるとの説明が、事前になかったようで、このロゴが、青少年に及ぼす影響に配慮するとか、品位と節度を心がけるといった、NHKの放送ガイドラインに抵触するという判断だと推察します」
と話すのは、NHK解説委員だった、法政大学スポーツ健康学部の山本浩教授。“Easy Toys”とはオランダのアダルトグッズメーカーで、そのピンク色のロゴが競技用氷面やスコアボード付近など、会場のいたるところに大書されていた。
「NHKより先に問題視し、放送中止を決めたのは、米国の三大テレビ局のひとつで、五輪中継も行うNBCでした。一方、NHKですが、視聴者の年齢層が高く、厳しいリアクションなどを予想して判断したのでしょう。特にカーリングは、冬のスポーツのなかではフィギュアスケートと並び、選手の顔がテレビに映る競技。視聴者に選手への親近感が湧きやすく、その背後にロゴが映ると、反感を買いかねませんからね」(同)
■かえって宣伝に
ところが事態は急転。平昌五輪で銅メダルを獲得し、おやつを頬張る「もぐもぐタイム」でも脚光を浴びた女子日本代表、ロコ・ソラーレらが出場する11日の予選から、テレビ中継が再開されることに。Easy Toysがロゴをすべて、“#equality for all(すべての人に平等を)”という言葉に置き換えたからである。
しかし、そもそも騒ぐようなことだったのか。
「NHKは大リーグの試合を中継するとき、球場内に掲げられたスポンサーの看板を、公共の電波を使ってすべて映しています。Easy Toysを問題視するなら、それらを暗黙の了解で済ましているのもおかしい」
とは、放送プロデューサーのデーブ・スペクター氏の意見。そして矛先は、NHKに先んじて放送を中止した米NBCに向かい、
「百歩譲ってNHKは公共放送ですが、NBCは民放で、日ごろイヤらしいドラマを放送しています。それに、Easy Toysという企業ロゴを一瞥しただけで、どんな会社なのかわかる視聴者が、いったいどれだけいるでしょうか」
日本にはほぼいないことだけは間違いなかろう。
「今回、同社がアダルトグッズを扱う企業だと指摘され、初めて知った人が圧倒的に多いのではないでしょうか。ですから、同社は放送中止騒動に巻き込まれて、宣伝効果を上げたと言えなくもありません。はたして指摘すべきだったのか」