2024/12/31(火) 11:15
現代ビジネス(伏見 瞬)
https://news.yahoo.co.jp/articles/b510e9ea9c372c153fdfcdc2dcbabed19fc5c534
「J-POPが世界で人気」という言葉を最近、よく聞くようになった。ビルボードやSpotify・Apple Musicのグローバルチャートの上位に日本の楽曲がランクインするようになり、今年開催された世界最大級の音楽フェス「コーチェラ・フェスティバル」(以下、コーチェラ)に出演した日本のアーティストは過去最多だった。これまで「ガラパゴス」と評されることが多かったJ-POPに何が起きているのか。
『スピッツ論―「分裂」するポップ・ミュージック』の著者で、国内外の幅広い音楽の動向をわかりやすく伝えるYouTubeチャンネル「てけしゅん音楽情報」の「しゅん」としても活動する批評家の伏見瞬さんがその背景を分析する。
■J-POPの世界進出を後押ししたもの
2024年12月22日にNHKで放送された特集番組「熱狂は世界を駆ける〜J-POP新時代〜」は、Creepy Nuts、Number_i、新しい学校のリーダーズを取り上げ、日本のポップミュージック、いわゆる「J-POP」がどのようにして国際的な音楽シーンで注目されるようになったかを掘り下げる内容であった。
Creepy Nutsの楽曲「Bling-Bang-Bang-Born」がウクライナを起点に世界31カ国の音楽チャートにランクインし、ストリーミング再生回数が7億回を超えたこと。Number_iがコーチェラに出演し、アウェイの状況下でのパフォーマンスに挑んだこと。北米やメキシコでの人気を拡大していた新しい学校のリーダーズ(ATARASHII GAKKO!)が北米ツアーで11都市を巡り、多くの会場を完売させたこと。「J-POP」を取り巻く状況の変化が、番組内で描かれていた。
以前であれば、J-POPと米英を中心とする海外のポップミュージックは別物として考えられ、後者が音楽の「本場」とされていた。その中で、日本の音楽は文化的に遅れているとさえ見なされていた。しかし、近年このようなヒエラルキーは崩れ、日本の音楽が国際的に認知され、受け入れられる状況が進んでいる。
かつて「ガラパゴス」と半ば自嘲的に評されていたJ-POPが、いまや多くの国々で好んで聴かれる時代に突入している。ストリーミングサービスやSNSの普及が、その一因だろう。SpotifyやApple Musicといったプラットフォームを通じて、国境を越えた広範囲のリスナーが日本発の音楽にアクセスできるようになった。また、TikTokによって楽曲がバイラルヒット化しやすい環境が整い、コロナ禍によるデジタルコンテンツ需要の高まりもJ-POPの世界進出を後押しした。
そうした状況下において、待ちの姿勢ではなく、自ら海外のマーケットを開拓していくアーティストの姿も多く見受けられる。
■攻めの姿勢で海外市場を開拓するアーティストたち
YOASOBIは近年アジアやアメリカでツアーを行い、シカゴのLollapaloozaやニューヨークのRadio City Music Hallといった著名な会場で公演を成功させている。
「熱狂は世界を駆ける〜J-POP新時代〜」でもフィーチャーされていた新しい学校のリーダーズも、コーチェラの単独ステージでおおいに会場を沸かせたことでも記憶にも新しい。彼女たちは2021年にアメリカの音楽レーベル「88rising」と契約し、海外名義「ATARASHII GAKKO!」として世界デビューを果たすと、同年、ロサンゼルスで開催された音楽フェス「Head In the Clouds」に出演。また、「オトナブルー」はTikTokでバイラルヒットとなり、関連動画の総再生回数が30億回を超えた。北米ツアーの大好評は、それまでの蓄積があったからこそ生まれたものだ。
そして、Number_iのコーチェラ参加も面白かった。もちろん、彼らのステージがアジアのミュージシャンをフックアップしてきたレーベル「88 rising」によるショーケース「88 Rising Features」の一部であったことも明記しなければいけないし、同じステージにYOASOBI、新しい学校のリーダーズ、Awichが登場したことも忘れるべきではない。
ただ、日本で元々大きなファンダムを有している彼らが、安定した磁場の外側に出ていこうとする運動に魅力を覚えるのは否定しがたい(これはコーチェラだけでなく、サマーソニック、あるいはヒップホップ中心のフェスに出演する国内での活動にも同様のことが言える)。もっと多くの人を巻き込みたいという彼らの姿勢に、現状のJ-POPの業界構造を図らずも変えてしまうかもしれない予感がするからだ。
(※以下略、全文は引用元サイトをご覧ください。)