2019年3月1日より上映がスタートした『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』第七章「新星篇」<最終章>と、昨年2018年11月末に公開されヒットを飛ばした『機動戦士ガンダムNT』(以下、『ガンダムNT)』。
日本のアニメ史に大きな影響を与えた『宇宙戦艦ヤマト』と『機動戦士ガンダム』という、2つの作品の最新作とリメイク作品の物語を構築したのは、小説家の福井晴敏だ。
現在はアニメーションをはじめとした映像作品の企画や脚本、シリーズ構成に軸足を置き積極的に活動している福井は、日本を代表する2大SFアニメを題材にし、それぞれにどんな思いを込めたのか? 2つの作品をさまざまな角度から対比し語ってもらった。
■「歴史を描く」という認識で臨んだ『ガンダム』の物語構築
――『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』(以下、『ヤマト2202』)、『機動戦士ガンダムUC』と『ガンダムNT』、というSF的世界観が背景にある戦争を描いた物語を手がけてきたわけですが、それぞれの作品を描くにあたって、気にかけた部分はどこですか?
・福井
『ガンダム』に関しては、「歴史」ですね。宇宙世紀と言われる人類が宇宙で暮らすようになってからの歴史は、100年にも満たない。
例えば、起源から1000年とか2000年が経過しているような歴史であれば、どんなテクノロジーを描いてもいいと思うけど、宇宙で暮らすようになってわずか100年も経っていないような歴史であれば、短い期間でどんなことが起こったのか、どんな問題があったのか想像ができる。
『ガンダム』作品は、その問題を描くこと、つまりその歴史を描くという感覚でしたね。
しかも、その「歴史」は自分で作り出すのではなくて、すでに年表も含めて歴史としてしっかりと存在している。
それこそ、『三国志』の歴史を吉川英治さんや北方謙三さんがそれぞれの解釈で描くということと、俺が『ガンダム』を描くことは心理的にはそんなに違わないんじゃないかと思っています。
『ガンダム』はフィクションで現実にあったことではないと言うかもしれないけど、じゃあ、三国志に登場する人物に会ったことあるのかと。
誰も会ったことがないですし、そもそもあんな英雄物語はフィクションに近いはずです。架空のものだからこそリアルに人の歴史として紡ぐことができる。
そういう批評精神を持って作れるということが、『ガンダム』作品は面白いと思いましたね。
――『ガンダム』作品は歴史物として魅力があるということですね。
・福井
『終戦のローレライ』という小説を書いた時にそういう歴史ものの面白さというか、可能性みたいなものをちょっと感じていたので、そこから『ガンダム』へ行くのは何の抵抗もなかったです。
言ってしまえば、マイナーな人気しかない実際の歴史戦争ものから、よりメジャーな歴史物へとジャンルを変えたというような感覚ですね。
こっちの方がそうした批評精神を持った歴史ものを書けるというなら、架空かリアルかなんて関係ないという感じでした。
■日本人の精神性が象徴として描かれる『宇宙戦艦ヤマト』
――『ヤマト2202』に関しては、また違った感覚で臨まれているんでしょうか?
・福井
『ヤマト2202』に関しては歴史という部分はまったく意識していなくて、『宇宙戦艦ヤマト』という設定だけが存在してという認識ですね。
40年前に作られた映画『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』という当時大ヒットを記録した作品があって、これを現代にどう甦らせるか? 甦らせた時に今の人に何を見せるべきか?
それを考えた末に、『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』を作り直すということでなければ、やれないことがあるなということに気付いたことが取っかかりでした。
これがもし、『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』ではなく、いわゆる続編を作って欲しいと言われたらやっていなかったかもしれないですし、リメイクの『宇宙戦艦ヤマト』をゼロから立ち上げるなら、俺よりも得意な人がいるんじゃないかと言っていたと思います。至高のラストを描いた40年前の作品があり、それに涙した当時のファン、それを今の若い人も一緒に観るかもしれないと思った時に、その2つの世代が並ぶ状況はすごく面白みがあって、仕事を引き受けました。
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https://animeanime.jp/article/2019/03/27/44442_2.html