AERA2022/08/14 10:00
https://dot.asahi.com/dot/2022081200092.html
旧統一教会の組織票が自民党の候補者に分配されていたという自民党議員の証言が報じられたが、組織票について一家言ある議員がいる。先の参議院選挙で、約53万票を取って当選した自民党の赤松健氏だ。自身を「オタク票の受け皿」と自認する。郵便局や医師会、はたまた宗教でもないオタク票とは?いまSNS上で、こんな投稿が散見される。
<統一教会の組織票はたった8万票。オタク票は53万票だ>
<旧統一教会を切って、オタク票を取り込めばいい>
7月の参院選で初当選した赤松健議員はこう指摘する。
「先の参院選で、票田としてのオタクは間違いなくあることが改めて証明されました」
赤松議員は『ラブひな』『魔法先生ネギま!』といった作品で知られる現役の漫画家だ。参院選では「マンガ・アニメ・ゲームの表現の自由を守る」との公約を掲げ、自民党の比例区から出馬し、約53万票を獲得して当選した。
この得票数は、全政党の比例候補者の中でもトップ。特定の組織から支援を受ける自民党候補者の得票数と比べても、その存在感がうかがえる。
全国郵便局長会から支援を受けた長谷川英晴氏の得票数は約41万、日本医師連盟の支持を受けた自見英子氏は約21万、神道政治連盟の支持を受けた山谷えり子氏は約17万だった。赤松議員はこう見る。
「業界団体や宗教団体などからの組織票は年々減ってきている一方で、オタク票は自民党内でも一目置かれる存在になっている。マンガやアニメはかつてはサブカルという位置づけでしたが、今はメインカルチャーになっています。アニメの話をすれば、世代や性別を超えて仲良くなれますし、岸田文雄首相も『鬼滅の刃』を読破したと公言するほどです。アニメやマンガ好きの“オタク”はもはやマイノリティーではありません」
実は、今回の参院選挙では、このオタク票を巡って各党から候補者が乱立し、まさに激しい戦いが繰り広げられていた。自民党からは赤松議員のほかに、コロナ禍で開催が見送られてきた冬のコミケ(コミックマーケット)を、昨年末2年ぶりに開いた功労者として知られる藤末健三氏が立候補。立憲民主党からは栗下善行氏、要友紀子氏、国民民主党からは樽井良和氏ら6党9人が立候補していた。彼らはSNSで過去の政策の主張などから「表現の自由を守る候補者」と呼ばれており、今年8月13日から3年ぶりの開催となった夏のコミケのイベントに参加する議員・候補者もいる。
大手町(東京都)で会社事務員をしているという自称オタクの女性(37)は、「迷いましたが、今回は藤末さんに投票した」という。藤末氏は今回の選挙では7万5千票にとどまり落選したが、女性は投票した理由についてこう語る。
「インボイス制度(これまで消費税の納税を免税されていた個人事業主に税負担させる制度)が導入されることになり、アニメーターとかクリエーターの生活に大きな影響を与える懸念があるんです。この制度はもう来年には実施するというところまで議論が進んでしまっている。藤末さんは、制度の廃止ではなくて、延期を主張していたので、現実的な政策だなと思って、投票しました」
SNSには<インボイス制度が導入されたら、クリエーターが搾取され、日本の文化の担い手がいなくなってしまう>などといった声が多数投稿されている。クリエーターの問題を自分事として考えているオタクは少なくないようだ。
選挙アナリストの岡高志さんは「オタク票が注目されるようになった経緯に、山田太郎参院議員の存在がある」と指摘する。
山田氏はマンガやアニメなどの表現規制に反対してきた人物で、16年の参院選では新党改革から立候補し、29万票を獲得。野党の全国比例候補者の中ではトップの得票数だったが、新党改革が議席を取れず、落選して話題となった。
その後、山田氏は19年参院選に自民党から出馬。54万もの票を獲得し、当選を果たした。岡氏はこう語る。
「前回の参院選で山田氏が54万票を集めましたが、山田氏の個人票かもしれないという疑念はありました。今回、当初は郵便局長会の支持を受ける長谷川氏のほうが票が集まるだろうという見方もありましたが、赤松氏が53万票でトップ。自民党の中で最も票を集めるのがオタクであることが証明された画期的な選挙となりました。オタク票はまだ開拓の余地があり、今後、増えていく可能性はあります。もはや無視できない政治勢力です」
潜在的なオタク票はどれくらいあるのだろうか? 19年の参院選で山田氏が54万票、そして今回の参院選で赤松氏が53万票を集めたことで、50万以上のオタク票があるという見立てもあるが、赤松氏は「そこまではない」と見る。
※以下リンク先で
https://dot.asahi.com/dot/2022081200092.html
旧統一教会の組織票が自民党の候補者に分配されていたという自民党議員の証言が報じられたが、組織票について一家言ある議員がいる。先の参議院選挙で、約53万票を取って当選した自民党の赤松健氏だ。自身を「オタク票の受け皿」と自認する。郵便局や医師会、はたまた宗教でもないオタク票とは?いまSNS上で、こんな投稿が散見される。
<統一教会の組織票はたった8万票。オタク票は53万票だ>
<旧統一教会を切って、オタク票を取り込めばいい>
7月の参院選で初当選した赤松健議員はこう指摘する。
「先の参院選で、票田としてのオタクは間違いなくあることが改めて証明されました」
赤松議員は『ラブひな』『魔法先生ネギま!』といった作品で知られる現役の漫画家だ。参院選では「マンガ・アニメ・ゲームの表現の自由を守る」との公約を掲げ、自民党の比例区から出馬し、約53万票を獲得して当選した。
この得票数は、全政党の比例候補者の中でもトップ。特定の組織から支援を受ける自民党候補者の得票数と比べても、その存在感がうかがえる。
全国郵便局長会から支援を受けた長谷川英晴氏の得票数は約41万、日本医師連盟の支持を受けた自見英子氏は約21万、神道政治連盟の支持を受けた山谷えり子氏は約17万だった。赤松議員はこう見る。
「業界団体や宗教団体などからの組織票は年々減ってきている一方で、オタク票は自民党内でも一目置かれる存在になっている。マンガやアニメはかつてはサブカルという位置づけでしたが、今はメインカルチャーになっています。アニメの話をすれば、世代や性別を超えて仲良くなれますし、岸田文雄首相も『鬼滅の刃』を読破したと公言するほどです。アニメやマンガ好きの“オタク”はもはやマイノリティーではありません」
実は、今回の参院選挙では、このオタク票を巡って各党から候補者が乱立し、まさに激しい戦いが繰り広げられていた。自民党からは赤松議員のほかに、コロナ禍で開催が見送られてきた冬のコミケ(コミックマーケット)を、昨年末2年ぶりに開いた功労者として知られる藤末健三氏が立候補。立憲民主党からは栗下善行氏、要友紀子氏、国民民主党からは樽井良和氏ら6党9人が立候補していた。彼らはSNSで過去の政策の主張などから「表現の自由を守る候補者」と呼ばれており、今年8月13日から3年ぶりの開催となった夏のコミケのイベントに参加する議員・候補者もいる。
大手町(東京都)で会社事務員をしているという自称オタクの女性(37)は、「迷いましたが、今回は藤末さんに投票した」という。藤末氏は今回の選挙では7万5千票にとどまり落選したが、女性は投票した理由についてこう語る。
「インボイス制度(これまで消費税の納税を免税されていた個人事業主に税負担させる制度)が導入されることになり、アニメーターとかクリエーターの生活に大きな影響を与える懸念があるんです。この制度はもう来年には実施するというところまで議論が進んでしまっている。藤末さんは、制度の廃止ではなくて、延期を主張していたので、現実的な政策だなと思って、投票しました」
SNSには<インボイス制度が導入されたら、クリエーターが搾取され、日本の文化の担い手がいなくなってしまう>などといった声が多数投稿されている。クリエーターの問題を自分事として考えているオタクは少なくないようだ。
選挙アナリストの岡高志さんは「オタク票が注目されるようになった経緯に、山田太郎参院議員の存在がある」と指摘する。
山田氏はマンガやアニメなどの表現規制に反対してきた人物で、16年の参院選では新党改革から立候補し、29万票を獲得。野党の全国比例候補者の中ではトップの得票数だったが、新党改革が議席を取れず、落選して話題となった。
その後、山田氏は19年参院選に自民党から出馬。54万もの票を獲得し、当選を果たした。岡氏はこう語る。
「前回の参院選で山田氏が54万票を集めましたが、山田氏の個人票かもしれないという疑念はありました。今回、当初は郵便局長会の支持を受ける長谷川氏のほうが票が集まるだろうという見方もありましたが、赤松氏が53万票でトップ。自民党の中で最も票を集めるのがオタクであることが証明された画期的な選挙となりました。オタク票はまだ開拓の余地があり、今後、増えていく可能性はあります。もはや無視できない政治勢力です」
潜在的なオタク票はどれくらいあるのだろうか? 19年の参院選で山田氏が54万票、そして今回の参院選で赤松氏が53万票を集めたことで、50万以上のオタク票があるという見立てもあるが、赤松氏は「そこまではない」と見る。
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