bizSPA!フレッシュ 11.6
https://bizspa.jp/post-701912/
声優は今では若者が憧れる人気職になったが、スター声優になるどころか、最低限の生活さえ送ることはとても困難である。3人の声優(咲野俊介、岡本麻弥、甲斐田裕子)が立ち上げた有志グループ「VOICTION」が9月29日、声優を対象にした「声優の収入実態調査」を発表した。その結果によれば、7割が年収300万円以下、4割が年収100万円以下、という衝撃的な実情が明らかになった。実に7割もの声優が安定した生活を送れていないことには驚いた。同グループ広報を務め、自身も声優として活動する福宮あやの氏に声優業界の厳しい懐事情を聞いた。
■ランク制度と不況の関係
改めて食うことが難しい職業であるとわかったわけだが調査結果だけではいまいち声優の実情にピンとこない。声優業界の懐事情について聞くと、「メインキャストを任されたからといって、ギャランティが高いわけではありません」(福宮氏、以下同じ)という。何やら特殊な事情があるようだ。
「声優のギャランティは、アニメや吹き替えの場合は“ランク制度”というもので一律に決まります。これは放送媒体、本編の時間の長さなどの法則に従って変動するのですが、新人の場合、そのランクに入る準備段階として“ジュニア”という扱いになり、収録時間の長さなどに関係なく、『1本の収録あたり1万5000円』が事務所に入ります。
そこから2~3割が事務所の手数料として、さらに源泉徴収税を引かれた額がギャラとして、個人へ入金されます。最近は仕事を得るためにはランクを上げることは難しくなり、さらにはランクを下げる声優も珍しくありません」
■年を重ねて人気がなくなることも
「アニメの主役やメインヒロインを複数やるほど人気があれば、本編の収録だけでなく歌の収録、グッズ展開、イベント出演などの仕事も増えるため、年収はもっと高くなることも多いです」
やはり夢のある職業ではある。とはいえ、継続して売れ続けなければいけないため、やはり生き残りは難しそうだ。
「1度主役になったとしても、翌年以降に出演数が減ればその分だけ収入は減ります。例えば、20代の時は人気があって課税事業者だったけれど、歳を重ねて出演機会が減って免税事業者に戻る、というケースも残酷ですが、決して低くない確率で起こり得ますね。もちろん、今は出演数が少なくても来年には急増するということもあり得る世界ですが」
■ゲームのほうがお金になる?
このランク制度に基づく計算によれば、「ジュニア」の人たちが年に300万円を稼ぐためには単純計算で年間に300本以上の出演が必要となる。「ゲームやナレーションなど、アニメや吹き替えの収録よりも単価の高い仕事が入れば食べていけます」(福宮氏)とのことで、やはりアニメや吹き替えの仕事は単価が低いらしい。ちなみにゲームであればワード数・セリフ数でギャランティが決まるケースが多いらしい。
「当然、制作会社やタイトルにより単価はかなり幅があるため一概に『ゲームだから高い』とは言い切れません。ナレーションに関してはケースバイケースですが、近年の不景気の煽りを受け、かなりのベテランナレーターでも単価が落ち込む傾向にあります」
■人気声優に仕事が集中する一方で
声優も一般的な仕事同様、経済状況に左右されやすいようだ。とはいえ、アニメは日本を代表する産業のひとつであり、毎年数多くの作品が制作されているわけで、声優の需要も多いように感じる。VOICTIONは「どの時期と比較するのかによって変化しますが、例えば製作されるアニメの本数は2017年の356本をピークに減少傾向にあります」としつつも「スマホゲームの普及により、例えば10年前と比べると声優の仕事自体は増えていると感じます」と需要の高まりを訴える。
「ただ一部の人気声優に仕事が集中しているおり、“仕事の機会を得られる声優”が増えているとは言い切れません。現在、『声優は1万人程度いる』と言われていますが、感覚としてこの仕事の7~8割程度を約5%の人気声優がこなしており、残りの2~3割を約9500人が取り合っているといった状況にあると思います」
■コロナ禍で密な収録が見直された弊害
声優業界では社会の縮図のような格差がより顕著であった。そして、その傾向はコロナ禍における“分散収録”でさらに加速しているようだ。
「コロナ以前の収録は、出演する声優が原則全員揃い、アニメであれば2~4時間程度、吹き替えでも4~5時間程度、映画となれば丸一日、時には12時間以上をかけて収録していました。しかし、コロナ禍で人が集まることが難しくなった結果、3~4人程度での分散収録となり、声優が1話にかける時間が大幅に減少しました。※以下出典先で
https://bizspa.jp/post-701912/
声優は今では若者が憧れる人気職になったが、スター声優になるどころか、最低限の生活さえ送ることはとても困難である。3人の声優(咲野俊介、岡本麻弥、甲斐田裕子)が立ち上げた有志グループ「VOICTION」が9月29日、声優を対象にした「声優の収入実態調査」を発表した。その結果によれば、7割が年収300万円以下、4割が年収100万円以下、という衝撃的な実情が明らかになった。実に7割もの声優が安定した生活を送れていないことには驚いた。同グループ広報を務め、自身も声優として活動する福宮あやの氏に声優業界の厳しい懐事情を聞いた。
■ランク制度と不況の関係
改めて食うことが難しい職業であるとわかったわけだが調査結果だけではいまいち声優の実情にピンとこない。声優業界の懐事情について聞くと、「メインキャストを任されたからといって、ギャランティが高いわけではありません」(福宮氏、以下同じ)という。何やら特殊な事情があるようだ。
「声優のギャランティは、アニメや吹き替えの場合は“ランク制度”というもので一律に決まります。これは放送媒体、本編の時間の長さなどの法則に従って変動するのですが、新人の場合、そのランクに入る準備段階として“ジュニア”という扱いになり、収録時間の長さなどに関係なく、『1本の収録あたり1万5000円』が事務所に入ります。
そこから2~3割が事務所の手数料として、さらに源泉徴収税を引かれた額がギャラとして、個人へ入金されます。最近は仕事を得るためにはランクを上げることは難しくなり、さらにはランクを下げる声優も珍しくありません」
■年を重ねて人気がなくなることも
「アニメの主役やメインヒロインを複数やるほど人気があれば、本編の収録だけでなく歌の収録、グッズ展開、イベント出演などの仕事も増えるため、年収はもっと高くなることも多いです」
やはり夢のある職業ではある。とはいえ、継続して売れ続けなければいけないため、やはり生き残りは難しそうだ。
「1度主役になったとしても、翌年以降に出演数が減ればその分だけ収入は減ります。例えば、20代の時は人気があって課税事業者だったけれど、歳を重ねて出演機会が減って免税事業者に戻る、というケースも残酷ですが、決して低くない確率で起こり得ますね。もちろん、今は出演数が少なくても来年には急増するということもあり得る世界ですが」
■ゲームのほうがお金になる?
このランク制度に基づく計算によれば、「ジュニア」の人たちが年に300万円を稼ぐためには単純計算で年間に300本以上の出演が必要となる。「ゲームやナレーションなど、アニメや吹き替えの収録よりも単価の高い仕事が入れば食べていけます」(福宮氏)とのことで、やはりアニメや吹き替えの仕事は単価が低いらしい。ちなみにゲームであればワード数・セリフ数でギャランティが決まるケースが多いらしい。
「当然、制作会社やタイトルにより単価はかなり幅があるため一概に『ゲームだから高い』とは言い切れません。ナレーションに関してはケースバイケースですが、近年の不景気の煽りを受け、かなりのベテランナレーターでも単価が落ち込む傾向にあります」
■人気声優に仕事が集中する一方で
声優も一般的な仕事同様、経済状況に左右されやすいようだ。とはいえ、アニメは日本を代表する産業のひとつであり、毎年数多くの作品が制作されているわけで、声優の需要も多いように感じる。VOICTIONは「どの時期と比較するのかによって変化しますが、例えば製作されるアニメの本数は2017年の356本をピークに減少傾向にあります」としつつも「スマホゲームの普及により、例えば10年前と比べると声優の仕事自体は増えていると感じます」と需要の高まりを訴える。
「ただ一部の人気声優に仕事が集中しているおり、“仕事の機会を得られる声優”が増えているとは言い切れません。現在、『声優は1万人程度いる』と言われていますが、感覚としてこの仕事の7~8割程度を約5%の人気声優がこなしており、残りの2~3割を約9500人が取り合っているといった状況にあると思います」
■コロナ禍で密な収録が見直された弊害
声優業界では社会の縮図のような格差がより顕著であった。そして、その傾向はコロナ禍における“分散収録”でさらに加速しているようだ。
「コロナ以前の収録は、出演する声優が原則全員揃い、アニメであれば2~4時間程度、吹き替えでも4~5時間程度、映画となれば丸一日、時には12時間以上をかけて収録していました。しかし、コロナ禍で人が集まることが難しくなった結果、3~4人程度での分散収録となり、声優が1話にかける時間が大幅に減少しました。※以下出典先で