ミサイル、核開発を続けている北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)政権が東欧やドイツで大使館を通じた賃貸事業を行い資金を集めている。同国に対する国際的な制裁の抜け穴となるため、各国政府は事業停止を目指しているものの、強硬措置には踏み込めず対応に苦慮している。
北朝鮮はドイツやブルガリア、ポーランド、ルーマニアで広い施設を保有している。北朝鮮が1948年に建国された際、新たなマルクス主義国家に対して東欧諸国は土地利用を寛容に認めた経緯がある。
ブルガリアの首都ソフィアでは、5920平方メートルの敷地を持つ北朝鮮大使の旧公邸が、現地イベント運営会社テラ・レジデンスに貸し出され結婚式場として利用されている。ベルリンにはユースホテル、ワルシャワには音楽スタジオもある。
施設の賃貸契約は国連決議違反だが、事業は続いている。この4カ国は北朝鮮大使館に施設の賃貸しをやめさせるため、措置を講じていると国連に報告済みだ。
ただ、それぞれが平壌(ピョンヤン)に大使館を構えていることもあり、施設に立ち入って閉鎖するなどの対応は取られていない。
韓国・漢陽大学の張亨寿(チャン・ヒョンス)教授(経済学)は「北朝鮮が大使館の事業によってどれほどの収入を得ているかを把握するのは不可能だ」と述べる。
米国の同盟国が北朝鮮の事業活動を取り締まることさえ難しい状況は、対北朝鮮制裁を科す上での課題を示している。米国は北朝鮮への資金流入を制限するために主として中国に圧力をかけているが、ティラーソン米国務長官は他の国・地域にも一層の取り組みを求めている。
香港・嶺南大学のブライアン・ブリッジズ非常勤教授(アジア政治)は「制裁強化について話すのは非常に簡単だが、それを現場レベルで実行に移そうとすると、それぞれの国に優先事項があるというのが現実だ。北朝鮮から何千マイルも離れており、同国が直接的な脅威でなければ、優先順位はかなり低くなる」と指摘している。(ブルームバーグ David Tweed、Slav Okov)
http://www.sankeibiz.jp/compliance/news/170708/cpd1707080500004-n1.htm
2017.7.8 05:00