武田薬品工業は、漢方薬の主要な原料である生薬「カンゾウ」の量産に日本で初めて成功したと明らかにした。平成32年までに同社製品に使うカンゾウをすべて国産に切り替える方針。
現在は中国からの輸入に頼っているが、価格高騰などで安定調達に不安があり、国内での栽培研究に取り組んでいた。
カンゾウは漢方薬の7割以上に使われる中国原産の植物。日本では厚生労働省が定める有効成分の基準量を満たして量産するのが難しく、年間1600トン近くが中国から輸入されている。日本企業は国産を含むほかの生薬と配合して漢方薬に仕上げている。
しかし近年、中国では生薬が漢方だけでなく化粧品や食品にも使用されるようになって需要が増え、乱獲もあって価格が高騰。日本漢方生薬製剤協会によるとカンゾウの価格は18年から26年までの間に2・4倍以上になったという。
武田薬品は安定調達に向け、12年から日本での量産化に適した品種改良を行い26年、厚労省の基準を満たすことに成功した。北海道で量産を始めており、製品化の準備を進めている。
ドラッグストアなどで販売される一般用医薬品を製造販売する子会社、武田コンシューマーヘルスケアは32年までに、主力製品「タケダ漢方便秘薬」など同社が販売する漢方薬に使うカンゾウをすべて中国産から国産に切り替える方針。
同社は「トレーサビリティー(生産履歴管理)が強化される。国内産という安心安全もアピールできる」としている。
背景に需要増
日本漢方生薬製剤協会によると、一般用医薬品を含む漢方製剤の26年の生産額は22年に比べて16%増の1581億円となった。医薬品市場の2%程度だが、全体が伸び悩む中では成長分野となっており、生産態勢を強化する動きが広がっている。
漢方薬の需要が伸びているのは、効果が科学的に実証されるようになり、ここ十数年で医学部の講義でも取り上げられるようになったからだ。この結果、医療現場での処方が増えているという。抗がん剤の副作用を抑えるのに使用するなど、化合物の医薬品との併用で評価されている。
武田薬品工業がカンゾウの量産化にめどをつける一方で、漢方薬大手のツムラは、日本に6拠点ある生薬の栽培地の面積を拡大する計画。主要な栽培地である北海道での年間調達量を、将来的に現状の3倍程度の2000トンに増やしたいという。
製紙大手の王子ホールディングスは25年、製紙原料の植物研究で培った技術を用いる「医療植物研究室」を設置。国内産カンゾウの開発などを進めている。
農林水産省は、生薬栽培を成長分野と位置づけ26年から農家などへの支援制度を開始。今年度予算には約5億6千万円を計上した。
http://www.sankei.com/west/news/170731/wst1707310011-n1.html
http://www.sankei.com/west/news/170731/wst1707310011-n2.html
武田薬品工業が品種改良したカンゾウ(武田コンシューマーヘルスケア提供)