対話の意志がない相手に秋波
韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の対北朝鮮政策を見ると、今後の朝鮮半島情勢への不安を感じる。最大の懸念は、核開発やICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射など、軍事的挑発を続ける北朝鮮への対応だ。
文大統領は一貫して、北朝鮮との対話を重視している。文政権は、経済面を中心に中国との関係を強化したい。そのためにも北朝鮮との融和政策が重要なのだろう。
しかし、そもそも北朝鮮には対話の意思がない。また、文政権内には、米国のミサイル防衛システムの配備は撤回しないとの主張もある。
文政権の政策の矛盾が続く間、北朝鮮の軍事的挑発を続け国際社会に制裁の解除などを求め続けるだろう。当面、朝鮮半島を巡る不安定な状況が続きそうだ。
韓国・文政権が暴走を助長する
革新系の政治家として、従来の政治との決別を主張してきた文大統領の政策には矛盾がある。それは、対話の意思を持たない北朝鮮に対して、対話を呼びかけていることだ。
ある韓国のエコノミストは、「北朝鮮が対話に関心を示さない中で、融和政策に効果があるとは思わない。むしろ、北朝鮮の暴走を助長するのではないか」との懸念を述べていた。
北朝鮮に対して冬季オリンピックの共同開催や、軍当局者会談を提案するなど、対話政策は強化されている。だが、これまでの展開を振り返ると、どれだけ韓国が対話を呼びかけても、北朝鮮が態度を軟化させるとは考えづらい。
北朝鮮が重視していることは、ICBMや核兵器という軍事的な脅威を米国に突きつけ、制裁解除などの有利な条件を引き出すことだ。言い換えれば、北朝鮮にとって韓国の要請にこたえる優先度は低い。
韓国には中国との関係を重視したいとの考えもある。特に、韓国が米国のミサイル防衛システムの配備を認めた結果、中国は韓国に対して報復措置を発動した。
その結果、現代自動車の売り上げが減少するなど、財閥企業の経営にもマイナスの影響が出ている。米国が自由貿易協定(FTA)の再交渉を求める中、中国は文政権の拠り所としての存在感を強めている。
中国は、北朝鮮に圧力をかけ続けた結果、金独裁政権が更なる暴走に向かうことを避けたい。その場合には、中朝国境に難民が押し寄せ、共産党の支配体制が揺らぐ恐れがある。そのため、表向きは北朝鮮への圧力をかけつつも、中国は北朝鮮を追い込みすぎないようにしている。米国はこの対応を手ぬるいと考え、中国企業への制裁を行っている。
日本を利用しようとする韓国への対策
同時に、韓国は国際社会を通した北朝鮮への圧力行使のチャネルも確保しておきたい。文政権がわが国とのシャトル外交を再開した背景には、いざとなれば日本を通して北朝鮮に圧力をかければよいとの思惑があるのだろう。
それは、中国への配慮という点でも重要だ。見方を変えると、わが国が韓国の意に従わない場合、韓国は慰安婦問題などの再交渉を持ち出し、反日姿勢を強めるだろう。
政策に矛盾を抱える韓国に対して、日本は冷静に対応すればよいだろう。2015年12月に日韓両国が確認した慰安婦問題の最終的かつ不可逆的な解決に関する合意の遵守のみを求めればよい。それが守られないのであれば、要請には応じない。感情的になって韓国を批判するのではなく、冷静に、政府間の合意に沿った行動を行うだけでよいはずだ。
むしろ、日本はアジア各国との関係強化に力を入れるべきだ。経済連携に関する議論を進め、わが国の主張に賛同する国にはインフラ投資などで応える。これによって、親日国を増やすことができるだろう。
それは、国際社会における日本の発言力を高めるためにも欠かせない。それが、中長期的な国力の引き上げと、アジア太平洋地域の安定にもつながると考える。
米国のトランプ政権は内向き志向を強め、自国第一の政治を重視している。一方、中国は覇権強化を目指している。この状況の中でアジア各国などとの関係強化を進めることができないと、日本がアジア地域の中で孤立するリスクが高まる。
それを避けるためにも、わが国は世界経済の成長の源泉であるアジア新興国との関係を強化し、国際社会の連携を呼び掛けられるだけの発言力をつけるべきだ。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52368
韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の対北朝鮮政策を見ると、今後の朝鮮半島情勢への不安を感じる。最大の懸念は、核開発やICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射など、軍事的挑発を続ける北朝鮮への対応だ。
文大統領は一貫して、北朝鮮との対話を重視している。文政権は、経済面を中心に中国との関係を強化したい。そのためにも北朝鮮との融和政策が重要なのだろう。
しかし、そもそも北朝鮮には対話の意思がない。また、文政権内には、米国のミサイル防衛システムの配備は撤回しないとの主張もある。
文政権の政策の矛盾が続く間、北朝鮮の軍事的挑発を続け国際社会に制裁の解除などを求め続けるだろう。当面、朝鮮半島を巡る不安定な状況が続きそうだ。
韓国・文政権が暴走を助長する
革新系の政治家として、従来の政治との決別を主張してきた文大統領の政策には矛盾がある。それは、対話の意思を持たない北朝鮮に対して、対話を呼びかけていることだ。
ある韓国のエコノミストは、「北朝鮮が対話に関心を示さない中で、融和政策に効果があるとは思わない。むしろ、北朝鮮の暴走を助長するのではないか」との懸念を述べていた。
北朝鮮に対して冬季オリンピックの共同開催や、軍当局者会談を提案するなど、対話政策は強化されている。だが、これまでの展開を振り返ると、どれだけ韓国が対話を呼びかけても、北朝鮮が態度を軟化させるとは考えづらい。
北朝鮮が重視していることは、ICBMや核兵器という軍事的な脅威を米国に突きつけ、制裁解除などの有利な条件を引き出すことだ。言い換えれば、北朝鮮にとって韓国の要請にこたえる優先度は低い。
韓国には中国との関係を重視したいとの考えもある。特に、韓国が米国のミサイル防衛システムの配備を認めた結果、中国は韓国に対して報復措置を発動した。
その結果、現代自動車の売り上げが減少するなど、財閥企業の経営にもマイナスの影響が出ている。米国が自由貿易協定(FTA)の再交渉を求める中、中国は文政権の拠り所としての存在感を強めている。
中国は、北朝鮮に圧力をかけ続けた結果、金独裁政権が更なる暴走に向かうことを避けたい。その場合には、中朝国境に難民が押し寄せ、共産党の支配体制が揺らぐ恐れがある。そのため、表向きは北朝鮮への圧力をかけつつも、中国は北朝鮮を追い込みすぎないようにしている。米国はこの対応を手ぬるいと考え、中国企業への制裁を行っている。
日本を利用しようとする韓国への対策
同時に、韓国は国際社会を通した北朝鮮への圧力行使のチャネルも確保しておきたい。文政権がわが国とのシャトル外交を再開した背景には、いざとなれば日本を通して北朝鮮に圧力をかければよいとの思惑があるのだろう。
それは、中国への配慮という点でも重要だ。見方を変えると、わが国が韓国の意に従わない場合、韓国は慰安婦問題などの再交渉を持ち出し、反日姿勢を強めるだろう。
政策に矛盾を抱える韓国に対して、日本は冷静に対応すればよいだろう。2015年12月に日韓両国が確認した慰安婦問題の最終的かつ不可逆的な解決に関する合意の遵守のみを求めればよい。それが守られないのであれば、要請には応じない。感情的になって韓国を批判するのではなく、冷静に、政府間の合意に沿った行動を行うだけでよいはずだ。
むしろ、日本はアジア各国との関係強化に力を入れるべきだ。経済連携に関する議論を進め、わが国の主張に賛同する国にはインフラ投資などで応える。これによって、親日国を増やすことができるだろう。
それは、国際社会における日本の発言力を高めるためにも欠かせない。それが、中長期的な国力の引き上げと、アジア太平洋地域の安定にもつながると考える。
米国のトランプ政権は内向き志向を強め、自国第一の政治を重視している。一方、中国は覇権強化を目指している。この状況の中でアジア各国などとの関係強化を進めることができないと、日本がアジア地域の中で孤立するリスクが高まる。
それを避けるためにも、わが国は世界経済の成長の源泉であるアジア新興国との関係を強化し、国際社会の連携を呼び掛けられるだけの発言力をつけるべきだ。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52368