7月28日、駐米日本大使が主催した会合(第4回Japan-U.S. Military Statesmen Forum )でアメリカ太平洋軍司令官のハリー・ハリス海軍大将が講演し、アジア太平洋地域(太平洋からインド洋にかけての広大な海域の沿岸諸国ならびに海域)が直面している軍事的脅威について説明した。説明の概要は以下のとおりである。
アジア太平洋地域が直面する軍事的脅威
(1)北朝鮮の核弾道ミサイル
ICBMを手にした北朝鮮は、国際平和と安定に対する「明確かつ差し迫った」脅威である。それは、日本とアメリカにとってだけでなく中国にとってもロシアにとっても、そして世界中にとっても共通の脅威といえる。
なぜならば、北朝鮮のミサイルは日本やアメリカのみならず、あらゆる方向に向けることができるからである。したがって、国際社会は協調して、とりわけ日米韓は緊密に連携して北朝鮮に対する経済制裁を強化し続けなければならない。
北朝鮮に対する経済制裁という外交努力が効を奏するには、日米韓は現実味のある強力な戦力を見せつける必要がある。そのためにアメリカ海軍はイージス艦を伴った空母打撃群を派遣し、世界最強の攻撃原潜を出動させ、そして爆撃機もこの地域に常駐させている。
また、日本の防衛を鉄壁に維持するため、最新最強のF-35戦闘機、P-8哨戒機そしてMV-22(オスプレイ)を展開させているのである。
中国は北朝鮮唯一の同盟国であり、北朝鮮に対して最大の影響力を持っている。そこで、以上のような軍事的支援を伴った北朝鮮に対する経済的・外交的圧力とともに、中国による北朝鮮への経済的圧力が強化されることが、朝鮮半島の平和が保たれるために何よりも大切である。
(2)中国による海洋進出
国際社会が北朝鮮の核兵器開発を牽制するために中国の協力を期待しているからといって、中国による強引な海洋侵出を容認することはできない。今週も(東シナ海上空で)米軍機に対して中国戦闘機が危険な方法で接近して威嚇するという事案が発生した。
このような無責任で危険極まりない中国側の行動が(東シナ海や南シナ海の上空で)頻発しているのは、理解に苦しむところである。
中国は、南シナ海に人工島を建設して軍事拠点化し、領域紛争中の海域や島嶼環礁に対する中国の主権を既成の事実としようとしている。それらの軍事施設を伴った人工島は、南シナ海の物理的、政治的な状況を根本的に変えつつある。しかし、かねてより指摘しているように、われわれは“偽の島”を真に受けてはならない。
中国軍艦はアメリカの排他的経済水域内で作戦行動をとっているが、それに対してアメリカは何ら苦言を呈していない。なぜならば、そのような海域は公海であるからだ。ところが、アメリカの軍艦や軍用機が中国軍艦や中国軍機と同じ行動を(中国の排他的経済水域内で)とると中国当局は抗議をしてくる。
このように、中国は国際的ルールを選択的に用いているのである。
かねてより繰り返し主張してきたように、中国には現実的な対処、すなわち「このようにあってほしい」と期待するのではなく「このようである」として対処しなければならない。我々は、中国と協調できる部分をより発展させるために、中国と協調できない部分に関して妥協してしまうことは避けねばならない。
(3)ISのフィリピンへの勢力浸透
フィリピンに勢力を浸透させているISも、アジア太平洋地域における大きな軍事的脅威の1つと言える。
フィリピン南部に勢力を張り巡らせているアブ・サヤフ(イスラム原理主義組織)の指導者の1人であるイスニロン・ハピロンは、昨年、ISの東南アジア指揮官に指名されている。
(今年の5月から6月にかけて)ミンダナオ島のマラウィ市におけるフィリピン軍治安部隊(アメリカ軍特殊部隊も支援していた)とアブ・サヤフの武力衝突は、東南アジア地域において発生したISの影響を受けた武装勢力による戦闘としては最大規模のものであった。
マラウィ市での戦闘は、外国から流入したISのイデオロギーや戦闘資源やノウハウが地元出身者の間にも浸透し、東南アジアにも拡散しつつあることを物語っている。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50675
(>>2以降に続く)
アジア太平洋地域が直面する軍事的脅威
(1)北朝鮮の核弾道ミサイル
ICBMを手にした北朝鮮は、国際平和と安定に対する「明確かつ差し迫った」脅威である。それは、日本とアメリカにとってだけでなく中国にとってもロシアにとっても、そして世界中にとっても共通の脅威といえる。
なぜならば、北朝鮮のミサイルは日本やアメリカのみならず、あらゆる方向に向けることができるからである。したがって、国際社会は協調して、とりわけ日米韓は緊密に連携して北朝鮮に対する経済制裁を強化し続けなければならない。
北朝鮮に対する経済制裁という外交努力が効を奏するには、日米韓は現実味のある強力な戦力を見せつける必要がある。そのためにアメリカ海軍はイージス艦を伴った空母打撃群を派遣し、世界最強の攻撃原潜を出動させ、そして爆撃機もこの地域に常駐させている。
また、日本の防衛を鉄壁に維持するため、最新最強のF-35戦闘機、P-8哨戒機そしてMV-22(オスプレイ)を展開させているのである。
中国は北朝鮮唯一の同盟国であり、北朝鮮に対して最大の影響力を持っている。そこで、以上のような軍事的支援を伴った北朝鮮に対する経済的・外交的圧力とともに、中国による北朝鮮への経済的圧力が強化されることが、朝鮮半島の平和が保たれるために何よりも大切である。
(2)中国による海洋進出
国際社会が北朝鮮の核兵器開発を牽制するために中国の協力を期待しているからといって、中国による強引な海洋侵出を容認することはできない。今週も(東シナ海上空で)米軍機に対して中国戦闘機が危険な方法で接近して威嚇するという事案が発生した。
このような無責任で危険極まりない中国側の行動が(東シナ海や南シナ海の上空で)頻発しているのは、理解に苦しむところである。
中国は、南シナ海に人工島を建設して軍事拠点化し、領域紛争中の海域や島嶼環礁に対する中国の主権を既成の事実としようとしている。それらの軍事施設を伴った人工島は、南シナ海の物理的、政治的な状況を根本的に変えつつある。しかし、かねてより指摘しているように、われわれは“偽の島”を真に受けてはならない。
中国軍艦はアメリカの排他的経済水域内で作戦行動をとっているが、それに対してアメリカは何ら苦言を呈していない。なぜならば、そのような海域は公海であるからだ。ところが、アメリカの軍艦や軍用機が中国軍艦や中国軍機と同じ行動を(中国の排他的経済水域内で)とると中国当局は抗議をしてくる。
このように、中国は国際的ルールを選択的に用いているのである。
かねてより繰り返し主張してきたように、中国には現実的な対処、すなわち「このようにあってほしい」と期待するのではなく「このようである」として対処しなければならない。我々は、中国と協調できる部分をより発展させるために、中国と協調できない部分に関して妥協してしまうことは避けねばならない。
(3)ISのフィリピンへの勢力浸透
フィリピンに勢力を浸透させているISも、アジア太平洋地域における大きな軍事的脅威の1つと言える。
フィリピン南部に勢力を張り巡らせているアブ・サヤフ(イスラム原理主義組織)の指導者の1人であるイスニロン・ハピロンは、昨年、ISの東南アジア指揮官に指名されている。
(今年の5月から6月にかけて)ミンダナオ島のマラウィ市におけるフィリピン軍治安部隊(アメリカ軍特殊部隊も支援していた)とアブ・サヤフの武力衝突は、東南アジア地域において発生したISの影響を受けた武装勢力による戦闘としては最大規模のものであった。
マラウィ市での戦闘は、外国から流入したISのイデオロギーや戦闘資源やノウハウが地元出身者の間にも浸透し、東南アジアにも拡散しつつあることを物語っている。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50675
(>>2以降に続く)