さて、今週ご紹介するエンターテインメントは、久々となるハリウッド&中国ネタでございます。
5月4日付の本コラム「中国に媚びたが“冷や水”…目が覚めたハリウッド、買収案件『金ない』次々ご破算の深い事情」
http://www.sankei.com/west/news/170504/wst1705040006-n1.html
でご紹介したように、恐らく今年、米を抜き世界最大の映画市場に成長するとみられる中国に近年、ハリウッドが媚(こ)びまくっているにも関わらず、最近、中国政府と米政府の“方針転換”によって結局、冷や水を浴びせられる結果に陥(おちい)っている状況についてご説明しました。
だがしかし。そうした状況が最近、さらに加速しているようなのです。平たく言えば、両国の政府がいよいよ、中国市場に媚びを売り続けるハリウッドと、“めざせハリウッド”を旗印に米の映画・メディア関連企業の買収をもくろむ中国の産業界に“くさび”を打ち込みつつあるのです。
というわけで、今週の本コラムでは、この新しい状況についてご説明いたします。
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そもそもハリウッドが中国に媚びを売りまくるのは、中国の人民が派手&目がチカチカするようなCG(コンピューター・グラフィックス)に代表される特殊撮影満載のハリウッドのブロックバスター(娯楽大作)に熱狂し過ぎているからだと思っていたのですが、どうやらそれはあくまで人民レベルのお話。少なくとも、当局(政府)は昔から苦々しく感じているようです。
7月25日付の米紙ロサンゼルス・タイムズや8月3日付の米経済系ニュース専門チャンネルCNBC(いずれも電子版)などが報じていますが、中国当局が今夏、自国の映画産業を守るため、かき入れ時のサマーシーズンなどにハリウッドの娯楽大作といった海外作品の上映を制限する通称「ブラックアウト」を2015年以来、1年ぶりに本格実施したのです。
この「ブラックアウト」、中国での映画需要がピークを迎える7月から8月のサマーシーズンをはじめ、2月の旧正月(春節)、10月の国慶節(こっけいせつ=建国記念日)の大型連休中に行われています。
あくまで非公式な措置で、公式文書などは存在していませんが、上海にある市場調査会社「チャイナ・マーケット・リサーチ・グループ」のトップ、ベン・カヴェンダー氏が前述のCNBCに語ったところによると、
2004年、中国・香港合作の映画「ラヴァーズ」(チャン・イーモウ監督、英題=House of Flying Daggers)の中国での興行収入を増やすため、この年の夏、初めて行われたといい、以降、毎年実施されているようです。
ちなみに今夏の場合、7月中旬から8月下旬にかけて、ハリウッドの娯楽大作の公開が予定されていないことから、「ブラックアウト」は既に始まっているとみられています。そして当然ながら、中国外務省も、中国全土のテレビやラジオ、新聞、出版社を管轄する機関「国家新聞出版広電総局」も前述のCNBCの取材に対し、ノーコメントを貫いています。
そして今夏、この「ブラックアウト」の直撃を受けたのが米などで大ヒット中の「スパイダーマン:ホームカミング」(ジョン・ワッツ監督)です。
■1000億円級の大ヒット作、中国では夏休み「後」に公開…
この作品、米では7月7日、その前後に世界各国で公開され、現在、米で約2億9400万ドル(約325億円)、全世界で6億7000万ドル(約741億円)を稼ぐ大ヒットを記録中で、日本でも3連休初日の8月11日に封切りです。
無論、映画人口が“爆買い”ならぬ“爆増”している中国でこの時期、公開すれば全世界での興収が大幅に上乗せされるのは間違いないのですが、中国の映画レビューサイト、Doubanによると、何と中国での公開はサマーシーズンが終わった9月8日…。
また、スパイダーマンのシリーズと同様、根強い人気のSFシリーズの最新作「猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)」も米では7月14日公開ですが、中国での公開は9月15日です。
http://www.sankei.com/west/news/170816/wst1708160007-n1.html
(>>2以降に続く)