刺激しなければ安全か
現状の日本の安全保障をめぐる議論を百田氏はどう見ているか。インタビューの第2弾をお届けしよう。
***
TBSの「サンデーモーニング」という番組で、亀石倫子さんという弁護士の方が発言したコメントがネット上で話題になっていました。
「(日本上空を北朝鮮のミサイルが飛ぶとしても)今の状態をなぜ存立危機事態と言えるのか。国民の生命、自由、幸福追求を根底から覆えすと言えるのか。国民が納得したうえでなければ、集団的自衛権を行使するのは憲法違反だし、絶対に許されない」
という意見だそうです。
亀石さんの主張通りにすれば、グアムに向かうミサイルの迎撃はしてはならない、ということになります。憲法違反ですから。
彼女に限らず、仮に北朝鮮のミサイルが日本の上空を飛んでも放っておいたほうがいい、と考える人は意外といるようです。作家の室井佑月さんも、「迎撃したら破片はどうなるのか」と懸念を示していたそうです。
彼女らに限らず、「北朝鮮を刺激するな」という立場の人は少なからずいます。ミサイルを迎撃なんかしたら逆効果だ、という人たちです。
しかし、こういう人たちはそもそも戦争がどういうものなのか、わかっていないのではないでしょうか。
「こちらが戦わなければ、戦争は起きない」
そう思っているのかもしれませんが、これは私の作品『カエルの楽園』に出てくる、平和ボケのカエルの主張と同じです。
ところが意外と現実の国際政治でもこのような考えをもとに論じる人は多いようです。
確かに、こちらが抵抗したり、戦ったりしなければ「戦争」にはならないかもしれません。ではその結果、どうなるか。
歴史が教えてくれるのは「一方的な虐殺が起こる」ということです。
『カエルの楽園』が現実化した
『カエルの楽園』を書いたときに、強く念頭にあったのは中国の動きでした。中国の「公船」と称する船が、日常的に尖閣諸島付近に現れている。またある時には中国軍機が自衛隊機に異常接近するといった挑発的行動に出るという事件もありました。
ところが日本国内の反応は極めて鈍い。
相も変わらず左翼的なメディアは、中国との危機を煽るな、隣国と仲良くせよと言うばかりで、相手を信用すれば平和が保てると言わんばかりの論調を繰り返していました。
そこで一種の近未来を描いた寓話として書いたのが『カエルの楽園』だったのです。
しかし、その後この本で書いたようなことが次々と現実化していきました。私が思っている以上に、事態の推移は早かったのです。いつの間にか、近未来の寓話ではなくて、現実世界の寓話に近くなりました。
さらに中国のみならず北朝鮮が先鋭化していったのです。日本の安全保障環境は極めて厳しいと言わざるをえません。
若い人に知ってほしいこと
もともと『カエルの楽園』を寓話仕立てで書いたのは、とにかく若い人に日本を取り巻く現状を理解してもらわねばならない、という危機感があったからです。
その危機感が高まる一方なので、『カエルの楽園』は、今月末、通常よりも1年ほど早く文庫化して発売することにしました。
実のところ、まだ単行本も売れ行きが止まったわけではないのですが、例外的に時期を早めることにしたのです
(余談ですが、現在の状況を少し書き加えて、新しいヴァージョンになっているので、単行本で読まれた方はどこが変わったのかを見つけていただければ幸いです)。文庫にすれば、若い人が手に取りやすいと考えたからです。
この作品には、平和さえ唱えていれば平和が保てると考える能天気なカエルが多数登場します。現実の日本でいえば、「憲法9条さえ守っていれば平和だ」と考える、いわば「9条教」の信者のような人がこれにあたります。
困ったことに、60歳以上の多くの人は、憲法9条をひたすら大切に思っている、「9条教」の信者の方が多いようです。特に団塊の世代にその傾向が強くあります。年配の「9条教」信者のような方と、私は何度もお話をして、9条の問題点や矛盾を指摘してきました。
https://www.dailyshincho.jp/article/2017/08230700/?all=1
(>>2以降に続く)
現状の日本の安全保障をめぐる議論を百田氏はどう見ているか。インタビューの第2弾をお届けしよう。
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TBSの「サンデーモーニング」という番組で、亀石倫子さんという弁護士の方が発言したコメントがネット上で話題になっていました。
「(日本上空を北朝鮮のミサイルが飛ぶとしても)今の状態をなぜ存立危機事態と言えるのか。国民の生命、自由、幸福追求を根底から覆えすと言えるのか。国民が納得したうえでなければ、集団的自衛権を行使するのは憲法違反だし、絶対に許されない」
という意見だそうです。
亀石さんの主張通りにすれば、グアムに向かうミサイルの迎撃はしてはならない、ということになります。憲法違反ですから。
彼女に限らず、仮に北朝鮮のミサイルが日本の上空を飛んでも放っておいたほうがいい、と考える人は意外といるようです。作家の室井佑月さんも、「迎撃したら破片はどうなるのか」と懸念を示していたそうです。
彼女らに限らず、「北朝鮮を刺激するな」という立場の人は少なからずいます。ミサイルを迎撃なんかしたら逆効果だ、という人たちです。
しかし、こういう人たちはそもそも戦争がどういうものなのか、わかっていないのではないでしょうか。
「こちらが戦わなければ、戦争は起きない」
そう思っているのかもしれませんが、これは私の作品『カエルの楽園』に出てくる、平和ボケのカエルの主張と同じです。
ところが意外と現実の国際政治でもこのような考えをもとに論じる人は多いようです。
確かに、こちらが抵抗したり、戦ったりしなければ「戦争」にはならないかもしれません。ではその結果、どうなるか。
歴史が教えてくれるのは「一方的な虐殺が起こる」ということです。
『カエルの楽園』が現実化した
『カエルの楽園』を書いたときに、強く念頭にあったのは中国の動きでした。中国の「公船」と称する船が、日常的に尖閣諸島付近に現れている。またある時には中国軍機が自衛隊機に異常接近するといった挑発的行動に出るという事件もありました。
ところが日本国内の反応は極めて鈍い。
相も変わらず左翼的なメディアは、中国との危機を煽るな、隣国と仲良くせよと言うばかりで、相手を信用すれば平和が保てると言わんばかりの論調を繰り返していました。
そこで一種の近未来を描いた寓話として書いたのが『カエルの楽園』だったのです。
しかし、その後この本で書いたようなことが次々と現実化していきました。私が思っている以上に、事態の推移は早かったのです。いつの間にか、近未来の寓話ではなくて、現実世界の寓話に近くなりました。
さらに中国のみならず北朝鮮が先鋭化していったのです。日本の安全保障環境は極めて厳しいと言わざるをえません。
若い人に知ってほしいこと
もともと『カエルの楽園』を寓話仕立てで書いたのは、とにかく若い人に日本を取り巻く現状を理解してもらわねばならない、という危機感があったからです。
その危機感が高まる一方なので、『カエルの楽園』は、今月末、通常よりも1年ほど早く文庫化して発売することにしました。
実のところ、まだ単行本も売れ行きが止まったわけではないのですが、例外的に時期を早めることにしたのです
(余談ですが、現在の状況を少し書き加えて、新しいヴァージョンになっているので、単行本で読まれた方はどこが変わったのかを見つけていただければ幸いです)。文庫にすれば、若い人が手に取りやすいと考えたからです。
この作品には、平和さえ唱えていれば平和が保てると考える能天気なカエルが多数登場します。現実の日本でいえば、「憲法9条さえ守っていれば平和だ」と考える、いわば「9条教」の信者のような人がこれにあたります。
困ったことに、60歳以上の多くの人は、憲法9条をひたすら大切に思っている、「9条教」の信者の方が多いようです。特に団塊の世代にその傾向が強くあります。年配の「9条教」信者のような方と、私は何度もお話をして、9条の問題点や矛盾を指摘してきました。
https://www.dailyshincho.jp/article/2017/08230700/?all=1
(>>2以降に続く)