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アン・シネを長く撮り続けてきた韓国の名物カメラマンのカン・ミョンホ氏も、「スポーツ選手って、女性であっても言葉が少なかったり、ボキャブラリーが少なかったり、朴訥としている場合が多いのですが、彼女にはそういう悪い意味でのスポーツ選手らしさがまったくない」と語っていたが、まさにその通りだと思った。
込み上げてきたものをグッと抑えながら、アン・シネも言うのだ。
「日本で泣いたことはないですよ(笑)。優勝したら泣いちゃいそうですけど(大笑)」
ファッションばかり注目されることの是非は?
そんな彼女の照れ隠しを察知してこちらも質問を変えていた。話題は今やアン・シネの代名詞ともなっている“ファッション”だ。
韓国はもちろん、今や日本でも膝上30センチのミニスカートや、ボディラインにジャストフィットしたウェアで話題を振りまいているが、毎度のように“ファッション”について問われ、クローズアップされていることをアン・シネ本人はどう思っているのだろか。
「私はまったく問題ありませんよ。むしろファッションのことでも話題になることは良いことだと思います。一応、プロである以上話題を提供することは必要でしょうし、どうせ着るなら人よりもうまく綺麗に着こなしたい。うまく着こなせると自信も芽生えますし、すっきりした気持ちでフェアウェイにも立てます。
そういう私の姿を通じて、多くの人々に影響を与えられると思うと、それはとても光栄なことにも感じます。ファッションで注目されることを負担に思ったりすることもありません。むしろ感謝すべきことでもあると思うんです」
さすが韓国の現役プロたちが同業プロたちのルックスや人気を評価した“禁断のアンケート”で、自己プロデュースの達人と呼ばれているだけはある回答だ。
アン・シネは話題を提供することもプロの条件と考えているようだ。
「それにプロゴルフは、サッカーや野球のようにいつも同じようなユニホームを着てするスポーツではないじゃないですか(笑)。同じウェアだったら着る側も見る側も飽きちゃうと思うんです」
“ミニスカ規制”にも持論を展開
ただ、だからといって見た目重視や目立ち根性むき出しは自分のスタイルではないと語る。
スカートの丈が極端に短かったり、過度に肌を露出させるのはナンセンス。
昨今、LPGAが選手着用ウェアに規定を設ける“ミニスカ規制”が話題になったが、アン・シネは「私もLPGAの方針には肯定的に。ゴルフというスポーツのトラディショナルな部分は守るべきです」という見解を持っている。
プロとして話題を振りまく一方で、ゴルフの伝統は守るべき。そう語るアン・シネは、ひとつのトーナメントに出場するとき、どれだけのウェアを準備するのだろうか。
「そうですね。一日に2着は用意しますね。ですから、4日間大会で8着ぐらい用意することになります。以前はミニスカートを避けたジンクスもありますが、今はそういうこだわりもありません。
あるとしたら、一度着たウェアは少なくともその週には着ないようにすること。二度目の着用となっても、洗濯して数週間の間をおいてから着ますね」
――ゴルフウェアも多くなって大変ですね? ちなみに誰が洗濯するんですか?
「洗濯ですか? 洗濯機がしてくれます(笑)」
ときに真摯に、ときに和やかに、ときに笑いを誘ってインタビューを楽しむアン・シネ。話を聞けば聞くほど、まだ見ぬ一面があるように思えてくるから不思議だ。
(文=慎 武宏)
(おわり)