北朝鮮による「弾道ミサイル発射」や「6回目の核実験」を受けて、国際社会は、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の暴走を阻止するため、制裁強化に動いている。一方、日本の左派の中には「北朝鮮の核保有を認めよ」という声もある。
だが、狂気の独裁者に「核・ミサイル」を持たせることは、日本の存亡に関わる危機である。評論家の八幡和郎氏が緊急寄稿した。
北朝鮮への私の意見は「軍事行動をとる覚悟」を決めたうえで、核戦力の完全放棄を、金一族の安全と体制維持の確約と引き換えに要求することだ。主役は米国だが、日本や韓国は「戦争のリスク」を怖がらない一方、正恩氏を安心させる最大限の保証をすることだ。
悔やまれるのは、リビアの独裁者、カダフィの排除だった。
「大量破壊兵器の放棄」と引き換えに、カダフィ体制の安泰を保証していたが、英国のキャメロン首相(当時)と、フランスのサルコジ大統領(同)が「排除」を主張し、オバマ米大統領(同)も同意した。
あれで、正恩氏の父、金正日(キム・ジョンイル)総書記(同)は「核兵器を放棄しない」決意を固めた。「三馬鹿トリオ」の罪は大きい。
北朝鮮問題はやはり、「核・ミサイルの完全放棄」と「正恩体制の維持」を交換するしか道はない。安倍晋三首相なら、国内の強硬派をこの点で説得できる力があるはずだ。
第二次世界大戦は「英仏がミュンヘン協定でチェコを犠牲にしたから起きた」という見方が強いが、「ポーランド併合も容認していたら起きなかった」という人もいる。
しかし、ポーランドを差し出せば、ヒトラーがアルザス・ロレーヌ(=ドイツ国境に近いフランス北東部)をフランスから取り戻す野心を膨らませただけだ。ドイツに対して融和的な態度があり得たのは、終戦のときソ連の侵攻を止めるためにであって、開戦のときではない。
北朝鮮の核保有を認めることは、北朝鮮がこれから体制存続以上の理不尽な要求を突き付けてきたり、核兵力のイスラム諸国やテロリストへの拡散につながりかねない。
これまでの核保有国の指導者と正恩氏は根本的に違う。北朝鮮の核保有を認めることは、世界が根本的に変わるということになる。
日本が恐れるべきは、米国が、中距離核ミサイルの保有を北朝鮮に認めることだ。
そうなったら、「金を出せ」「歴史問題で謝れ」「在日朝鮮人に選挙権も与えろ」「朝鮮学校も前川喜平・前文科事務次官の主張通りに無償化しろ」「拉致問題も追及するな」「防衛問題でも北朝鮮の嫌がることをするな」などと、何でも要求を聞かざるを得なくなりかねない。
いま日本を守っているのは、「東京に核爆弾を落としたら、米国が平壌(ピョンヤン)に落とすだろう」ということだけだ。平和主義者も、この現実はもはや否定できまい。
ただ、それはドナルド・トランプ大統領だからで、オバマ氏のような大統領がまた出てきたら、その脅しも効かない。
日本にとっては若干のリスクはあっても、今回、トランプ氏が強硬に出てくれることが、国益にかなうのだ。
http://www.zakzak.co.jp/soc/news/170907/soc1709070015-n1.html
http://www.zakzak.co.jp/soc/news/170907/soc1709070015-n2.html
(>>2以降に続く)
トランプ氏(AP)が金氏に強硬だからまだましだが…
金正恩氏(ロイター)
八幡和郎氏