♦︎ 輸出管理問題の本質 韓国「迂回」に認識甘く
編集委員 高坂哲郎 日本経済新聞
2019年8月9日 23:00
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO48426270Z00C19A8000000?unlock=1&s=1
(略)
「日韓間でも遠からず輸出は動き出す。韓国側の猛反発は一体なんだったのだろうという話になるだろう」
と日本の輸出管理界の重鎮の一人は確信に満ちた表情で語る。
■ フッ化水素、韓国企業が中国工場に再輸出
今回、日本政府が韓国向け輸出管理強化に乗り出したきっかけの一つとして、ある日本企業が
「韓国内で使われる」
との韓国企業の言い分をうのみにして短期間のうちに慌てて輸出した物資(フッ化水素)が、実は韓国側のグループ企業の中国工場に再輸出されていたという一件があった。
最終的な目的地を偽ったり、意図的にぼかしたりして取引することを「迂回輸出」という。北朝鮮傘下の偽装貿易会社などが頻繁に使う手口で、輸出管理の世界では最も問題視される。
中国は北朝鮮の迂回輸出の中継地点としてしばしば利用されており、日本の当局がこれを問題視するのは当然だ。
しかし、今回の日韓の輸出管理を巡る摩擦を通じてわかったのは、韓国が迂回輸出を重大な問題とはみていなかったということだ。
フッ化水素という化学兵器サリンの製造工程にも使える物質を、出荷元の日本企業に黙って中国に再輸出していたにもかかわらず、
「同じ韓国のグループ企業間の取引だから問題ないだろう」
といった程度の感覚で韓国側はいたのだ。
これでは輸出管理に取り組むそもそもの理由を韓国が理解していないことになる。
今回問題視された、日本から韓国経由で中国に渡ったフッ化水素は全量が正規の製品製造に用いられたことが確認されたため、経済産業省が出荷元の日本企業に出した処分は「厳重注意」のレベルで済んだとみられる。
ただ、もしも先々、韓国経由で再輸出された軍民両用物資が、通常兵器や大量破壊兵器の製造に流用される事態が明るみに出れば、関係する日韓企業や韓国の輸出規制当局は、日本のみならず米欧など多くの国々から非難されることになる。
■ 韓国は警告を生かせるか
輸出管理という営みは、家庭における「火の用心」と似ている。火の不始末で火事を起こせば自宅が燃えてしまうだけでなく、近隣の家にも火が広がって町全体を灰にしてしまう。
企業や政府当局が輸出管理を怠れば、最悪の場合、企業経営に大きな実害をもたらし、国の評判を落とし、兵器を拡散させて世界を不安定にする。
個人でも国家でも大事なのは、不適切な行いをして周囲から注意も受けた後、自らの行動をいかに改めるかということだろう。
今回、日本政府は自国企業とともに韓国にも警告を発し、改善を促した。韓国は日本の警告にいかに向き合うだろうか。
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